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前編

お待たせいたしました!(待ってないって、直接は言わないでくださいね)


前作の ~のし付けて全てお返ししますわ~ の兄の魁視点になります。

結構頑張りました・・が、みなさんのご期待に添えるような内容かと聞かれましたら、まったく自信はありません!


今回も言葉使いが悪かったりします。

オッケー!問題なし!という方は下へとお進みください。

ふと気が付くと、俺は天井を見上げていた。自由に動かない体と、不自由な声だったけどそんな事どうでもよかった。






それでも――――・・・俺、生きてた。






そう思って安堵した記憶が一番古いモノだった。







率直に言えば、俺は一度死んだらしい。ずっと不思議な感覚の中育った俺は周りの大人たちに“大人びた子供”や“神童”などと言って持て囃されていた。それはただ単に子供の自分の中にいた、前世おとなの自分の記憶のせい。よほど子供らしくなかったと今思ってもそう思うのだから、もう少し無邪気な演技でもしておけばよかったかなとも思わなくはない。

意識・・いや、記憶かな?――それが、はっきりしたのは3歳のころだったのだから。



まぁ、はっきりと言っても前世と呼ぶべき記憶は朧気ではあったけど、自分の置かれた立場がしっかりわかったのがこの時期だった。それで思い出したのは、前世の俺の年齢と嫌悪しか抱けなかった実母の事と世界観っての?そして、何故知識があるのか、如何してプレイしたのかなどは思い出せないけれど、乙女ゲーと呼ばれるゲームの知識が記憶の中にあった。それも1番はっきりと・・。

何故それが出て来たかと言えば、俺が転生した世界がまるでその世界のみたいだったから・・。



金持ちの男に媚びへつらうゲームのヒロインと呼ばれる女は、嫌悪しか抱けなかった母とよく似ていた。ヒロインと言われても俺には不思議だった。どっちかと言えばライバルキャラと呼ばれる悪役な彼女たちの方がよっぽど一途で好感が持てるというモノだ。勿論そこは権力を使う云々を抜いて、な。

そんなゲームの中の糞みたいな女に骨抜きにされる哀れで愚かしい男ども―――その男の内の一人が自分の将来と分かった時の俺の絶望感が分かるか・・?

親の顔を窺いひっそりとひもじい思いをしながら過ごしたガキの頃。16歳になって家を飛び出した俺を連れ戻したと思ったら、狂った母親くそおんなに心中させられた。そんな目にあって尚もこんな絶望を味わうのかと・・・心底思った。





だけど、それがどうでもよくなるほど・・俺が望んでいたものがここにあった。






そう俺が心底欲し、そして望んだモノ――・・それは、家族の愛情。





忙しくてあまり家に居ないが、帰ってきたときには鬱陶しいほど溺愛してくる両親。そして、そんな両親の不在を寂しがり泣く妹は常に俺にくっ付いてくる。ぐずぐず泣きながらも俺の服の端を引っ張る妹を可愛いと思いこそすれ、邪険に突き放そうと言う気は一切起きない。

なぜゲームの中の斎賀魁あいつはそんなことができたのだろうか?

そう考えた時に思い浮かんだゲームの解説・・そうだ。魁自身も両親の不在が寂しかったが、それよりも自分が我慢しているのに寂しいと泣きわめく妹が鬱陶しいと思っていたとかだった気がする。その上自分は嫡子として周りの重圧が酷いのに、我が儘放題で自由な1つしか違わない妹に幼いころから不満があったはず。



ここで兄が妹を突き放すと、妹は性格が歪んでしまい後々あのヒロインのライバル兼悪役として殺されてしまうではないのか。



今は泣くのを我慢して俺と一緒に両親を見送る妹を見つめ、俺は決心した。こんなにもかわいい妹が殺されてしまう。あいつには不満だったろうが、おれにはこの世界で今現在不満などこれっぽっちもない。自分に懐いているかわいい妹が殺され、この平穏が壊されるなんてそんな絶望感漂う未来には決してさせはしない。

あれが始まるのは俺が高校2年生の時からの2年間。まだ十年以上も時間はたっぷりあるじゃないか。

遠ざかる両親の乗った車を見送り、嗚咽の漏れ出した妹の正面に回り込んで1つ下の3歳になったばかりの妹の肩に手を置いて俺は微笑んだ。


「大丈夫だよ、“僕のみぃ”。お兄ちゃんがいるから寂しくなんてないんだよ?」

「ぅっ・・お、にぃちゃま・・?」

「涙を拭いて、ね?かわいいかわいい僕のみぃには涙なんて似合わないよ」


微笑む僕につられる様に、妹のみいるが大きな猫の様な瞳に涙を溜めつつもふわりとほほ笑んだ。僕の妹・・なんてすばらしい響きなんだろう。そして、僕を信頼している愛らしさとこの可愛らしさを守るためならなんだってしてやる。

そうだろう?こんなにも可愛い妹にはあんな婚約者ふぬけたおとこ―――・・・必要、ないよね。



大丈夫、大丈夫だよ。僕に任せて、あの糞女ヒロインが支配する世界になど絶対にしない。僕らの幸せを壊すことなど許さない。あの女に似合うのは絶望漂う世界で十分じゃないか・・・。



