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愛と死の逆ハーレム  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売
第四章 先代国王

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いつもお読みいただきありがとうございます!

「ナイル……いや、失礼しました。ナイル様」

「人目がない時はナイルで問題ないだろう。喋り方も騎士だった時のように気安い方が嬉しい。ハーレムに入ったとはいえ、俺はそんなに変わらない」


 ナイルの侍従は怪我をして騎士として勤められなくなった元同僚ドレイクだ。実家は大して裕福ではないので使用人を回してほしいとはいいづらいが、ハーレムでは侍従がどうしても必要だった。そのためドレイクに声をかけたのだ。給料は側室に与えられる品格保持費だか何だかで賄える。


 ナイルは与えられた部屋の庭で朝の稽古の途中だったが、差し出されたタオルで汗を拭う。ドレイクは一瞬悩んだようだったが頬をかきながら言いにくそうに口を開いた。


「陛下がレジェス様のところに泊まったみたいだ」

「そうか。俺の後でレジェス様のところに行かれたのか」

「いいのか? 陛下はナイルを良いように利用しているだけに見える。今回だって白いバラの調査だろ? なのに陛下は調査の進捗を聞きに来るだけだ」

「側室というのはそういうものだろう。ラモン様は陛下のために知恵を絞り、レジェス様は帝国とのつながりを持っている。ケネス様は……どうなのだろう。彼は陛下の心をよく分かっているようだ。調査なら俺は騎士に知り合いも多いのだし」

「元婚約者の弟だからってデカい顔してるだけだろ」

「そんなことを言ってはいけない。彼が俺たちよりも陛下の側にいたことは事実なんだから。それにヒューバート様からもいろいろ聞いていただろう」


 納得できていない様子のドレイクも稽古に付き合わせる。


「陛下はここで一晩過ごされただけ。あとは食事をともにしたり、会いに来てくださったりはあっても……陛下がお忙しいのは分かるが俺としてはナイルを軽く扱われているようで腹が立つ。いくら他の方々の爵位が高くても、陛下のために命を投げ出せるのはナイルだけだ」


 強面のドレイクはまるで自分のことのように怒っている。余計に怖いが黙っておく。


「ありがとう。だが、陛下は即位されて一年も経っていない。元王太子殿下のこともあり、ヒューバート様も亡くされたのに即位したらすぐに王配をとせっつかれているんだ。側室を入れてしばらく放置でも仕方がない」

「そりゃあ陛下が大変なことは重々承知だが……国を治めるのは大変なことだ」

「俺は今の方が幸せなんだ。指導係だった時よりも陛下を見ることができて嬉しい」

「陛下が王女殿下だった頃からナイルは陛下のことが好きなんだろう? 長い片想いだ。その諦めの悪さが実ったのか」

「そうだな。今は厳しい表情であらされることが多いが、王女殿下だった頃は優しくて、使用人や護衛騎士のこともよく覚えてくださっていた。もちろんそれは今も変わらない」


 喋っていると来客があった。ドレイクが出て行って戻ってくる。


「陛下が今晩側室たち全員と夕食を共にすると」

「では夕方の稽古は早く切り上げないといけないな」

「全員と食事だなんてパーティー以外では初めてだな。何か発表でもあるのだろうか」

「王配は陛下の一存では決められないからそれ以外だろう。何だろうか」

「俺は情報を集めてくる。ここでは筋肉や体術より情報が命だから」

「頼む」


 ドレイクの背中を見送って息を吐く。


 側室たちを集めて夕食とは、ギスギスしないだろうか。

 そもそもラモン様は部屋から出てくるのだろうか。ケネス様とレジェス様はいつだってうまくやるだろう。


 ナイルはパーティーや大勢での格式ばった食事の場には慣れておらず、話を振られない限りまだまだ口をつぐんでいることしかできない。気の利いた会話も冗談も政治の話もできず、心のままを言うことしかできないのだから。


 それでもナイルの口元は緩んだ。


「今日は陛下に会える」


 他の男の言葉で陛下が笑ったとしても。毎晩、陛下はどこの男のもとにいくのだろう、どこにいらっしゃるのだろうと眠れずに済む間は。陛下が目の前にいてくださる間はそれでいい。


***


「ナタリア。父の見舞いに行こうと思うから、半日空けておける日程を後で教えてくれ」

「陛下……とうとう……私、アリバイ工作くらいならできますので」


 アイラのセリフにナタリアは何を勘違いしたのか感激している。


「殺すわけではない」

「おほん。それはもちろんでございます」


 ナタリアはアリバイ工作なんて言いながら、そんなこと思ってもいませんでしたという表情を作っていることが明白だ。


「父が死ぬ前に文句でも言っておこうと思ってな」

「はい。先代陛下の体調は今のところ落ち着いているとのことなので、早急に確認します」

「誰か側室を連れて行こうと思うが、誰がいいだろうか」

「先代陛下の見舞いに連れて行くとなると、王配の有力候補と周囲は思うでしょうね」

「そうだが、一人では行きたくない」

「先代陛下の頭が大丈夫か確認したいならばケネス様ですね。あとのお三方は特には……」

「ケネスをヒューバートと見間違えるということか?」

「はい。それかいっそのこと全員連れて行ってもおもしろ、いえ何でもありません」

「大所帯だな。皆に聞いてみよう」

「側室の方々にですか?」

「あぁ。皆で食事をしてその時に聞けばいい」

「それはまた面白いことになりそうです」


 アイラは気だるげに笑ってから指示を出して書類に向かった。


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