この面談は特別なものになりそうな気がしている①
ラブホテルのダンジョン転移について領主フォルカー・エライマンと話をする為にエライマンの街へ入った所でタスケは当人との再会を果たした。
貴族家の当主なのに単独だし。
何やら薄着だし。
薄着が開けていてちょっとセクシーだし。
女も男も騒ぎ出しそうだし。
門に立っている兵士がややねっとりとした目でフォルカーを見ているし。
正直ちょっと気味が悪いし。
そんなフォルカーのあられもない姿を見て。
これは誰かに止められる前に飛び出して来たなと察したタスケは。
さっさと街を出てラブホテルへと向かう事にした。
きっと帰ったらフォルカーは妻と側室達に滅茶苦茶怒られるだろうけれども。
タスケからしたら他人事なので。
さっさと街を出てラブホテルへと向かう事にした。
「共は要らん。皆は持ち場へと戻る様に」
フォルカーが現れた事で兵士達が。
特にファンとガチ恋勢が集まってしまったので指示を出してから街を出たフォルカー。
兵士達は顔を見合わせて。
隠密行動が得意な者にひっそりとストーキングさせる事に決めたのであった。
街を出たフォルカーはまずタスケに肝心な質問をする。
「あれは本物の休息宿ラブホテルなのか?」
見た目にはどこからどう見てもあのラブホテルだ。
あんなに巨大でピンクい塔は他に無いだろう。
それに近頃タスケのテーラ商会が、フォルカー達が以前にラブホテルで食べた絶品のフルーツを販売している事は知っている。
故にラブホテルとタスケの関係が良好なのは容易に想像出来た。
なのである程度の確信は持っているので、この質問はあくまでも確認だ。
「その通りです。詳しい話は人払いをしてからと思っていたのですが」
タスケがチラリと後ろを見ると、ストーキング兵が背後数mまで迫っていた。
もう全然隠密行動する気が無い。
街灯に吸い寄せられる羽虫状態である。
「共は要らんと言っているだろうが!」
「はいぃ♡ごちそうさまです♡」
主君のお叱りを頂いて満足したストーキング兵はスキップしながら街へと帰って行った。
「相変わらず何と言うか。個性的ですよね」
「そうなのだ。私も頭を悩ませている所だ」
やれやれと首を振ったフォルカーに。
タスケは要点だけ掻い摘んで詳しい話をする。
「と言う話でヤーサンからこちらへと移って来た訳です。事後報告となった事は申し訳ないのですが。こちらに移転させてしまって良かったですよね?」
タスケは確信めいたものを持っていて。
「良くやった!ラブホテルから戻ったカロリーナを見て妻達が連れて行け連れて行けと煩くてな。それに個人的にも秘薬の効果が薄れて来たので、また処方して頂けないかと考えていたのだ」
以前フォルカーと共にラブホテルを訪れた13番目の側室カロリーナは大層美しくなって帰って来た。
髪の艶、肌の張り、血色の良さ。
化粧での誤魔化しではなく自身の持つポテンシャルをより引き出した美しさだ。
そんなカロリーナを見て貴族の夫人達が黙っている筈が無い。
「仕事なんか良いから早く私達も連れて行きなさい!」
とは一同を代表した妻の言葉である。
伯爵家の妻としてそれで良いのか。
フォルカー自身もフォルカーのフォルカーが秘薬を使ってから日が経つにつれて以前の様にはフォルカらなくなって来たので、一度フォルカりに行くつもりではあったのだ。
それがひとっ走りで着く距離に出来たとすれば。
いつでもフォルカーのフォルカーをフォルカリオンへと最大進化させる事が可能となる。
これでその日の体調で妻や側室達を悲しませる事も無くなる。
フォルカーのフォルカーは時折息をしていないかのようにグッタリフォルカーへと退化してしまうのだ。
フォルカーのフォルカーには定期的なマカマカテラックスの投与が必要である。
そうすれば妻や側室達とヤリまくれて人類皆ハッピーである。
タスケには秘薬の事を伝えていないので頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるが。
「それならば幸いでした。紹介が遅れましたが、こちらはCランク冒険者パーティー蒼剣の誓いのリーダーを務めているスミスさんです」
「お目に掛れて光栄です。ネイト・スミスと申します。訳あって唐突に生えた家名の方を名乗っていますのでスミスとお呼び下さい」
