8皇太子の仕置。
「-夢想剣-!」
又、周りの兵士がふっ飛ぶ。
「-夢想剣-!」無意識で、多数の敵を薙ぎ倒す技。
「義姉上、大丈夫ですか?こりゃ、ひどいな。」
「何だ、貴様は!どいつもこいつも、いったいどこから湧いて来やがるんだ?」
その者は、マコトを小脇に抱えて後方に飛び退いた。
「アキト君...駄目...逃げて...。」
「無様ですね、義姉上。剣術だけで、私を一方的に叩きのめした人とは思えない。それにしても、魔力使い過ぎですよ。二万の魔導武具を二度も飛ばした上、防御魔術を施しながら一緒に戦うって!あんた、化け物か?体力だって、ほとんど残ってないじゃないですか?後は私に任せて、おとなしくしといてください。」
マコトは、そのまま気を失った。
「弟君かぁ、随分あべこべな姉弟よなぁ?あまり似てないが、弟もべっぴんじゃねぇか!献上品が、一つ増えたってもんだ。」
「吾は、スカル帝国剣聖アキトである。命の惜しくない者は、かかって参れ!」
引退した皇帝に代わり、アキトが剣聖の座に就いていた。
皇太子マレトと違い、しっかり技量は受け継いでいた。
「用心しろ!剣聖って言やぁ、魔術の通用しねぇ化け物だ。重装騎兵、前へ!」
多数でアキトに攻めかかる愚を止めて、距離を置いて槍を投擲する。
マコトを庇いながら、幾度と無く跳ね返す。
しかし、限界が来た。
身体はあちこちボロボロになり、刃こぼれもしていた。
敵を幾千と倒したが、ここまでだった。
「帝国の騎士ってのは、化け物か!こんな、ガキだって言うのに?」
「ロリっ子、生きてるか?どうやら、ここまでのようだ。すまん、兄上に申し開きできんな。」
「やっと、ちゃんと呼んでくれたね。アキト、あなたたけでも逃げて。陛下達が、待ってるわ...」
「ドゴッ、ベキッ!」
又、容赦の無い制裁が二人に加わる。
そして、大司祭が傍に寄ると
「待たれよ、ヤコブ卿!」
「貴様は、ビリド!異教徒が、のこのこ何しに来やがった!」
「ビリド、時を稼げ!」
「はい、殿下!」
マレトが脳内演算でマコトの拘束を解きながら、深い接吻をする。
みるみるマコトの傷が癒え、身体から神々しい白光が輝きだした。
「ダーリン...夢、ボクとうとう...」
ビリドの防御結界も、限界に来ていた。
「マコト、あずきオレだぞ。飲め!」
その途端すくっと立ち上がり、「勇気百倍、マコちゃんマン!」
勇気じゃなく、魔力百倍だろ。
どっかの、菓子パンヒーローか!
「もう、許さないんだから!エエィ!」
枢機軍全員が跳ねる様に倒れ込み、一瞬で消えた。
後には、何一つ残さず...。
「ビリド、エセ坊主は確保したか?」
私は、殿下の前に大司祭をひざまづかせた。
「家の嫁が、世話になったな。」
言葉は穏やかだが、表情は冷徹だ。
三白眼を吊り上げて、上から睨む。
イケメンではないだけに、シュールだ。
殿下の超常スキル威圧が、溢れ出している。
大司祭は、震えながら失禁して気絶した。
「ビリド、起こせ。」
気が付いた大司祭は、「お許しくださいませ。命以外は、何でも差し上げます。お助けください!」
大司祭は涙と鼻水を汚く流しながら、ひれ伏している。
「聖職者のクセに、命を惜しむか?なら、助けてやろう。-フェビロ-!」
すると、大司祭が樹木の形に変異して大地に埋まってしまった。
「何をした!」
樹木になっても、喋れるらしい。
どこからか鳥達が来て、大司祭をついばみ出した。
「命は、助けてやったぞ。一生、ここで鳥達のエサになっておれ!」
アキトがビリドに治癒魔術をかけてもらっているところに、マコトを抱っこしたマレトがやって来た。
「アキト、済まなかったな。ありがとうな、マコトを助けてくれて。ところで、お前何でここにいるんだ。又、ストーカーしてたのか?」
「兄上、人聞きが悪いですよ。カミロ姉ぇに、頼まれたんです。」
「冗談だ、悪かった。ホントに、ありがとう。ルアンと幸せになれる様に、協力は惜しまんからな。」
「おねえちゃんも、応援するよ~。」
「義姉上~!」
義姉上、おねえちゃん?誰が?
アキト皇子は、何で泣いているんだ。
「お兄ちゃん、めんどくさい。マコ、お腹空いた。」
「オァ、止めなさい!」
マコトが、私のポケットからス⚪️ッカーズを取り出しパクついていた。
「アキトも、食べる?半分、あげる。」
「いいの、おねえちゃん?」
随分、大人になったもんだ。
しかし、すっかり皇子はマコトに飼い馴らされたもんだ。
「マコト、枢機軍はどうしたんだ?」
「うんとね、ドッカンしてビューンしてやった!」
さっぱり、わからん。
殿下が、説明してくれた。
「死なない程度に弱体化させて、王国領に飛ばしたみたいだ。」
「よく、わかりますね?」
「あぁ、演算で大体予想がつく。」
全く、どんだけ脳ミソでかいんだ!
「マコト、何か怒ってない?」
「激オコ!マレト、魔導武具に防御結界付与してなかったでしょ?おかげで、魔力すっからかんになったんだからぁ!」
「あっ、すまん。すっかり、忘れてた。まさか、外に連れて行くとは思わなかったよ。」
「もう!ちょっと、考えたらわかるでしょ。ホントに、あんたバカァ!」
殿下も、意外と抜けている。
マコト、結構賢いな。
何で、サムズアップしてる。
勝手に人の心を読むな、マコト~。
「アキト皇子、妹を助けてくれてありがとうございます。戻ったら又、帝都の防衛をお任せします。」
先の不祥事で、帝都防御隊の隊長から降格されていたのを復権させる事にした。
「こちらこそ、ありがとうございました。駄目かと思ったら、命を救われました。誠心誠意、義姉上にお仕えしますのでよろしくお願いいたします。」
いや、帝国にね...
「殿下、帰りましょう。」