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9.☆ 僕のなでしこ

 オレの方が先に出会ったっていうのに、なぜかその女の子はオレの悪友に惚れていた。


 かなり、ショック。





 





 一目見た瞬間、惚れた。

 いつも軽いだとかただの女好きとか(ナツに)言われるけど、今回は本気で惚れた。


 一目惚れなんて、初めてだった。






「まーあーちゃーんっ」

 漫画を読んでいると、どこからか彼女の声。

「抜けだそっ☆」

「うぅぉおおおぉああああっ!!」

 彼女はいきなりオレの寝ていたベッドの下から現れた。

「えへへ☆ びっくりしたぁ?」

 はい、とても。

「ウタちゃんこれから診察じゃないの?」

「うんっ!! だから抜けだそっ☆」

 一応、オレはウタちゃんが何の病気か知ってるから、迷う所だ。

「……診察終わったら、一緒に遊ぼうか?」

 えー? と不満を鳴らすウタちゃんに、オレは部屋に戻るように催促した。…いや、本当はオレだって遊びたいんだよウタちゃーん。




 数分後、看護婦がオレのところにウタちゃんの居場所を聞きに来たことは言うまでもないが。




 10日が経ち。



 しばらく顔みないなと思ってたら、帰ったはずのナツと屋上で楽しそうに話していた(楽しそうだったのはウタちゃんだけだったが)。






 2つ年下のそのウタちゃんは誰にでも人見知りしないらしい。




 ついでに言うと。


硬派で身長高くて黒髪で目付き悪くて不良顔の、実は可愛いもの好きのオレの悪友にも人見知りしなかったという話だが。



 その上。


 彼女は何故かナツに惚れていた。




 これほどショックなことはない。なんてゆーか、病室のベッドにもぐってすすり泣くほどショックでした。あごがゴイーンて出て目ン玉飛び出しそうなくらいショックでした。

 




 しかも、なんかナツもウタちゃんのこと好きみたいだし。ショック2倍。



 顔に出過ぎ。不良顔のくせに(ちょっとしたやっかみ)。



 だいたい。



 ウタちゃんはナツの好きそうな外見なんだよな。



 栗色の長い髪は天パで(栗色なのは実はハーフだかららしい(信憑性は極めて低い))。

 外に()ないから肌の色は白くて(外出禁止がでてる)。

 幼く見られがちで本人は嫌ってる大きな瞳に、長いまつげ(年齢詐称の疑惑有り)。

 身長は、やっぱ低くて(栄養足りてないからね)。

 声が、ありえないほど可愛い(アニメ声みたい)。



 なんだかもう、可愛いもの好きのナツじゃなくたってウタちゃんには惚れると思う(恋は盲目。破天荒な性格は見えないフリ)。



 ウタちゃんは、本当に可愛くて。

 動物に例えると、ミニうさぎ。



 ちなみに。

 ナツの好きな動物は、犬でも猫でもなくて、うさぎだったりする(小学校の頃、飼育係をすすんでやっていたという経歴有り)。



 そんな子を、ナツが好きにならないわけがない。



 もうハタから見て両想いだし。看護婦たちだって気付いているし。


 気付いてないのは当の2人だけだ。くやしいから言わない。




 数週間が過ぎて。




 毎日来てくれていたナツが、突然、見舞いに来なくなった。



 実を言うと、ナツが最後に見舞い来てくれた1日前にウタちゃんに告ってたから、気付かれたのかと思ったんだけど。




 でも、ウタちゃんの見舞いにも来ていないらしくて。




 ケンカでもしたの? とウタちゃんに聞くと、「宿題がいそがしいんだって〜」と言われた。



 そして、手紙を渡された。

 『まーちゃんが退院するときにナっちゃんに渡して』と。






 数日後、ウタちゃんは死んだ。







 まるで、眠っているかのような死に顔だった。





 とても、綺麗で。




 オレは初めてナツに怒りを覚えた。






 彼女は、オレのなでしこだった。




 まるで理想像だった。




    でも。


 好きだったけど、それでもあの2人よりも強い想いだとは、言い切れなかった。





 それでも、好きだったんだ。




 君の死に顔にキスをする。




 どうか、

 どうか安らかに。







 オレのなでしこは儚く散った。






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