今度こそ
戦場に着くと、兵士たちが慌ただしく動き回っていた。
爆発音と、肉の焦げた匂い、血錆びの鉄の匂い。
懐かしく思いたくなかったけど、懐かしかった。
聖女の誰もがこの状況に、一歩も動けない。
だから、こんな状況だからこそ、私が動かないと。
「行きましょう。みなさんが待っています。私たち聖女の使命は、魔法使いたちを支えること。私たちの力を必要としてくれる人たちが、待っています。」
「「「…………はい!!」」」
戸惑いながらお互いを見ていた聖女たちが、私に視線を向ける。
覚悟を決めた彼女たちが、鼓舞するような大きな声で返事をした。
私は先頭きって駆け出した。
その後ろに続く足音を聞きながら、魔法使いたちのいる現場に急いだ。
1人でも多くの魔法使いを助けるために。
前回と同じく、数えきれないほどの浄化をした。
浄化をして、前線に行くのを見送って、また浄化をする。
私たちがしていることが、本当に救いになっているのか、わからなくなってしまう。
前線に背を押す役目をしているのではないかと、率先して死地に送っているのではないかと、考えてしまう。
そんなやるせないことを、ぐるぐると考えてしまうのは、その時が目の前に迫っているからだ。
そして、ついに……
「ま、魔力暴走だ!すぐに退避しろ!」
来た。
早鐘を打つ心臓に手を置き、大きく深呼吸をする。
落ち着いて、私ならきっとできる。
ううん、私がやらなくちゃいけないの。
私のこの手で、カルヴァート様を殺さないと。
それが一度目からの、彼の望みだから。
きっと二度目も、彼はその望みを捨てていない。
だって、いつもその目には、死を渇望している光を宿していたから。
二度目だから、私にもわかったの。
彼は、二度目の今回も、死を望んでいるって。
そこだけは変えられなかった。
たった数ヶ月では、彼の死の願いを変えるほどの力は、私にはなかった。
悔しくて悔しくて、泣いてしまったこともあったけど、私よりももっとカルヴァート様の方が苦しんでいる。
だから、今度こそ助けるんだ。
カルヴァート様の心を守るために。
死ぬことで、彼に安らぎをもたらすことができるなら、何度だって私はこの手を汚そう。
私は魔力暴走の現場に急いだ。
きっとそこにカルヴァート様がいるから。
自惚れてもいいなら、きっと私を待ってくれているから。
見えてきた現場は、前回と同じ光景が繰り返されていた。
魔力が撒き散らされて、倒れる味方の兵士と敵の兵士。
頭を抱えて、唸り声を上げるカルヴァート様。
「カルヴァート様。今、行きます。」
私はなんの恐れも抱かずに、浄化の光を纏いながら、ゆっくりと近づいていった。




