表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら嘘つき聖女様  作者:
第二部
22/31

22.帰る日

「私達、あとどれぐらいここにいられると思う?」

「美帆は帰りたくはないのか?」

「帰ることはわかっているのよ。でもいつ迎えが来るかと気が気じゃなくて」


美帆と洵が元の世界に戻ってから、既に三年が過ぎていた。


『いずれ迎えに来る』


神様にはそう言われてはいた。私達はずっとここにいられるわけではないのだ。


私の両親も洵の両親にも私達はとても良くしてもらってきた。

父などは孫は目に入れても痛くないというのを地でいくほど溺愛してくれている。

双子達が最も手がかかり最も愛くるしい時期を皆で過ごせて本当に幸せだった。

いつか帰ることがわかっていたから、悔いが残らないように日々を大切に暮らしてきた。


でも、ここから戻ればそれは全部消えてしまう。


私達には記憶や思い出として残るけれど、父達、義母達の記憶からは消え去ってしまうのだ。

私と洵だけでなく、初音と甚もこの世界にはいなかったことになってしまうことが、堪らなく切なくて虚しい。



『幸せだからこそ、辛いのだ』

「·······っ!」

『聖女に召喚される者は皆、不幸や不遇な身の上であることが多いものだ』

「じゃあ桐野は?」


召喚された時の桐野は別段不幸ではなく、不遇ではなかった筈だ。


『稀にその世界での嫌われ者の場合もある。その方が残された者達が困らないからな』

「いない方が助かる、いなくなって欲しい人が選ばれるのですか?」

『そのようなこともあるようだ』


フッと神様は微笑んだ。


「で、では私はなぜ召喚されるのですか?私は聖女ではありませんよね?」

『そなたは稀代の聖女の母だからだ』

「初音が聖女になるのですか?でも聖女召喚制度は廃止になったのでは?」

『アルベルトは失脚した。それでまた召喚制度が復活するようだ』

「そんな!」


アルベルト様が失脚?あの力強く誰よりも王者の風格がある王が?


「それは本当ですか!?」


洵も驚愕し動揺した。


『ああ、だがこのままにはさせぬ。アララートは今後自国から聖女を輩出することになるだろう。だから、そなたらはもうすぐ戻るのだ。初音はアララート生まれの聖女だからな』

「······わかりました。ではもうこちらには二度と戻らないということですね?」

『そうだ、これが最後だ』


私は行き先が定まってホッとした。

いくら補正があるからといっても、行ったり来たりは精神的に辛過ぎる。こんな思いはもうしたくないのだ。


『それから、初音はお初の生まれ変わりだ。甚は甚左衛門だ』

「「!!」」


二人がもう少し小さい頃、初音は「おはちゅでちゅ」、甚は「じんじゃえもん」と自分のことを言ったりすることが度々あった。

そして「おはちゅ」「じんちゃま」と互いを呼び合っていた。


あれは二人がふざけていたのではなかったのだ。


黒髪村で産んだ私の子ども達が、お初様と甚左衛門様の生まれ変わりだったとは。


先祖が自分の家系に再び生まれてくることもあるそうだ。


『初音と甚は私も守護するゆえ案ずるな』



***



私達は両家の墓参りをしてから、洵に転勤の辞令が出たことを両家に報告した。


「北海道!?」

「そうなんです」

「そりゃまた遠いな」


父と義母の由実さんは驚いていたが、弟の竜人君は「義姉さん、遊びに行ってもいいですか?」と喜んでいた。


「ええ、待っているわ」


彼が北海道の我が家に遊びに来ることはきっと無いと知りながらそう応えた。


「「竜君、遊びに来てね!」」


初音達はじいじとばあば、竜人とはもう会うことは無いとわかっているのかは怪しい。


「ああ、絶対に行くよ」



私達が旅立つ前に、加藤家と鳴瀬家で合同の送別会をしてもらえることになった。

もちろん家族達は異世界への旅立ちとは知らず、赴任先の北海道へ赴くというお別れだ。


これが、今生皆で会う最後だ。


「こら、甚!」


中華料理店にある円卓の回るテーブルをいたく気に入った甚は、用もなく回して楽しんでいる。


「ひゃはは」


やってはいけないとか、だめよと怒られることをわざとやりたがる年頃なのだ。

そういうところは本当に普通の子どもと変わらない。


「ふふっ、こうしていると洵の子どもの頃にそっくりねえ」

「よしてくれよ、母さん」

「ああ、似てる似てる。お前はおとなしそうなのに兄弟で一番やんちゃだったからな」


三年前に洵の昔のアルバムを見せてもらった時も照れまくっていた。

三兄弟が仲良く写真に写っていた。


両家のアルバムから選りすぐりの写真を分けてもらい持ち帰ることにした。

もう会えなくなる家族のことを、大人になった初音と甚にも覚えていて欲しかったからだ。


「大袈裟ねえ、今生の別れでもないのに」

「そうですね、ふふっ」


私は笑って誤魔化した。



食事の最後に、店の人に頼んで集合写真を撮ってもらった。



「「じいじとばあば、またね、バイバイ!」」

「さようなら、お元気で」

「どうか元気で長生きしてくれよ」


双子を連れて私と洵は駅に見送りに来てくれた家族に別れの手を振った。


「美帆、大丈夫か?」


洵も少し涙目になっている。


「うん。帰ろう、私達の家に」


私達が駅のエレベーターに乗り込むと、何度も見て、既に見慣れた光の環が起動した。



(第二部 了)

ここまでお読み下さいまして、本当にありがとうございます。


これで、第二部は終わりです。


だらだら、ユルユルとまだ続きます(汗)


先が気になる方は引き続きお読みいただけると嬉しいです。


配信ペースがスローかつ不定期ですみません。


作者自身が明確な終わりがまだ見えて来ないのですが······(大丈夫か!?)何とかラストまで頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