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いつもお読みいただきありがとうございます!

 執務もあるが、側室に志願してくる者の選別も始まった。担当者がある程度選び抜いてアイラの元に持ってくる。

 謁見をこなして執務室に戻ったアイラは側室志願の書類に驚いた。もちろん量もだが……。


「なぜ、ケネス・ランブリーが側室に立候補している。彼はランブリー伯爵家の跡取りだろう。側室になどなれないはずだ」

「代わりに妹が跡取りになるようです。あそこは妹も優秀ですから」

「ランブリー伯爵はそれを許したのか」

「許したからこそ書類が提出されています」

「それも……そうか」


 ナタリアに聞いてからアイラは顎に手を当てて考え込む。


 どうすればいいだろう。元婚約者であるヒューバートの弟を側室に迎えるなど……しかし、ランブリー伯爵家は建国当初から存在する家で名門だ。側室に迎えるのは全く問題ない上に、王家とランブリー伯爵家が良好な関係のままであると示せることは大きい。なんといってもアイラがヒューバートと婚約していたのだ。問題のある家ではないし派閥の中で力を持っている。


 悩むアイラに対してナタリアが口を開いた。


「伯爵が良いのであれば、そしてケネス・ランブリー本人が希望しているのであればいいのではないでしょうか。あの伯爵は長男が死んだからと次男を無理矢理側室にして王配を狙わせるような人物ではありません」

「それは私がよく知っている。最近ケネスには会っていないが……彼はヒューバートによく似ている」

「懸念事項はそこですね。しかし陛下がヒューバート様を忘れず想っておられるのは皆が知る事実。ですので、弟を側室にしてもいいのではと。そもそもあちらから志願しているわけですし。正直に申し上げて彼はいい隠れ蓑といいますか、協力者になりえるといいますか。そんな者をハーレムに一人くらい入れてもいいのでは? ハーレム内での情報もより得やすくなります」

「だが……もしかしたら。私が彼の元によく行けば彼も殺されるかもしれない。ランブリー伯爵夫妻の心労を増やすことになる」


 伯爵邸で背中を刺されて死んでいたヒューバートを思い出す。ケネスもヒューバートのようになってしまったら、アイラは自分を許すことはないだろう。


「そのくらい彼も分かっているでしょう。もしかすると兄を殺した犯人を見つけるために側室に志願しているのやもしれません。伯爵家の跡取りよりも陛下の側室の方が権力に近いですから」

「私がふがいないばかりに犯人を見つけられていない」

「そんなことはございません。あれは……手練れの暗殺者の仕業です。証拠が出ないのも仕方がないでしょう」

「それでもだ。伯爵家の屋敷に侵入した暗殺者一人、どうして私は捕まえられない。私は王族で今は女王なのに」

「陛下。ランブリー伯爵家の方々が陛下を恨んでいるならば、独自に調査をしているはずです。こうして側室に志願されたということは陛下を恨んではいないはずです」


 ナタリアに呼ばれたが、アイラは机の上で強く拳を握りしめる。


「私は価値のある女王にならなければならない。兄の尻拭いで即位したとしても。異母兄弟に王位を譲るわけには絶対にいかない。そうでなければ、ヒューバートは何のために死んだのだ」

「陛下」


 ナタリアがアイラの拳の上に手を重ねてきた。あまりに強く握っていたのでアイラは拳の力を少し抜いてナタリアを見上げた。


「暗殺者には依頼主がおります。正直、暗殺者を見つけても口を割らなければ依頼主は分からないでしょう。陛下は依頼主、つまり黒幕を見つけるのです」

「あぁ、分かっている。そのためのハーレムだ」

「面倒なのでもうハーレムと呼びましょう。いちいち逆ハーレムと言うのも面倒です。そして、これまで女を搾取してきた男への復讐でもあります。女王陛下万歳」


 ナタリアが悪戯っぽく笑うので、アイラもつられて笑った。


 兄が自殺さえしなければ、アイラは女王になっていなかった。

 国王の側室たちにも複数子供はいるが、国王は王妃の娘であり死んだ王太子の唯一の妹だったアイラを王太女に指名した。なぜそうしたのか分からない。王族の中でアイラが最も人気のある王族メンバーだったからなのか。自分の治世の最後の人気取りのつもりだったのか。


 アイラは困惑したものの王妃である母を苦しめた側室たちの子供に王冠を譲る気はなかった。それでは母の敵を喜ばせるだけであり、譲ったところでアイラは早々にどこか他国へ嫁ぎに出されただろう。


 アイラが女王になることに反対した異母兄弟たちは程度によって幽閉したり、他国に嫁がせたりした。


「ケネス・ランブリー様はどうされますか? 呼びつけて話を聞きますか?」


 アイラは少しの間だけ目を閉じて考えた。断る理由は、彼がヒューバートの弟だからという一点のみ。殺される可能性があるのは側室全員どころかアイラも同じである。


「いや、いい。そんなことをすれば彼が目立ってしまう……書類が提出されていることが答えだ。彼も入れよう。普通、志願してこないところを志願してきているのだ。弾くわけにもいかない」


 微笑むナタリアに対して頷きながらアイラは書類を突き返した。

 ヒューバートと婚約していた頃、ケネスはいつも親切だった。アイラが王族だからかもしれないが、彼に嫌われてはいないはず。


 でも、もし嫌われていて酷く恨まれているのだとしたら。それはそれでいい。ランブリー伯爵家の彼らにはアイラを恨むだけの理由がある。アイラが王太女でなければ、ヒューバートは死ななかったのだから。


 だから、ケネスが兄のことでアイラを恨んでいて傷つけたり殺したりしたいのならば……それはそれでいいと思ってしまった。彼になら殺されてもいいだろう。


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