特殊シチュエーション客室を利用するのは常連以外に有り得ない②
この子は今、一体何て言ったんだ?
ブレンダはあまりの衝撃に心の笑撃を抑える事が出来ず頬が弛み切っている。
チャドを大人に?
大人にって事はつまりそう言う事だろう。
いや、こんなにも無垢な合法ショタがそんな卑猥な言葉を口にする筈が無い。
きっと別の意味で大人にして欲しいと頼んでいるのだ。
、、、、、別の意味で大人にって何!?
ブレンダはあまりの事態に錯乱していた。
戦い方は豪快だが、心は常に沈着冷静な印象のブレンダがだ。
ちょっともうズボンに浸水してきていて、こんな時の為に身に着けている革のスカートが無ければ染みっ染みの染みだ。
幼児に見られたら「漏らしたー!」と言って揶揄われるぐらいの状態だ。
つまり結構悲惨な状態だ。
「大人にするってそれはどう言う、、、」
どうにか気を取り直して言葉を漏らしたブレンダ。
今回漏らしたのは言葉の方だ。
何処とは言わないが現在進行形で漏らしているのは事実だが。
上から下から漏らしているのは事実だけれども、今回スポットを当てるのは上のお口の方である。
下ネタなどでは決して無い。
「えっと、ここじゃ恥ずかしいので誰にも聞かれない所が良いです」
そう言ってブレンダの袖をちょいちょいと引いたチャド。
ああ、もうお終いだ。
ブレンダは穏やかな表情で悟りを開き。
ちょっと待っててくれと言ってトイレに駆け込んだのであった。
「すまない、待たせたね」
冒険者ギルドのトイレから戻ったブレンダは清々しい表情を浮かべていた。
心なしか肌が艶っ艶で憑き物が取れた様な顔をしている。
そして先程よりもやけにフレンドリーになり。
「何処で話を聞こうか?密室か?密室がいいのんか?」
ベタベタとボディタッチを行いながらチャドを密室に誘い込もうとする。
これだけあからさまだったら子供だって何かありそうだと怪しむし警戒もするだろう。
数秒前まで憑き物が取れた顔だったのに、既に憑き物に憑かれた様に目が血走っているし。
口元が醜く歪んでいるし。
周囲から“あ、あいつヤル気だ”って思われているし。
「いえ、秘密の場所があるんです。こっちです」
しかしチャドは気付かない。
彼の両親が言う様に、チャドはまだまだ子供なのだ。
見た目も心も無垢無垢の無垢であり。
体は子供、齢は合法のモアストロングショタなのだ。
袖を引っ張るチャドについて行くブレンダは、今にも襲い掛かりそうな狼の様で。
チャドが不思議そうに後ろを見上げるぐらいに近距離に位置して。
時折マーキングの如く股間を擦り付けて匂い付けを行うのであった。
チャドがブレンダを連れて来たのは何のことは無い裏路地だった。
確かに人通りは少ない場所ではあるが、別に秘密にする様な場所ではない。
だから。
だからこそ。
そんな所を秘密の場所だなんて言ってしまうチャドを可愛いと思った。
これは母性ではない。
ピュアな剥き出しの性欲である。
少々狭い裏路地で。
抱き上げて高い高いをしようと思えば容易に可能なその距離で。
チャドはブレンダを見上げて切実な悩みを打ち明ける。
「皆、僕の事を子供だ子供だって言うんです。僕は、確かに皆よりもちょっぴりだけ背は低いですけど。言葉遣いもどうしても直らなくって子供っぽいですけど。未だにママのおっぱいを吸ってますけど。だけれど、もう成人したのに。未だにママのおっぱい離れは出来ないけれど、もう成人したのに。成人した僕の事を皆が子供だ子供だって言うんです。ママのおっぱいを吸うのだけは絶対やめられそうにないですけど」
自らの心の内を曝け出したチャド。
あまりにも剥き出しの真に迫る言葉だ。
特にママのおっぱいが大好きなのはストレートに伝わって来る。
チャドはママのおっぱいが好き。
その言葉はブレンダの心にストンと落ちた。
チャドの悩みを自分が解決してあげたいと思った。
解決してあげなきゃいけないと思った。
チャドの悩みを解決するのが、自分の生まれて来た意味なのだと思った。
滅茶苦茶ヘヴィーだがそう思った。
ついでに距離が近いのでチャドの何だか野菜っぽい体臭が鼻をついて。
身と心だけでなく体臭まで少年のそれなのか!と何処とは言わないが大洪水になった。
「それは可哀想だね。あたいも今でこそこうだが、子供の頃はチャドみたいに背が低くってね。体も弱かったから沢山馬鹿にされたもんさ。あたいの場合はママのおっぱいじゃなくってパパのチン、、、コホンゴホン。何でもないよ。今のは気にしないでくれ。とにかく、あたいはチャドの気持ちがわかるし。チャドの気持ちがわかるのはあたいだけと言っても過言では無いだろうね」
ブレンダは創作話を始めた。
チャドは明らかに共感を求めている。
だから自分がチャドの立場に立ってやる事で、チャドの気持ちを少しでも軽くしてやろうと考えたのだ。
決して自分に依存させて離れられなくさせてやろうとか、そんな剥き出しの下心を見せている訳ではない。
神に誓って絶対にない。
そして【第一章カラダの弱かった幼女編】から【第二章キモチの強い少女編】へと移り、修行の果てに今の立派な体躯へと成長を遂げる【第三章ベリーグッドな冒険者編】に辿り着く頃にはチャドの瞳はキラッキラに輝いていた。
一点の曇りもなくブレンダの話を信じ切っている顔だ。
自分と似た境遇から身も心も立派な大人になったブレンダに対する強い憧れの眼差しだ。
最早洗脳にすら思えてくるが、別にブレンダは洗脳を企ててなどいない。
ただ自分に依存させて離れられなくさせてやろうと企てているだけなのである。
危ない!それ以上近付くのは危険だ!
