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8.☆ 夕暮れ、きまぐれ、君の声も

     生きる理由がないってんなら、俺の為に生きてよ。







 なにもかもが嫌で、病院の屋上から飛び降りようとしてたら彼がきて。そう言ってくれた。


 どうせあとほんの少ししか生きれないあたしに、あとほんの少し生きるだけの理由をくれた。



 でも。


 そんな。

ほんの少しでも、あたしには十分の理由になった。






「ナツってどんな字書くのー?」



 あの夕暮れに、あたしに生きる理由をくれた彼は、どうやら隣の部屋のまーちゃんの友達らしい。

 彼に聞いても答えてくれなかったから、まーちゃんに聞いて。わかったことは、彼の名前は山瀬 ナツで、高校3年生ということ。

 でもまーちゃんとは全然違って、硬派で、最初は口数も少なかった。


「捺印のナツ」

「かぁっこいーねー☆」


 愛する人ほどかっこいい人はいない。


「あたしはねー、口に貝で唄だよー」

 聞かれてもいないが続ける。



「苗字はねー、朱色の朱に浅瀬の瀬でアカセなのー」

 結構きれいな字だから気に入ってるの。


 目を合わせてくれない彼があたしのそんな言葉を聞いているかどうかはわからないけど、あたしには彼がここにいてくれるだけでよかった。


「でもねー、山瀬ウタでもいーよー。それかナっちゃんが朱瀬ナツになるー?」



 彼は、最初以外はあたしとまともにしゃべってくれなかった。


 それでも、よかった。かまわなかった。



 ただそばにいてくれるだけで幸せだと、心から思えたから。






 出会って数日して、あれから初めて彼から話しかけてきてくれた。

 ナっちゃんの方から、あたしの部屋に来てくれるようにもなった。

 ふつうに、しゃべってくれるようにもなった。

 目を見て、話してくれた。




 すべてが、嬉しくて。



 もう、自分が死ぬなんて、ありえないと思ってた。




 でも。


 やっぱりこの躯は限界で。





 ねぇナっちゃん? 愛してるよ。

 あたしが死んだら悲しんでくれる?





 ナっちゃん。大好きよ。




 最後にはナっちゃんのこと怒らせちゃったけど、この1ヶ月、本当に幸せだった。


 怒らせちゃって、ごめんね。





 あの日の夕暮れ、あなたが来てくれて、本当によかった。

 あなたじゃなきゃ、だめだった。





 本当に、嬉しかったんだよ。



 生きる、理由に、なってくれたよ。






 ねぇ。

 

 死んだらあたし、星になるの。




 遠くからね。あなたをね。照らしていたいの。


 



 大好きよ。



     大好きよ。






 ありがとう。




 ありがとね。





 

 ねぇ聞いて?



 あなたを愛せて、あたしに生きる理由ができたのよ。





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