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『激甘紅茶』
「へぇ、寝ずの番とは精が出るな。従業員(仮)」
ダモスは、ソファのひとつを陣取っているダーイングを一瞥して、ローテーブルに陶器の杯とソーサーを置く。
音をたてないように静かに置いたそれからは、暖かな湯気がふわり、と香りとともに舞う。
「俺からの餞別だ。飲んであったまれ」
「………砂糖入りか?」
ダーイングの質問にダモスは首を傾けて
「いや、蜂蜜と薔薇の砂糖漬けを入れといた。砂糖は、なしだ」
砂糖漬けが入っている時点で、砂糖入りなのでは????
これは、絶対に甘い。
甘味主義者のダモスの言葉は、要注意だとダーイングに危険を知らせた。
そっ、と杯を持ち上げて。
ほんの少しだけ、舐めた。
衝撃がしたから全身を駆け抜けた──!
「脳天をレイゼンに殴られたようなインパクトがあるな、この紅茶は。目が覚める・・・」
「そうかい」
ダモスは煙草を取り出して、火をつける。
薄暗い応接間に、赤い点が灯った。