そう、僕の名前は斎賀 魁。前世の記憶を持つ人間でもあり、この世界に生きる人間でもある。だけど、ゲームでいえば“僕”はまた新しいキャラクターと言ったところだろう。



楽しみにしていて未来の夢見女ヒロインさん。君の幸せいっぱいの世界を僕がプロデュースしてあげるから。







――――――さぁ、物語を始めよう。








「こんばんは、昂柳」

「ごきげんよう、昂兄さま」


幼いころから両親や祖父母に連れられて行った大小さまざまなパーティーで、沢山の大人たちに挨拶をし終わった僕らは一番仲のいい親友でもある伏見ふしみ 昂柳こうりゅうを見つけて声を掛けた。


「・・・あぁ、珍しいね。こんばんは、魁と“みぃ”」


昂柳はクールで気難しいと言われているが、声を掛けた俺たちに気が付くと目を細めて口角をあげた。

昂柳“だけ”には魅の事を“みぃ”と呼ぶことを僕は許している。そして、僕が同じ攻略キャラではあるものの彼だけは特別視している為でもある。昂柳と、まだ会ったことはないけどあと1人だけはどんなENDでもみぃの事を1人の人として扱っていたからに他ならない。

そして、昂柳には時間を掛けて八方美人な尻軽女への嫌悪を植え付けておいた。

元々人の顔色を窺う事が僕らは得意だ。いや、この上流階級せかいでは当たり前の事として子供の内から理解しているものが多い。

たとえ話から始まって、自分の心を軽くしてくれる人・欲しい言葉を的確にくれる人なんて実際にいるのかなんてことを聞き、それが自分だけだと言い切れる?と乙女ゲームのヒロインの行動を徹底分析したのちの昂柳への質問に、昂柳もそういう女は嫌悪の対象となり今ではみぃのことを溺愛するもう一人の兄になっている。


僕が妹を守ると決めてからもう6年が過ぎて、僕ももう11歳になった。1つしか違わない為相変わらず僕とみぃは仲の良い双子と周りから言われているし、そういわれる様にふるまっているのは僕でもある。そして、パーティーに出れば必ず目にする見知った顔は、後々厄介ごとを持ってくる奴らだろう。


「オレ様はお前の事なんてこんやくしゃだなんて認めねぇからな!このブス」


少し考え込んで歩いているうちにうっかりみぃと離れてしまった僕は昂柳に腕を引かれて慌てて立ち止まった。そして目にしたのは両家の祖父母たちが勝手に決めた僕のみぃの婚約者の天清寺てんしょうじ鷹彰たかあきが周りの目を気にせずにみぃに指をさして尊大な態度で叫んでいるところだった。

どう見ても魅を見て真っ赤な顔をしている様子と言っていることがちぐはぐだが、僕のみぃへの暴言は許しがたい。そう思ってみぃの方へ行こうとした僕を昂柳が腕を掴んだままただ首を振っている。


「何だよ・・あの糞餓鬼。僕のみぃに向かってのあの発言を許せない」

「落ち着けよ、みぃなら大丈夫だ・・・みぃは俺とお前の大切な妹だ」

「だからっ」

「うん。だから、信じろ。大丈夫だよ」


基本他人に興味のない昂柳だが、様子を見るのは得意らしい。怒りで狭くなっていた僕の視界も、少し落ち着いたことによって周りが分かるようになった。

今まで視界にもとめてなかったと言うのもあったけど、今日のこのパーティーには後々の攻略キャラやライバルキャラが結構そろっている。あの天清寺の後ろには奴の従弟の・・天寺あまでらだったか、双子みたいに良く似ている少年がおろおろと視線を迷わせているのが見受けられる。うむ、確か彼は最後の最後までみぃの協力者であり殺されてしまったはず。殺されるには惜しい人物で、僕の中の好感度の高いトップ3の内の1人だ。


そうふと思った時に飛び込んできたみぃの声に、僕はまた視線をみぃの方へと戻した。


「えぇ、もちろんですわ。その御言葉とっても嬉しいので、いつでもこの婚約を破棄してくださって結構ですよ。わたくしはいつでもいいですわ!」

「・・・・・・は?」

「どうかなさいまして?たかあき様から断っていただかなくては・・もちろん、わたくしからは断れないって分かっていらっしゃいますよね?」


いつも僕らへと見せるふわりとした笑みではなく、怒りをたたえた様な笑みを浮かべるみぃを初めて目にした・・・それよりも、僕が驚いたのはみぃの口から出た言葉だった。

勿論それを聞いたあの天清寺鷹彰は予想外の言葉だったのか目を見開いて唖然としている。

確かひと月前ほどのパーティーでも2人は何か言い争っていた気がする・・あの時は、祖父に連れられて色々な人へあいさつ回りに連れて行かれていたからみぃとだいぶ離れてしまっていたっけか。

