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愛と死の逆ハーレム  作者: 頼爾@10/10「蛇を君に捧ぐ」書籍発売
第二章 女王の側室たち
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6

いつもお読みいただきありがとうございます!

「これからレジェス様のところに行かれるのですか?」


 くそ真面目な顔で聞いてくるものだから、アイラは耳がおかしくなったのかと思った。


「なぜレジェスが出てくる」

「誓約式の後、陛下は二日連続でレジェス様のもとへ通われました。ラモン様のところには一日だけ。それに先ほどもレジェス様のところへ……陛下はレジェス様を寵愛しているとハーレムでは持ちきりです」

「水をかけられた件で話をしていなかったからしただけだ。最近はヨナハ地方と山賊に時間を取られていてな」


 カップを置いて背をソファに預けかけて、レジェスやラモンの前ではこんなにすぐ姿勢を崩さなかったと座り直す。疲れているからとナイルの前で気を抜きすぎている。酒も飲んでいないのに。


 ナイルは一連のアイラの行動を見て、ふわりと笑った。


「陛下は大変お疲れのようです。もし良ければ肩を揉みましょう」

「そなたでは力が強すぎないか」

「どう見えているか分かりませんが、騎士団の中でもうまかったのですよ?」


 無神経な行動に罪悪感があったので、アイラは期待せずに頷いた。

 ナイルが背後に移動して来る。


 そういえば、ナイルが背後に来ることに抵抗感はない。やはり近衛騎士だったからだろうか。他の男ならば後ろに立たれてアイラの体は緊張していたはずだ。


「山賊が今度はスペンサー伯爵領に出たそうですね」

「知っていたのか」

「ハーレムの警備の中には知り合いもいますので」

「あぁ、なるほど。それでか」

「陛下の頭の中は私よりも山賊で占められていませんか? 先ほどからぼんやりしていらっしゃいます」


 ナイルの言葉でアイラは思わず笑った。本人が自負しただけあって肩揉みは上手い。


「すまないな。ふがいない女王で」

「っすみません。そのような意味で言ったわけでは」

「分かっている。ただ、山賊を壊滅させたと思っていたのにまた出てこられると……どうにもうるさくてな。ついつい早く処理しなければと考え込んでしまう」


 肩を揉むナイルの手を軽く叩いて気にしていないと示してからアイラは目を瞑る。


「確かにそなたの肩揉みは上手い。ナタリアよりもずっと」

「ナタリア嬢ですか」


 ナイルの声が軽く笑いを含む。近衛騎士だったので彼はナタリアのことも知っている。


「ナタリアは握力が意外と強くてな。しかも骨の上ばかり揉むから痛くてかなわん」

「最側近のナタリア嬢より褒めてもらえるなら大変光栄です」


 しばらく肩を揉んだ後、ナイルの手が腕に移動した。


「陛下、肩だけでなく腕も手も凝るのですよ」

「それは知らなかったな」

「陛下はたくさん働いておいでです」


 手をナイルに預ける。血の巡りがだんだん良くなってきたようで、余計にぼんやりしてしまった。


 眠くなってきたところでナイルの手の動きが止まったので、終わったのかとナイルに視線をやる。ナイルはなぜかまた地面に跪いていて、アイラの手の甲に唇を落とした。


「陛下、このくらいはお許しいただけますか」

「咎めるならとっくに手を振り払うか離れるよう命じている。ナイルは私の靴を舐めろと言えば舐めそうだ」


 ナイルが体をかがめようとするので、アイラは彼の顎を掴んで止めた。


「冗談だ」

「陛下の靴を舐めることなど、私には簡単なことでございます」

「やめろ。私を変態女王にでもするつもりか」


 ナイルの顎を咎めるようにぎゅっと掴む。


 ナイルの目は雄弁だった。レジェスにもラモンにもない温度がある。アイラはその温度を再び見つけてしまい、動揺した。


 ナイルは動揺を見透かしたように、顎にあるアイラの手に自身の手を重ねてさらに顔を擦り寄せた。


「私は陛下に笑っていて欲しいだけです。あなたが微笑んでくださるだけで十分なのです」

「ナイル。私はそんな大層な人間ではない」


 ナイルは上目遣いにアイラを見ながらまたアイラの手の甲に口づけた。


「私は身分でも能力でも、王配にふさわしくないでしょう」

「身分で王配を決めるわけではない」

「ですが、私には学がそこまでございません」

「学もそこまで必要ではない。王配はそこまで政治に関わらない上に、そなたは肩揉みがうまいではないか」

「そのほかも陛下にご満足いただけるように頑張ります」


 一瞬、言葉の意味を勘ぐりかけたがアイラは何も言わずに威厳たっぷりに頷いた。


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