78アルフヘイムの丘。
「まったく、マレトめ。私を何だと、思ってるんだ。面倒事ばかり、押し付けやがって!」
「まぁ、いいじゃない。賑やかになるんだし、多分すごい事になるわよ。」
「オイク、マコの様子は?」
「間違いないわ、兄弟ならわかるでしょ?」
「あぁ、マレトは半信半疑だがビリドは確信してるようだな。」
「ほら、巫女達が先着したわよ。」
「ただいま戻りました、大司教様。」
「うむ、一旦休息するが良い。後ほど、精霊の加護を賜る様に。」
「お袋、こんなに連れてけんのか?バゴッ、ベギッ、痛ェ~!」
マレトが、血だるまになっていた。
「お袋って呼ぶな、くそガキ!この位の転移なら、朝飯前ですわ。オーホッホ!」
「ハーッ、よろしくお願いいたします。お嬢様!」
「任せて、たもれ。」
先に、二国の護衛を母に頼んでホーリヤに送ってもらった。
「アキト、一緒に乗せてよ。あたしも、これに乗るの!」
コルザに拳骨を落とされたルアンが、涙目になっていた。
豊穣の女神様は、どこに行ってしまったのだろう。
「陛下、そろそろ出発します。ご準備を!」
「よろしく頼む、総司令官。」
「ハッ!出るぞ、皆の者!」
我々は、イエロートレインに乗り込んだ。
こいつは、ナジロ王国とアニス教国を東西に結ぶ魔導鉄道だ。
真ん中のスカルを経由して、高速で移動ができる。
ホーリヤは、山岳地帯と大峡谷に阻まれて着手が遅れている。
今回は、ボムコプターに特等客車を繋げての旅程である。
改良によって、およそ半日弱で着く予定である。
「ちょっと、マレト!アキトの事、こき使い過ぎなんじゃないの。いくら兄弟でも、かわいそうよ。」
「ルアン、陛下だぞ。アキトは、臣下だ。筋が、通らぬ。」
「パパは、黙ってて!このボケナスには、言ってもわからないのよ!」
「うん、ルアンの言う通りだ。オレは、アキトに頼り過ぎている。なんたって、優秀だからな。アイツがいなければ、帝国は成り立たん。ルアンには、感謝してるよ。アキトを支えてもらって、本当にありがとう。」
「大したことないわよ、バカ兄さん...。」
「本心ですか、陛下?」
「あぁ、宰相と総司令官はオレの両腕だ。これからも、よろしく頼む。」
「ビリド、国王陛下にあれを。」
「マレト、何だこれは?」
「携帯念話機です。使い方は、後でビリドにお伝えさせます。伯父上が、交易で取り寄せた魔石で作りました。珍しい物をありがとうございます。」
「お前は、小さい頃から不思議な物ばかり作るな。うちの大魔術師が、あれは想定外の事ばかりしよると嘆いていたぞ。一度、脳を解析したいそうだ。」
「そのうち、お祖母様にもあいさつに伺います。よしなに。」
「着きましたよ、陛下。大司教様が、出迎えてくれてます。」
タラップを皆が降りるのを確認して、最後に大地を踏みしめる。
「大司教様、面倒をおかけします。」
「おい、マレト。ボムコプターでイエロートレイン運ぶなんざ、誰が考えた。」
「アキトです、なかなかいいアイデアでしょ?」
「そうだな、どうせ改良せなあかんねやろ。こっちに、回せ。収益の二割は、やる。アキトにも、ボーナスをはずむぞ。」
「義兄さん、アコギですね。三割は、譲れまへんなー。」
「ちっ、お主も悪よのう。」
「あんた等...。兄さん、聖職者でしょう?」
「好きでなった訳では、ないわ!マコの為だからだ!やっと、報われるわ!」
「確かに、よかったなマレト!」
「はい...。」
翌朝、アルフヘイムの丘は晴れ渡っていた。




