第9話:不滅決
「ちょっとしたハプニングはあったが、状況は依然として私の掌握下にある」と鬼蛇獠は自信たっぷりに言った。
「今度こそ、あの子を始末できるはずだ」と鬼蛇獠がそう言い終えると、問刀の方へ視線を向けた。
彼を驚かせたのは、送り出した二人の山賊が、わずか1分も経たないうちに、全員血の海に倒れていたことだった。
問刀は、刀についた血を拭いながら、同じく鬼蛇獠を見つめていた。
「なんてことだ、これは一体どういうことだ?」鬼蛇獠は、青天の霹靂を食らったかのようだった。
「どうやら、情勢は、私が想像していたよりも厳しいようだ。」
「この厄介なガキを始末するため、残りの者は全員、彼を攻撃しろ。俺は一人で残って、当岩を相手にする。」
「この当岩も、もう長くは持たないだろう。」鬼蛇獠は当岩を観察しながら言った。
確かに、今の当岩は体に多くの傷を負っており、『不滅決』で治療しているとはいえ、体中の至る所に血の痂ができていた。
しかも、数回の消耗戦を経て、当岩の体内の土属性エネルギーもほぼ枯渇していた。
一方、鬼蛇獠は実力を完全に温存しており、当岩を圧倒するには十分だった。
十人ほどの山賊たちは、皆凶悪な連中で、問刀を四方から包囲した。
一度包囲されれば、勝算はほとんどない。
同時に、十人の山賊が一斉に問刀へと突進した。問刀は冷静に対処し、山賊たちが全員近づいた瞬間、虎のように軽やかに跳躍し、山賊たちの頭上を飛び越えた。
こうして、難なく包囲網を抜け出した。
一方、山賊たちは陣形を乱され、次々と問刀へと突進していった。
一方、絶好調の鬼蛇獠は、疲れ果てた当岩と対峙していた。
鬼蛇獠は、蛇のようにしなやかな不気味な足取りで、腰を低くして地面を駆け抜けた。
突然跳躍し、毒蛇が獲物を噛み砕くかのような猛烈な勢いで飛び出し、当岩の眼前へと到達した。
一方、当岩は、まるで硬い石のような掌を鬼蛇獠の頭めがけて叩きつけた。
鬼蛇獠は頭を下げ、その一撃をかわした。同時に、手にした蛇頭の杖が毒のエネルギーを吸収すると、蛇の頭が動き出し、当岩の腕に飛びかかり、牙の跡を残した。
瞬く間に、当岩の腕全体が緑色に染まった。
「プッ!」当岩は黒い血を吐き出し、地面に倒れ込んだ。その表情は極めて衰弱していた。
「こいつを捕まえろ。じっくりと拷問してやる!」鬼蛇獠が命じた。
「そうか?」聞き覚えのない声が響いた。当岩の背後に現れたのは、彼の山賊の手下ではなく、あの18歳の少年だった。
「お前、まだ死んでいなかったのか!」鬼蛇獠は驚き、視線を別の方向へ向け直した。
地面には十数体の死体が横たわっており、どれも微動だにしない。
「お前一人で、十数人を殺したのか? 奴らのランクは、お前と同じくらい高いはずだぞ」鬼蛇獠は目を丸くし、起きた出来事を信じられない様子だった。
「お前の目に見えている通り、奴らはすべて俺が殺した」
「問刀、無事か?よかった。」衰弱した当岩もまた、信じられないという表情で問刀を見つめ、その目には喜びが溢れていた。
「では、当岩隊長、これからあなたは治療に専念してください。戦闘能力が回復してから戦いに加わっても遅くはありません。」
「できる限り引き止めておく。」
「頼むぞ。」当岩は敬意を込めて頷いた。
「それと、くれぐれも気を付けてくれ。何しろ、あいつは武道二段中級者だ。」
「了解。」問刀は当岩に背を向けたまま答えた。
「ふふ、お前というやつは、本当に予想外だな。あの役立たずの部下たちが殺せなかったのなら、俺が直接殺してやる。」
鬼蛇獠は杖を問刀に向け、指を突き出すと、瞬く間に蛇の頭が伸びて問刀に襲いかかった。
一方、問刀は刀の刃で、その蛇の頭を正確に打ち抜いた。
「ガシャン!」
なんと蛇の頭は金属製だった。衝撃を受けて縮み上がった。
一方、鬼蛇獠は杖を振り回し、蛇の頭が鞭のようにしなるように打ち出された。
問刀は、刀の刃で軽やかにそれを受け止めた。
突然、蛇の頭が1メートル伸びて問刀の刀に絡みつき、さらに伸びた蛇の頭が問刀の手首に飛びかかり、噛み付こうとした。
問刀は、手際よく蛇の首を掴み上げた。
不思議なことに、この金属製の蛇はまるで生きているかのように、かなりの力を持っていた。
二人は、こうしてしばらく互角の攻防を繰り広げた。
次第に問刀の体力が尽きかけてきたが、蛇の頭は依然として活発で、もうすぐ噛みつかれそうだった。
