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『黒キノコの辛マヨ炒め』

「なあ、旦那ぁ。そんのすげえ辛い酒どうすんの?」

 ザイルは恐々と、巨漢の背から手元をうかがう。


「決まってんだろ。リベンジ。じい様にこの拷問酒がうまいメシになることを教えてやる・・・」

 ギリクは、主に喉と口と舌と胃が痛い目をみた紅色の酒の瓶を握っている。

 その中には、肉厚の黒キノコがぷかぷかとクラゲのように浮き沈みしている。


「・・・食えるもの、が、いいなあ」

 ザイルはおどおど、とギリクの顔を見上げるが、そこには鬼の面があったので、すぐに顔をそらした。


「数時間だけ漬け込んだこいつを、弱火で炒めてアルコールを飛ばす」

 油をひいた鉄鍋の上で、ジュー、と音を立てるキノコから徐々に酒精の香りが消えていった。


 ある程度火が通ったそれをひとつまみし、味を確かめる。

「オラ」

 それを、背後のザイルの口に突っ込む。


「!!!!? 辛っっ、・・・くない。あ、ちょっと辛いけど、イケる。酒欲しい味だ」


「こいつに、マヨネーズを合わせる」

「やっぱり、それ! 酒がいる奴!!」

 ザイルは、酒を調達しに赤髪の尾を引いてダッシュした。


 その晩。

 スプルスは酒のつまみに黒キノコの辛マヨ炒めのおかわりを要求した。


 もちろん、石の家の従業員も同じく。


「あんな代物にこんな用途があるとはな。感服した」

 素直に負けを認めたスプルスの頬は、プクリ、と膨れている。

 もぐもぐ、と次から次へ。遠慮なく食べては酒で流し込む。


 ギリクは、じい様の食欲を舐めていた。と後悔しつつ厨房でさらに太い腕を振い続けた。

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