7皇太子の心配。
あっという間に、戦場に着いた。
教国軍は、総崩れになっている。
爆炎にやられたのであろう、黒く煤けた敵がゴロゴロいた。
「総参謀長殿、戦況を報告します。敵軍は、魔導武具による先制攻撃にて半数が壊滅。残りは、潰走するか我が軍に刈り取られています。」
「魔導武具軍は、どうした?」
「マコちゃん...いえ、マコト様の転移でもう一つの戦場の後方に出撃しました。」
「よく分かった、敵は狂信者の集まりだ。最後まで、油断せぬ様にな。殿下、もう一つの戦場に向かわれますか?」
「いや、マコトが向かったであろう枢機軍のところに行こう。」
枢機軍の位置が判明し、そちらに向かう。
やはり、殿下はマコトが心配らしい。
爪を噛む悪い癖が、出ていた。
その頃マコトは、枯渇した魔力を振り絞って枢機軍の陣地まで飛行していた。
残った魔力では、転移どころかペガサスの召喚さえ出来ない。
向こうに、魔法陣が見える。
何千人もの神官が、詠唱を唱えている。
その中に、多数の重装騎兵が蠢いている。
術式は、転移のようだ。
前線、あるいは帝都に直接送り込むつもりなのか?
「させません!」
マコトは、魔剣を取り出し魔法陣に突き刺した。
魔法陣が、音も無く消え去る。
「何だ!何が、起きた!」
ひときわ豪奢な法衣を着た神官が、喚き立てる。
「大司祭様、あそこに子供がおります。」
「子供じゃないよ。ボクは帝国魔導軍司令官のマコト、ここから先は誰も通さないんだから!」
「魔導軍司令官だってぇ、こりゃ又随分カワイ子ちゃんじゃねぇか!おじちゃんと、いい事しようか?」
周りの騎兵が、幾重にも取り囲む。
後ろに控えた神官が、防御結界を詠唱する。
ジリジリと重装備の兵士が接近して来た。
刹那、マコトは敵の足元に滑り込み数多の兵士を切り刻む。
あまりの速さに、兵士達も慌てふためく。
「コイツ、魔術師じゃねぇのかよ?」
マコトは、運動能力の無さを類い稀なる反射神経で剣術を駆使していた。
剣聖の座を皇帝から譲られたが、オヤツ満杯袋を代わりにもらって辞退していた。
しかし多勢に無勢、盾で押し固められて拘束魔術をがんじがらめにかけられてしまった。
「全く、世話かけやがって。」
「グブッ、ゲボッ、ボキッ!」
兵士達に嬲り者にされる、マコト。
衣服も乱れ情欲をそそられた者が、「ガキのクセにいい身体してんじゃねぇか!よく見りゃ、かわいい顔してるぜ。お頭、俺たちに味見さしてくだせぇよ。」
「お頭って、呼ぶでない。わしは、大司祭ぞよ。この幼女、あのロリコン法皇に献上したらたんまり褒美が頂ける。酒も飲み放題、女も抱き放題我慢致せ。暴れぬ様に、もう少し痛めつけておけ。顔は、止しとけよ。」
こんな幼女が魔導軍の司令官とは信じられないが、本物なら次期法皇も夢ではない。
よしんばニセモノだとしてもこれだけの上玉、どんな褒美にありつけるやら...。
兵士達が痛めつける中、辺りの兵士がふっ飛ぶ。