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愛と死の逆ハーレム  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売
第二章 女王の側室たち

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いつもお読みいただきありがとうございます!

「坊ちゃま、本日もお茶会のお誘いはお断りに?」

「あぁ」

「他のお三方はたびたび集まって仲良くされているようですが……」

「見せかけで仲良くしているだけで腹の探り合いだろう。放っておけばいい。読みたい本がたくさんある」


 侍従の言葉にラモンはピッと積んである五冊の本を指差す。


「坊ちゃまの順位は現在最下位です。ヨナハ地方の件を解決したのは坊ちゃまですのに」


 スペンサー伯爵家からついてきた、ラモンを幼い頃から知る侍従は雑誌を広げながらこれみよがしに悔しそうな表情を作る。


「最下位とは?」

「こちらの側室ランキングのお話です。どの側室が王配になるかの予想を雑誌や新聞が定期的に載せており、坊ちゃまは現在国民の投票で最下位です。もともと引きこもりで、坊ちゃまの顔は知られておりませんし余計に。元騎士や元婚約者の弟だけでなく、あのプラトン公爵家の放蕩息子にも負けているのですよ?」

「国民投票ではなく、読者や関係者の投票だろう。そういうのは」


 ラモンは何の傷ついた様子もなく冷静に指摘する。


「ついでに言えば、ヨナハ地方は私のおかげではない。私がたまたま以前聞いた知識のおかげで奇病はなんとかなっただけだ」

「謙遜されなくともいいではないですか。坊ちゃまは下調べも入念になさって緑の顔料の裏付けを取ったのです」

「本で調べた程度だ。実際に動いてあれこれ解決したのは陛下の派遣した専門家たちだ。誰だって実際に助けに来てくれた者や指示を出した陛下に恩を感じるだろう」

「坊ちゃまは正確さを追求するあまりに謙遜ばかりです。陛下も酷いではないですか。会議では坊ちゃまを褒めておきながら、あの夜以降坊ちゃまのもとにいらっしゃらないなんて。もっとお褒めの行動があってもよろしいのでは?」

「陛下はヨナハ地方の件で忙しいのだろう」

「もう解決したではないですか」

「陛下には公務もある。公務を疎かにしてハーレムに入り浸る統治者では困る」

「それはそうですが……坊ちゃまは陛下のおっしゃった通りにベッドの位置まで変えましたのに。変えろと言っておきながらずっと陛下はいらっしゃらないのですよ? 坊ちゃまの何がご不満なのでしょう。多少は本の虫で、ほんの少し人嫌いで、多少口下手で、これまたほんの少し社交的ではないだけですのに」


 侍従の身内びいきにラモンは皮肉っぽく口の端を少し上げた。


「陛下は最近ハーレムのどの男のもとにも通われていないだろう。別に私だけを不満に思っていらっしゃるわけではない」


 侍従はひとしきり嘆いてからラモンをじっくりと見つめた。


「ナイル様は元騎士であるがゆえに鍛えていらっしゃいます。レジェス様も華奢ではございません。ケネス様は一見華奢ですが、お兄様が殺された件があってからより一層身を守る術を身につけていらっしゃるとか」

「何が言いたい?」

「坊ちゃま。誤解なさらないでくださいませ。わたくしめは坊ちゃまの黒髪も知的な目元も細い体躯も愛おしく思ってございます。しかし、陛下は坊ちゃまのお体がお好みではないのかと。その、華奢すぎて」

「運動は嫌いだ」


 侍従がこれからするであろう提案をばっさりと拒絶して、ラモンはメガネをずり上げて本に目を落とす。


「坊ちゃまは陛下がお嫌いなのですか」

「嫌いも何もよく知らない」


 幼い頃から仕える侍従はラモンの嘘をつく時の仕草などとうの昔から知っていた。侍従は辛抱強く待つ。ラモンが再び口を開いた。


「陛下は女性にしては珍しく、感情的ではないからとても会話がしやすい」

「王女時代のあの方はお優しいとしか聞いていませんでしたが、白黒はっきりつける方のようでございますね」

「陛下の異母兄であるルキウス殿下への対応のことを言っているのか?」

「はい。旦那様が密かにルキウス殿下を支持していたことがバレているため、陛下は坊ちゃまのもとにいらっしゃらないのでしょうか」


 ラモンは斜め上を見て少し考える素振りを見せた。


「それなら私のところに一切来ないか、頻繁に来て他の側室に嫉妬させるか、あるいは……」

「ルキウス殿下に何があったのか不明ですが結局陛下にたてついた結果お亡くなりになったので、坊ちゃまも陛下にアピールして生き残りませんと」

「あぁ、その件について手は打った。陛下は私と離婚されない」

「坊ちゃま、寵愛を競いませんと。離婚されなくとも側室最下位では」

「特に興味がない。私は本が読めればそれで」

「坊ちゃま。陛下とご自身の立ち位置にもう少し興味をお持ちください」


 ラモンは今度こそ顔を上げずにページをめくった。読書に没頭すると寝食さえ忘れるラモンを知っている侍従は、食事まで時間があることを確認して諦めたように背を向けた。


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