その時、巨大な影が前方に現れ、鬼蛇獠の胸に掌を叩きつけた。
「ドスン!」その音は、まるで木が炸裂するようなものだった。
鬼蛇獠は3メートルほど後ろへ吹き飛ばされ、胸を押さえながら顔を歪めた。
突然現れた男を見れば、それは正体を現した当岩だった。
問刀はこの隙を突き、突如として前に飛び出し、鬼蛇獠の眼前へ到達すると、一刀でその心臓を貫いた。
鬼蛇獠の顔には悔しさが満ちていたが、結局倒れざるを得なかった。
「問刀、見事だ」当岩は称賛した。
問刀は振り返り、刀身の血を拭い、刀を収めた。
突然、鬼蛇獠の死体が握っていた蛇頭の杖から、緑色の光が閃き、蛇頭が蘇ったかのように伸びて、問刀の背中を噛み付こうとした。
「気をつけろ!」当岩は即座に警告した。
問刀は刀の鞘で蛇の頭を激しく叩き、弾き飛ばした。
その金属製の杖は、ようやく完全に力を失った。
「実に卑劣だ。鬼蛇獠は、さすが毒蛇の如く、死ぬ間際まで人を噛もうとするとは。」当岩は驚きを露わにした。
「問刀、今回は君のおかげだ。そうでなければ、俺は命を失っていただろう。」
当岩は感謝の笑みを浮かべた。
「正直なところ、君一人だけで同格の山賊十数人を倒すとは、本当に目を見張るものがある。」
「武道二段中級の鬼蛇獠を相手にしても、傷一つ負わなかった。君の才能は、実に高い。」
「俺の体は、かなりの傷を負っている。治るには時間が必要だ。」
「それなら、このまま旅を続け、一気に水市町まで行こう。」
「だが、そう言えば、あんな奇妙な武器には初めて出会った。ただの杖なのに、まるで本物の毒蛇のように人を噛むなんて。」問刀は地面に落ちている杖を見ながら言った。
「あれは、特殊な素材で作られた『宝器』という武器で、特別な能力を発揮するんだ。」
「水市町には、そういった宝器がたくさんある。そこに行けば、もっと詳しく知ることができるだろう。」
「そうだ、命を救ってくれたお礼として、これが今回の報酬だ。前払いするよ。」岩は金の元宝を手にした。
「こ、これは十分にも十両はあるでしょう。私の元の給料の十倍ですよ。」問刀は金の元宝を受け取りながら言った。
「この金額、私が二年働いても、やっと稼げるかどうかという額です。」
「ハハハ、何でもない。君が当然受け取るべきものだ。今回の危険は、君も身をもって体験したはずだ。だからこの報酬は当然のことだ。」
「これ?」問刀は金塊を撫でていると、ふと異変に気づいた。ひねってみると、なんと金塊が開き、中には折り畳まれた紙が収められていた。開いてみると、そこには細かい文字がびっしりと書かれていた。
「不滅決?」問刀は驚いた。そこには、なんと当岩一族の秘伝の武術『不滅決』が記されていたのだ。
「当岩隊長、間違えていませんか?」問刀はそう指摘した。
「違う。問刀、これはわざとここに置いて、君に伝授するためだ。」
「『不滅決』は、我が家の掟により、部外者に伝えることは許されていない。だが、君がいなければ、私も命を失っていただろう。だから、わざと黄金の中に仕込んだのだ。私がうっかり間違えてしまい、君が偶然それを見つけて、学んだことだと考えてくれ。」
当岩はそう言うと、牛を引いて先へ進んだ。
「え?それなら、感謝します!」これほど貴重な武術書、問刀が逃すわけがない。
「問刀、読み終わったら、必ず燃やしてくれ。他人の手に渡らないように。これは我が家の一冊だけの写本だ。燃やしてしまえば、この武術書を知る第三者はいなくなる。」
「分かりました。」問刀は牛車に座り、『不滅決』を読みながら、その指示に従って修行を始めた。
彼が両手で奇妙な印を結ぶと、体内の赤い金属のようなエネルギーが、まるで潮が身体を洗い流すかのように駆け巡った。あらゆる悪い不純物を、すべて洗い流していった。
修行を終えると、問刀の身体は随分と軽くなっていた。
「この『不滅決』は、体内の毒素を排出できるだけでなく、身体の傷も癒すことができる。他人に教えないと約束してくれ」と、岩は歩きながら言った。
「はい。」問刀は頷いて承諾した。彼はすでに『不滅決』を完全に覚えていたため、その紙を火で焼き捨てた。
二人は水市町に到着すると、車に積んだ宝物を約束の商人に引き渡した。
商人は感謝の意を表すため、わざわざ問刀と当岩を自邸にしばらく滞在させるよう招待した。
また、当岩は傷を癒やす必要があったため、問刀はしばらく水市町に滞在することにした。