タスケの紹介を受けて、スミスはフォルカーに自己紹介をする。
フォルカーの武勇についてはスミスも聞き及んでいる。
実際に会ってみても確かに強いなという印象だ。
ヤーサン冒険者ギルドのギルドマスターであるバルナバスよりも強いかもしれない。
スミスは心の中でそんな感想を漏らした。
「彼ら蒼剣の誓いはラブホテルの中に居を構えています。一応フロントで迷惑行為が行われた時に出て行く用心棒と言う事です」
「なん、、、だと」
ラブホテル内に居を構えるなんて。
そんなのって羨まし過ぎる。
以前フォルカーがカロリーナと宿泊した客室は魔物の存在しない海や広々とした風呂、極上のベッドが置いてある至福の空間だった。
あれ以来、屋敷のベッドが固いと感じて仕方が無い。
朝目が覚めて一番に思うのは“背中が痛い”だ。
ラブホテルのベッドはベッドの上でくんずほぐれつする時も膝が痛くならない極上品だ。
対して屋敷のベッドは悲しい程に膝が痛くなる。
上に乗られても全然沈まないから腰と尻が痛い。
早急に柔らかいベッドを作らせているが、あそこなまでの極上品が出来上がる事はないだろう。
せめてマシな物が欲しいのだ。
そんな場所に普段から住んでいるだなんて羨まけしからん。
フォルカーは軽めに殺意を覚えてスミスはビクッとなった。
その後、一番低いランクの客室を使っているとわかってとりあえずは許されたのだが。
「所で。勢い余って向かってしまっている訳だが、ラブホテルの主人には迷惑に思われたりしないだろうか?」
フォルカーは今更不安に思い始めた。
ラブホテルがダンジョンである事は以前にタスケから聞いたし。
実際に利用してみて、あまりにも現実離れした数々の物からダンジョン以外だと考える方が難しかった。
それほどにダンジョンダンジョンしているのだ。
そしてあれ程のダンジョンを作り出すダンジョンマスターが普通である筈が無い。
相当に強大な力を持っているか。
人ならざる叡智の持ち主であるか。
どちらにせよ機嫌を損ねたり対立して良い事など一つもないのだ。
だからフォルカーは不安な気持ちを持ったのだが。
「今日の所は説明だけと考えて後日面談の場をと考えていたのですが。恐らく普通にお会いになるかと思いますよ。あの方は少々。いやかなり。あまり類を見ないぐらいに気さくな方ではありますので」
「気さくと言うか何かこうもっと違った、、、上手くは言えないんですが変わった方ですよね」
タスケもスミスもやや濁した言い方をするのが気になったが。
とにかく気分を害したりしないのであれば問題は無い。
「一つだけ注意点としまして。ラブホテルの主人。オーナーはアイト様と仰るのですが、恐らく王族や貴族の権力などはどこ吹く風の方でいらっしゃいます」
「ああ、それについては問題ない。魔物を相手に権力が通じないのと同様だろう?人の決めた肩書など種族が違えば何ら意味を持たないのは理解している」
フォルカーは若い頃に旅をして冒険者として何度も魔物と戦ったり、ダンジョンに潜った事もある。
もしも魔物と退治して窮地に陥った時にエライマン伯爵家の人間だから見逃せなどと言って見逃してくれる魔物がいない事など当然の事として理解している。
それは例え話が通じる相手だったとしても、人間社会の埒外にいる存在に権力が通じない事など常識だろう。
そういった事を理解していない貴族も多々いるであろうが。
なのでフォルカーは対等に見られようとも下に見られようとも構わないと考えている。
マカマカテラックスが手に入らなくなったら困っちゃうし。
「俺からも失礼を覚悟で申し上げます。いつもアイトさんの隣にいるヒショさんと言う、恐らくは魔族の女性なのですが。あの人だけは怒らせない方が良いです。あの人に本気で顔面を殴られたら、多分頭が粉々に粉砕されます」
Cランク冒険者であり、見るからに実力のあるスミスからの忠告にフォルカーは嫌な汗が流れたが。
あまり深く考えても仕方が無いので自分の目で確認して判断する事として一旦忘れる事にした。
一行がラブホテルに着くまで、もう間もなくである。
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