やっと終わる SIDE:カルヴァート
戦場は嫌いだ。
いつも以上に、自分が兵器であることを、化け物であることを思い出させるから。
初めは人を殺すことに嫌悪感を抱いたというのに、今ではもう何も感じなくなってしまった。
心が壊れてしまったのだろうか。
作業のように魔法を放ち、殺して、殺して、殺す。
彼女もこれを見たら、俺のことを恐れるだろうか。
ふと、そんなことが頭によぎった。
いや、きっと彼女は変わらない。
己の願望かもしれないが、彼女は変わらないと思う。
むしろ、俺の代わりに、泣いてくれるんじゃないかって勝手に思っている。
どれくらい時間が経っただろうか。
まだ、戦争は終わらないのだろうか。
俺の限界も近くなってきた。
このままいけば、魔力暴走を引き起こして、周囲を巻き込んで死んでしまうだろうな。
そう思うのに、撤退して浄化を受けようとは思わなかった。
それどころか、やっとこの時が来たのだと、安心している自分がいる。
兵器としての人生が、やっと終わりを迎える。
なんと、喜ばしいことか。
もう疲れてしまったんだ。
兵器あつかいされるのも、化け物だと周囲から恐れられるのも。
何もかも、疲れてしまった。
ただ一つだけ心残りがあるとすれば、最後に彼女の笑顔をもう一度見たかったということ。
きっとそれはもう…………
「カルヴァート様ー!!」
よく知った声が聞こえた。
その温もりも、感触も、よく知っている。
なぜ……なぜ……ここにいる?
もう魔力暴走は始まっている。
このままでは、彼女も巻き込んでしまう。
それだけは……嫌だ。
彼女の腕を振り解こうとするけど、いつもの何倍も力が強い。
振り解けない。
「どう……して……」
「言ったじゃないですか!私があなたを守るって。それは心を守るって意味でもあるんですよ。私は、今まで傷ついてきたあなたの心を守りたいんです。」
「こころ……」
俺の心……
俺に、心なんてあるのか……?
「カルヴァート様は、繊細で、弱くて、几帳面で、律儀で、この国を愛する素敵な人です。そんなあなただからこそ、私は……」
彼女は言葉を飲み込んだ。
何を言おうとしていたのだろう?
それにしても、彼女から見た俺は……情け無い男だな……
「カルヴァート様。あなたの願いは、私が叶えます。そう、約束したでしょう?」
「願い……」
俺の……俺の願いは……
「どうか……俺を、殺してくれ。君の手で、君の腕の中で、死んでしまいたいんだ。もう、疲れた。生きるのに、疲れてしまったんだ。」
願わくば、最期の時まで、君と一緒にいたい。
君の手で殺されるなら、なんて幸せなんだろう。
「カルヴァート様。お疲れ様でした。よく頑張りました。もう、いいんです。もう、休んでいいんですよ。私、カルヴァート様に出会えて、本当に良かったと思います。私はまだそちらにいけませんが、先に行って待っててください。たくさんの思い出を持って、会いに行きますから。」
「ああ……ああ……待ってる。待つのは、慣れてるんだ。だから、いつまでも、君がきてくれるのを待っている。」
「おやすみなさい、カルヴァート様。」
「ああ。おやすみ、オリヴェール。」
その言葉を最後に、胸を冷たい何かが貫通する感触がした。
けれど、彼女の腕の温かさで、何も気にならなくなった。
彼女を見ると、私が見たいと思っていた微笑みを浮かべていた。
ああ……やっと……終わった……




