『ドがつく田舎の野菜づくしテリーヌ』
ザイルは厨房で髪をガシャガシャとかき回していた。
「オレ! 何作りゃいいの!!?」
今週のまかない飯。
ギリクに、アルフレドはやたら凝ったものを用意してきた。
しかし、自分にはそんなものない。ないったら、ない!!
あるのは、野菜の目利き。これ一点に絞られる。
でも、サラダじゃ、ちょっと、ダメだと思うし。
蒸し野菜もどうだろう?ときた。
ダメだ、頭パンクしそう。
「大丈夫ですか、ザイル」
「ウィースー、たすけてー」
「ドがつく田舎仲間として、その声に応えますとも」
執事の眼鏡がキラリ、と光る。
◇◇◇
ウィスタードは型を用意してそこに茹でたキャベツを敷いた。
「ザイル、バターと生クリームと一緒によく練ったマッシュポテトに細かく刻んだ野菜を混ぜてください」
「おう!」
ザイルは力を入れてボウルを掻き回す。
「できた」
「では、これを型へ入れて、はみ出していたキャベツで包み、オーブンでこげない程度に火を入れます」
だが、これだけでは大食漢の従業員には足りない。
「玉ねぎのスライスフライ、作るな!」
「お願いします。私はギリクさんが作ってくださっていたボアのソーセージ3種と自家製チーズを用意します。今回のチーズは自信作です」
ザイルと応援に駆けつけたウィスタードが額の汗を拭うころ、本日のまかない飯はテーブルに並んだ。
◇◇◇
素朴な野菜のテリーヌは、辛いチョリソーとよく合った。
「辛うまです」
「ウィスのチーズもイケる。さすが羊飼い」
普通にスライスした穴あきチーズと、耐熱容器で溶かしたチーズソースもまた、テリーヌと相性が良い。
黙々とおかわりをしているスプルス。
「俺の許可なくソーセージを使うな。しかし、まだたんねえな。ハムも出してこい。厚切りでステーキ」
「ハムステーキ!!」
「女王、身を乗り出したら服が汚れるぞ」
ダーイングの指摘にライアは引っ込む。服を汚したら鞭の女王様が何と言われるか。
◇◇◇
「ウィス、あんがと。助かった」
「今度、私の時は手伝ってくださいよ?」
眼鏡の奥の瞳を細めて、ウィスタードは玉ねぎのスライスフライに齧り付いた。
玉ねぎの甘さとよく揚がった香ばしさ。
ザクザクと、口の周りを油で濡らしていただく。
これこそ、ド田舎流の行儀というもの。
気取る方が、行儀が悪い。
その隣で、ザイルは手づかみでテリーヌを頬張る。
うん。ド田舎バンザイ。野菜が一番!!