それこそチャドの憧れる“大人”がそこに居合わせたならば、忠告をして止めたかもしれない。
しかしこの場はチャドが秘密の場所と言った人通りの少ない裏路地である。
ブレンダを止める者もチャドの心配をする者も現れる筈がなかった。
「どうすれば僕もブレンダさんみたいな大人になれますか!?」
憧れの眼差しでブレンダに問い掛けるチャドに。
「あたいがチャドに稽古をつけてやるよ。あたいが責任を持ってチャドを大人にしてやる」
ブレンダは穏やかに大人の微笑みを浮かべながらそう告げて。
「早速、訓練場に向かうとしようか」
チャドを誘い出す事に成功したのであった。
「魔羅哉魔羅哉ー♪」
ラブホテルの最上階にあるマスタールームでは。
ダンジョンマスター兼ラブホテル総支配人兼スペシャルエグゼクティブパーフェクトウルトラミラクルクルクルミラクルプロデューサーの肩書を持つアイトがご陽気に歌を口ずさんでいた。
ドッドッドッドッと四つ打ちのクラブミュージックに乗せて前世で有名だったCMソングを口ずさむのはどうかと思うのだが。
これはアイトにとっての“待ち”の構えである。
アイトは今、ラブホテルにおけるアシストの必要性と覗きの正当性を主張する為のサンプルと成り得る客を待ち続けていた。
但しアイトは目の肥えたエロスグルメで猥猥ワールドモンスターの肩書も持っている。
なので少々の餌には食い付かない。
これは確実に面白いと思えるカップルだけを狙って一撃必殺のアシストを決める。
そんな。
あ、そんな男なのだ。
既に主旨が変わっている気がするが、きっと気のせいである。
「そう言えば特殊シチュ客室って過去に利用された事あったっけ?」
アイトがヒショに質問をし。
「一度もなかったかと思います」
ヒショが答えた。
そもそも特殊シチュ(エーション)客室とは。
アイトの前世で存在した男がグッと来るシチュエーションと、それに合わせたコスチュームが用意された客室である。
例えば病院をイメージした客室には白衣とナース服と患者衣が置かれ。
学校をイメージした客室には学ランとセーラー服とブレザーが置かれている。
そう言った特定の癖にぶっ刺さるシチュエーションを提供するのが特殊シチュ客室なのだが。
外の世界はそもそも日本ではないので元ネタがわからず、癖にぶっ刺さる者が存在しなかった。
ついでに特殊シチュ客室は最低でもランクDなので目的がはっきりしない客が選ぶ事はなかった。
そして稼働率0%の客室として未だ日の目を見る事は無かった。
しかし、そんな特殊シチュ客室を利用する奇特な客が現れる。
それは。
『こ、ここって本当に大丈夫なんですか?パパとママに、ここには近付いちゃ駄目って言われたんですけど』
『大丈夫だよ。何かあってもあたいが守ってやる。それにチャドは大人になるんだろう?両親の言いつけを守っていたら何時まで経っても大人になんてなれないよ。あたいに全部任せな。あ、ランクDの車両客室を頼むよ』
『わ、わかりました。けど恐いから手を繋いでて下さいね』
『ぐはっ!鼻血が!おっと、何でもないよ。決意が鈍らない内にさっさと行くよ』
『はい!』
30歳前後に見える冒険者の女と。
10歳前後に見える怯えた様子の少年であった。
少年は女の手をギュッと握って客室へ続く扉へと連れられて行ったのであった。
お読み頂きありがとうございます。
カクヨム先行で公開していますので気になる方はこちらも是非お願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16817330665881599043




