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さよなら嘘つき聖女様  作者:
第一部
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9.初豆騒動

勇者加藤は男爵位を賜り、没落した貴族が爵位を返上した時に残った邸宅と領地の一部を与えられた。

その王都から離れた領地で初豆の栽培を試すことになり、私も栽培の助手として雇ってもらえることになった。


「やったぁ、これでやっと桐野から離れられる!」


私は念願の自由を手に入れることができた。


加藤男爵は使用人を最低限の人数に絞って雇い入れた。


アララートは明確な四季のないほぼ常春の国で、ほぼ三ヶ月で収穫できる初豆は、順調に行けば加藤男爵領の特産品にできるかもしれない。


勇者加藤は剣と魔法で無双するよりも、剣を鍬に魔法を花(農業)に変えて生きて行きたくなったらしい。

万が一、将来勇者の力が衰えたり失われたりした時に困らないように備えておきたいのだとか。

勇者加藤は存外に堅実な人物だった。


王家と神殿、アララートの民はそれ程初豆に興味を示さなかったが、米好き聖女桐野は早速献上しろと言って来た。


きびや粟等の雑穀も栽培し、雑穀米も楽しめるようになりそうだ。蒸かして杵でつけばお餅もできる。

桐野は雑穀嫌いだから、こちらに関しては何も言って来ない。


また、領地内で温泉も発見した。これは急がずにゆっくり整備して行くことにした。

加藤のチートで加藤男爵邸にだけ、取り敢えず温泉を引いた。

もちろん使用人達も入れるようにしたので好評だ。


桐野には聖女の村、黒髪村のことは一切話していない。

できればこのまま話さずにいたかった。

話してしまったら桐野に村を荒らされてしまいそうだったからだ。

我が物顔で村人達を使役するのが目に目えている。


黒髪村を勝手に自分専用の『玲奈村』にしてしまいそうだ。


聖女達の末裔が自給自足で保っている村を壊したくない。

黒髪村に迷惑がかからないように、米に似た初豆は旅の途中でたまたま発見したということにしてあった。


あれから定期的に黒髪村とは連絡を取るようになり、初豆の収穫量も増えて来た。

黒髪村に必要な物資を届けたり、修繕や保全に必要なことはできる限り協力している。


機密保持のために加藤男爵邸内から転移魔法でダイレクトに村へ往き来している。


「初豆の生産が軌道に乗ったら、将来おむすび屋を領内でできたらいいな」


そんな夢を加藤男爵は持ち始めている。


加藤のチートは農業にも発揮され、領主が去って荒れた農地を猛スピードで整えてしまった。


領地を離れていた人達も少しずつ戻り始めた。



そんな中、桐野は聖女印の『玲奈豆』として加藤男爵が献上した初豆を勝手に高値で転売するようになった。


「あいつ、信じられないな」

「聖女が転売ヤーって······」


私達は激怒したが、桐野の横暴はこれだけでは済まなかった。


聖女の言いなりな神官達は我関せずで、あろうことか王家が初豆の専売権を桐野に与えてしまった。


それによって桐野の許可を得ないと初豆の栽培も販売もできなくなった。


「糞聖女、ふざけるな!」

「酷すぎるわ!」


嘘つき聖女を通り越して、悪代官みたいなマインドだ。

昔から他人の成果を横取りする、他人の褌で勝負する性格の人の典型で、嘘つき以外にも要注意な人だった。


加藤は桐野らに抗議するため一人で王都に向かった。


しかし、加藤は反逆者扱いで捕らえられてしまったのだった。

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