65魔王降臨。
ここは、美世のマンションの一室。
郁恵が試験管に入った真の母乳を、マウスに与えていた。
母乳を与え続けたマウスは、体毛が僅かに輝き白から銀色に変色していた。
そして、喋った。
《お郁ちゃん、もっとちょうだいよ。》
「へっ、しゃべった~!美世ちゃん、イタズラが過ぎるわ。」
あっ、先マコの付き添い代わったばっかりだった。
《ねぇ、もうちょっとくれてもいいんじゃない。》
「やっぱり、しゃべった!ねぇ、私の言ってる事わかる?」
《うん、わかるよ。それって、お母さんの乳でしょ?それのおかげで、意思疎通出来るみたい。》
「あぁ、幻聴じゃなかったみたい。私は郁恵、知ってるわね。アナタは?」
《僕は、マイト。真の、息子さ。》
「あっ、千葉県民なの?」
《そこじゃないやろ!お母さんが、危ないよ。魂が、引っ張られている。早く、お父さんに知らせてあげて。》
「お母さんって、マコの事?お父さんって、希人君の事なの?」
《そうだよ。あっ、ご飯は置いて行ってね。》
郁恵は、慌てて上着を羽織ってマンションを飛び出した。
病院に到着すると、スマホが鳴った。
マコが、産気付いた。
術着に着替えて、病室に向かう。
マコが、大量の汗にまみれて苦しんでいる。
「お郁ちゃん、マコが!」
「美世ちゃん、至急希人君を呼んで!」
「郁恵先生、準備が出来ました。」
ナースが、呼びに来た。
堀谷院長が待つ、分娩室に向かう。
時間だけが、いたずらに通りすぎて行く。
女の子が、産まれた。
大きな、赤ちゃんだった。
マコ、頑張ったわね。
もう、すっかり日が暮れていた。
「防人君、お郁ちゃんありがとう。ねぇ、マコはどうしちゃったの?なんで、何も言わないの?どこに、行っちゃったの?ねぇ、ねぇ...。教えてよ!」
出産の喜びも束の間、奈落に落とされる。
「美世ちゃん、希人君は?」
美世は、希人を呼び出す為に色々連絡を取っていた。
法務省は、研修免除だから勤務先の病院にいるはずだと言う。
訳が分からず、夏世に聞いてみる。
すると、ビリー君から連絡が来た。
ビリー君が、のっけから謝罪してる。
希人君は、戦争終結の為ロシアに滞在しているらしい。
こんな時に、何やってるの?
あの子は、何なの?
マコを、愛してないの?
しかも、秋人君まで同行してるって!
ビリー君が、出来るだけ早く連絡を取るって言ってたけど...。
「イヤー!マコ、ママよ。わかる、こっち向いて。どこ、見てるのよ!」
マコは、虚空を黙って見つめていた。
呼吸、脈は正常だ。
身体に、異常は無い。
赤ちゃんも、元気だ。
ただ、額に大きなアザの様なものが浮かび上がっていた。
それは、小さな頃からマコの腰の辺りにあった大賢者の印。
何故、今頃。どうして、こんな場所に?
希人が、魔王に顕現していた。
この世の物とは思えぬ様相を呈して、ロケット軍の管制室を蹂躙する。
魔王が通った跡は、人間の屠殺場と化していた。
魔王が、コンソールに手を伸ばす。
国内外に向けて、何発もの弾道ミサイルが発射される。
全て組成変革で、核は無力化している。
矛先は、各国の主要な軍事基地だ。
敵も味方も、関係ない。
民間人に犠牲が出ようが、知ったこっちゃない。
みんな、滅べばいいのだ。
死ね、死ね...みんな、死にやがれ!




