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第97話:覚悟を決め

「募兵?」


 魔闘大会が終わって幾何も経っていないある日、俺はエルシオンの冒険者ギルドにてそのような張り紙を見つけた。


「はい、何でもここから南のクローキ火山一帯を拠点に動いている龍族を撃滅するとのことですよ」


 俺の疑問に答えてくれたのはミュルトさんだ。


 ちなみにエリラは今この場にはいない。何故かって? 朝の出来事(前回参照)でまだ精神が立ち直っていないからです。いつも添い寝しているんだからあれくらいで恥ずかしがるとか……。


「この街はクローキ火山の目と鼻の先にある街です。国の軍隊は出動して手薄になるので、冒険者に傭兵としてこの街を防衛してほしいのです」


 俺が考えている事を余所目にミュルトさんが依頼について説明をしてくれた。


「へぇ……ちなみになぜそんなお話が? そんな前兆は特に無かったはずなのですが?」


「なんでも前に起きた森林調査部隊の全滅事件の犯人がクローキ火山を拠点にしている龍族だったらしいのです」


 ……はぁ!? ち、ちょいまて、森林調査部隊の全滅ってアレだろ!?(第33話参照) なんでそんなお話になってるの!?


 森林調査部隊とはエルシオンの近くにある森の生態を調査する為の部隊だ。……と言うのはあくまで表向きのお話で実際は獣族を拉致して奴隷として売りさばこうとしていた集団の事だ。

 あの時、俺はフェイからの依頼として、乗り込みその部隊を全滅させた。そりゃもう、一兵も残さずにだ。

 その後、エルシオンのギルドに要請された調査が入ったが、原因は不明。結局集まった冒険者たちは未解決のまま解散しこの話は終わったかと思っていたのだ。


 それを今更掘り返されるとは……。


 事実を知っている俺からしてみれば、龍族は濡れ衣を着せられていると言える。だが、そんなことをここで言っても信じてもらえる訳がないし、そんなことをすれば飛び火が来るのは俺の方だ。


 俺の知らないところで、とんでもない事が起きてしまっている模様。

 しかし、俺のせいで人が死ぬかもしれないと頭で考えているのだが、怖いとかどうしようとかの震えなどは特にない。

 おそらく、精神耐性が称号によって大幅に強化されているせいだろう。(第33話などの各種称号参照)どうしよう俺、今完全に人間をやめているという自信がある。

 もともと半分しか人間じゃありませんが。


『俺は好き勝手にやっていいのですね?』


 かつて、俺がセラさんに言った言葉だ。(第10話参照)


 好き勝手にやった結果がこれかよ。俺は心の中で苦笑いをせざる得なかった。


 もし、このまま戦いが起きれば……獣族の命数十名と引き換えに数百、下手をしたら数千名の命が消えることになるだろう。


 ……いや、俺は選んだんだ。数百名の命を捨てて、数十名の命を助けることを。なら、俺が後悔してどうする?


 普通、こういうとき、皆に愛される主人公は悩んで悩んでなんとか争いをしないことを選択するんだろうな。

 俺は日本で見た漫画や小説の一部を思い出していた。

 それが王道なら俺は邪道かな? まあ、ここはマンガとかの世界ではないので、皆笑顔で大団円チャンチャンとか言うオチには期待しないで置こう。


 俺は腹を据えた。ここまで来たんだから、これからも自分がこれだと思った道を貫こう。改めてもう一度覚悟を決める。


 じゃあ、まずは情報収集からだ。


「ところで、なぜ龍族だという事が分かったのですか? 前に調べたときは全くと言うほど何も分からなかったのですよね?」


 当時、どんな調べ方をしたか参加していない俺は知らない。だが、やった本人なので惨状はしっかりと覚えている。

 あのときは、魔法具や武具は全部奪ったんだっけ? 一応洞窟の形だけは元通り(俺が分かっている範囲で)やっておいたが、一体何が出たのだろうか?