それで昂柳は僕が戻るまでみぃと一緒に居てくれたんだ。


この時感じた少しの疑問。それについて考えていた僕にはみぃが天清寺からさっさと離れて僕らの方へ来た事を暫く気が付いていなかった。


「・・ぃ・・・おい、魁?」

「ん・・あぁ、ごめん。何、昂柳」


いつから話しかけられていたのか僕を正面から覗きこむ昂柳と、僕の左側の腕を組んで心配そうな顔をしているみぃにごめんねと言って微笑むと、2人は安堵した様な表情で笑みを浮かべた。


「ごめんね、ぼーっとした。それで、何かあった?」

「あぁ、いとこが先日決まった婚約者と一緒に来たんだ。紹介したことなかったと思って」

「昂兄さまのいとこ?」

「うん、7歳も違うけど仲はいいんだ」


昂柳の視線をたどるように会場の入り口に顔を向けると、栗色の髪を緩くセットした昂柳にどこか面差しが似ている長身の青年がオレンジ色の髪を縦ロールの様に巻いてセットしているまるでフランス人形の様に可愛らしい少女をエスコートしている。

昂柳のいとこという事は確かあのヒロイン贔屓の変態教師だったか・・うん、よし。1度のあいさつは仕方がないとして、今後は決してみぃには近寄せない。奴は元々嫌いだったから落ちるところまで落ちればいい。


「・・・ぅわ・・ロリコン教師だ。キモッ・・」


―――――・・え?


先に行く昂柳について行こうとみぃの背に手を回そうとしたとき、多分無意識に呟いたらしいみぃは眉間にしわを寄せて片手で口元を覆っている。

それに7歳年上なのならば現在は高校3年生のはずで、今まで交流の無かった彼の事を何故みぃが“ロリコン教師・・”と、彼の事をそう呼ぶのか。

そう疑問に思い思考が一瞬止まったが、すぐに思い直した。そうか、かわいいかわいいみぃも僕と一緒なんだね、と口角が上がったのが良く分かる。


「どうしたの、みぃ?」

「え・・あ、何でもないよ」

「そう?昂柳行っちゃったから追いかけなきゃ」


ぼーっとしていたみぃを覗き込めばハッとした顔をむけるみぃに内心微笑んで、僕はギュッとみぃを抱き寄せる。


「昂柳のいとこの婚約者って言うし、みぃも仲良くなれたらいいね」

「う・・うん」


みぃも前世の記憶とこの世界の記憶がある転生者なのだろう。僕だけとは思ってなかったけれど、まさか身内にいるとは思わなかった。まぁ、この事は好都合だし、そう考えればこれまでのみぃの行動にも納得がいく。ある時からみぃの行動が変わったのだ。

勿論僕がみぃの事をゲームとは違って溺愛しているという事でみぃの性格も行動も変わってきていると思っていたが、それだけじゃないという事がわかったのは今後僕が動くことにだいぶ都合がよくなるだろう。

先ほどの天清寺への台詞然り、どれだけ記憶があるかは知らないが多少でも記憶があればみぃだって自分が死ぬかもしれないルートを必死で回避していくことだろうしね。


だいにい、前話をしていた魁とその妹の魅だよ」

「はじめまして、斎賀魁ともうします。妹はちょっと人見知りで、すみません」

「え?!斎賀ってあの斎賀?はじめまして、昂柳の従兄の伏見ふしみ大稀だいきだ。いつも昂柳と仲良くしてくれてありがとう」


大人ぶるように笑ういけ好かない奴だけども、今は全てを隠す仮面を被ると宣言しておこうか。今後はどうなるかは分からないけど、精々僕の掌で踊るがいい。


「いえ、昂柳にはこっちも迷惑を掛けちゃってますし」

「そうかい?いつも君たちの話を楽しそうに教えてくれるんだよ、これからもよろしくね」

「はい、もちろんです」


でも、これだったらあのことも視野に入れておくべきかもしれないな。え?あのことって何かって?それは勿論この世界のヒロインと呼ばれている尻軽女が転生者だった場合のことさ。記憶があれば自分の都合のいいように動くはず、何せ僕がそうだからね。最低でも2つは伏線を用意しておくべきだな。


「と、魁君に魅ちゃん。こちらは先日決まったばかりの俺の婚約者の由香利嬢だ」

「初めまして、斎賀魁ともうします」

「まぁ、あの斎賀家の御曹司さまですの?妹様は可愛らしい方ね!初めまして、高崎たかさき由香利ゆかりともうします。斎賀様方のお噂は聞いておりますわ、どうぞ由香利とお呼びくださいね」

「ありがとうございます。では、僕の事は魁と・・妹の事は魅とお呼びください」


見た目は派手でまさにお嬢様だが、一つ一つの優雅なしぐさとふわりとほほ笑むその花のような表情にまさに目を奪われる。年齢の割には少し大人びて見える由香利さんは、悔しい事に伏見大稀の隣に居るのに違和感がない。





あとは、これは個人的すぎるけど。僕は昂柳の従弟でもある伏見大稀の婚約者の高崎由香利のキャラクターがとても好きだった。






如何でしたでしょうか?

言葉などが不自由ですので、ご不快になられた方には誠に申し訳ないです。


少しでも楽しんで下さる方がいることを望みます!



後篇に続く。

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