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『時にはこんな食卓も』

 老若男女問わず、甘味好きはいる。

 そう、ここにいるダモス・フェイン・ディルスディとレイゼン・オルグ・ルディラスのように。


 彼ら二人と、彼らが作ったまかない飯を目の当たりにした従業員たちは、完全に人選を間違えたことを悟り、後悔の念に襲われていた。

 過去に戻れるなら、どちらかと交代してこの惨劇を回避したものの。

 それは叶わない。時間は流れるもの、その流れは膨大であるがゆえに。


 ギリクをはじめ、ルシアス、アルフレド、ウィスタードは密かに、胃薬を懐に忍ばせて席についた。

 顔には出ていないが背中にびっしりと脂汗をにじませている。


 ザイル、カミュは、やや困り顔で皿を見下ろす。

 ダーイングは、いつものつまらなそうな顔でフォークを握っていた。

 ライアとレニスは歓喜して二人で盛り上がっている。

 スプルスは無言。


「今日のまかないは、パンケーキ。紅茶のおかわりはセルフサービスだ、野郎どもと姫さんがた」

「たまには嗜好を変えて、甘いものも良いものじゃろう?」


 大皿の上に、五枚重ね。滝のような蜂蜜とバターに山盛りのホイップクリームがお隣りに。

 チョコレートソースが網目上にデコレーションされていて、シロップ漬けのチェリーが鎮座しているのが愛らしい。

 ついでにビスケットのお人形さんが、ニッコリとスマイルを浮かべているのは。

 見る者によっては、ホラーそのものだった。


「なあ、これは飯か? それとも新手の拷問か??」

「……私でもこんな(むご)い手段は使わない。考えたこともない」

「わあ。伯爵でもそうなんだ。……僕らの胃袋、大丈夫かな」

「今日は、午後から休業にしましょう」


 三十路過ぎの男たちは、覚悟を決めようと紅茶を一口飲んだ。

 そして、固まった。きっかり五秒。

 口の中の液体を何とか飲み干して、

「ダモス君? この紅茶、なんか甘くない? お砂糖入ってる??」

 ルシアスが尋ねると、すでに紅茶をおかわりしていたダモスは平然と。

「当たり前だろ? 甘いもんに甘い紅茶は最高だろ?」と答えた。


 レイゼンもうんうんと、頷いている。


 甘味に甘味を合わせる感性の持ち主たちのタッグプレイの産物から放たれる恐怖のオーラが五割増した。


 ◇◇◇


 その日、ギリクが珍しく早退。ウィスタード、ルシアス、アルフレドは従業員施設に泊まり一夜を過ごすことになった。

 加えて、石の家の厨房の規則に『ダモス・レイゼン同日まかない飯作成禁止令』が発足された。

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