「それが……私も良く知らないのです。国からの発表されたということしか……」


「公に発表しないのですか? 明確な理由が無いと文句を言う者が出てきそうですが?」


「? 何を言っているのですか? 異種族との戦争に明確な理由など必要ありませんよ」


「!?」


 ……はっ?


「異種族はすべて敵。共通の知識ですよ」


「いや……あの、俺田舎出で、そんなこと教えてもらってないのですが……」


「昔からの事ですよ。異種族とは常に臨戦状態。いつどこで襲われても仕方がない。だからこそ、「やられる前にやれ」と昔から言われてきているのですよ。実際、私もなんどか襲われた事がありますので」


 ああ、そうか……これがこの世界のルールだったな。


「そういうことですね」


「どうです? クロウさんも参加しますか? クロウさんもこの街に家を持っているし、奴隷もいるのですから―――」


「いいえ、遠慮しておきます」


 俺は丁重に断った。


「えっ、な、何故ですか?」


「別に一人でも大丈夫ですし」


 と、言うのは口だけだ。俺の全力がどんなことになるなど想像もしたことないし、俺一人で出来ることには限界がある。

 しかし、俺は逆に考えた。依頼を受ければ当然指揮下に入らないといけないだろう。そうなれば動きに制限がかかる。なら、依頼を受けなければいい。

 そうすれば、指揮下に入らずに自由に動くことが出来る。


 それに、指揮下に入れば守るのはこの街全体。当然のことながら俺の家だけを守ることも出来ない。街の人には悪いが、口を悪く言えば切り捨てさせてもらう。

 もちろん、そんなことをするのは本当に最後の最後だ。可能な限りは助けるさ。


 それに、まだ街に攻めてくるとは決まった訳じゃない。なんとかこの衝突を止められないものか……


「……やってみる価値はあるな……」


 俺の中で一つの試案が頭に浮かんだ。


「? 何か言いましたか?」


「いえ、では俺は守る準備をしますので、これにて」


「あっ、はい。また気が変わったらいつでも言ってください。クロウさんなら大歓迎です」


「はい、その時は是非」


 ミュルトさんの笑顔を背中にギルドを後にした俺は、早速家に帰った。


 家に帰り、まずは精神的に立ち直っていないエリラを物理的に叩き起こし。戦争の事を話す。最初はまだ枕で顔を隠していたが、話し終わるころには真面目な時のエリラに戻っていた。


「そう、あれが原因でね……でも、妙ね。前は調べても分からなかったのでしょ? なんで急に……?」


「あー、それな。理由は特に無くてもやるとか言ってなかったか?」


「そうだけど、急にはしないわよ。どこと戦争するにしても準備が必要ですもの。武具や食料、人を集め始めていたら必ずどこかで情報が出ると思うのだけど……」


 お、おう。何故でしょう、エリラが頭良く見えます。いえ、俺もその辺は考えていたけど、(脳筋)バカなエリラが思いつくとは思わなかったからだ。


「……ねぇ、今私を馬鹿にしなかった?」


「ハテ? ナン ノ ハナシ デ ショウカー?」


「こう見えても、色々勉強していたのよ。その辺のお坊ちゃま貴族たちと一緒にしないでね」


「ア、ハイ」


「で、どうするの?」


「獣族たちには内密にして、俺はちょっと行くところがあるから、エリラはこの家で待機しといてくれ」


「何もしなくていいの?」


「いいんだよ。いざとなれば《(ゲート)》使って逃げればいいから、じゃ行ってくる」


「気を付けなさいよ」


 おかんかよ。というツッコミは置いといて俺は早速行動に移ることにした。


 まずはあそこに行ってからだな。

 一日に2話も更新したのは久しぶりです。不定期ってモチベーションが思いっきり関わってくるなと思いました。


 今日も読んで下さった皆様。本当にありがとうございます。

 また、次回もよろしくお願いします。

 m(_ _)m

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