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あなたは納得します

掲載日:2026/05/02

この世界の裁判は、

結果を出さない。

出すのは、

状態だ。

「納得」

被害者が、

それ以上考えなくなった時、

裁きは終わる。

方法は問わない。

罰でもいい。

救済でもいい。

ただ、一つだけ。

「疑問を残さない」

それが、

絶対条件だ。

目の前に、

男がいる。

家族を壊した男。

何度も思い出した顔。

何度も殺した顔。

何度も問い続けた相手。

「どうして?」

その言葉だけが、

ずっと残っていた。

「どうしますか」

静かな声。

考える。

殺す。

足りない。

苦しませる。

違う。

同じ目に遭わせる。

意味がない。

何をしても、

最後に残る。

「なぜ?」

あの日の、

あの瞬間の、

あの理由。

それだけが、

消えない。

「問いを消しますか」

声がする。

意味が分からない。

「納得とは、

問いが存在しない状態です」

沈黙する。

消せば、

終わる。

全部。

あの日も、

声も、

顔も、

理由も。

「……本当に、終わるのか」

初めて、

口に出す。

「はい」

即答だった。

「あなたは、

納得します」

少しだけ、

昔を思い出す。

笑っていた時間。

食卓。

どうでもいい会話。

音。

温度。

全部、

ここに繋がっていたはずなのに。

今は、

ただ一つ。

「なぜ?」

それしかない。

それすら消えたら——

何が残る?

分からない。

でも、

分からなくていいのかもしれない。

もう、

考えなくていいなら。

ゆっくりと、

頷く。

「……やる」

次の瞬間。

何も、

思い浮かばない。

目の前の男を見る。

ただの人間だ。

知らない顔。

何も感じない。

怒りも、

悲しみも、

ない。

「これでいい」

自然に、

そう思う。

何も、

引っかからない。

完璧だ。

これが、

納得。

裁判は終わる。

帰り道。

足が、

勝手に止まる。

理由はない。

ただ、

止まった。

しばらく、

そのまま立つ。

胸の奥に、

何かがある。

形はない。

言葉もない。

でも——

少しだけ、

苦しい。

「……?」

理由を探す。

何も出てこない。

問いが、

存在しない。

目を閉じる。

一瞬だけ。

光景が、浮かぶ。

食卓。

笑い声。

「——なんで」

声が出る。

その瞬間、

全部、消える。

静かになる。

涙だけが、

残る。

理由は、

ない。

「これでいい」

誰かの声がする。

自分の声に、

よく似ている。

納得している。

そう思う。

思うしかない。

歩き出す。

完璧なまま。

何も知らないまま。

何も、

疑えないまま。

疑問が消えたとき、

本当にそれは「納得」なのでしょうか。

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