33皇太子妃、退場。
「待たせてゴメンね、お姉ちゃん!」
「マコ...。」
「お姉ちゃん、なんで... !誰だ、貴様。何をした、お姉ちゃんに何をしたー ?」
後ろの馬車から、法衣を着たふくよかな老人が現れる。
カミロの背に、聖器【グングニル】が刺さっていた。
《イヤーーー !!!》
マコトが倒れ込むカミロを受け止めた瞬間、 十万はいたゴーレムごと周りの景色が消えた。
いつの間にか、【グングニル】も消えていた。
マコトは、抱き止めたカミロを治癒すべく傷口に手を当てた。
出血は止まったものの、傷は癒えない。意識の戻らないカミロに、泣いてすがる。
『無駄な足掻きは、するな。皇后は、死んでる。後は聖女、お前を我が伴侶にするだけよ。』
霞の中に、教国の元法皇ドーマルディⅡ世が浮かんだ。
マコトが、ドーマルディに手を向ける。
『無駄だ、我はこの次元にいない。』
「この人は、皇后じゃない。」
『なるほど、皇后の妹か。騙されたわい。』
「お姉ちゃんに、何したの?何で、ボクの治癒も再生魔術も効かないの?」
『さすが、十万以上のゴーレムを一瞬で無力にするだけはあるな。とんでもない、幼女よのう。前皇帝夫妻の血肉を喰らった、この聖器【グングニル】の呪詛は消えんよ。どんなに魔力が強大でも、歯が及ばん。聖女よ愛でてやるから、こちらに来るがよい。』
「キモい、このデブハゲ!ボクには、愛しいダンナも息子もいる。お前のものになんか、決してならない !」
『何を、しておる!無駄だと、言うたであろう。止めろ、お前は我のものぞ。勝手は、許さん!』
マコトの身体が白金に輝き、背に翼が生まれた。
更に、カミロに覆い被さる。
“マイトをお願いね、お姉ちゃん...。”
カミロの傷が癒えて、マコトの額に傷が浮かび上がった。
それは、エッダの紋章であった。あの、大精霊の...。
『自らの魂魄を捧げるとは...。つまらん、意味が無いでは無いか。もう、どうでもよいわ!これで、魔王を顕現させてやろう。』
ドーマルディは、百万以上はいるであろうゴーレムを出して消えた。
カミロが、重い瞼をゆっくり開ける。
頑丈な障壁に囲まれているおかげで、空気までしんとしていた。
「マコ、ちょっと重いわよ。」
半身を起こす、カミロ。もたれかかる、マコト。
「ちょっと、マコ...。マコ... ?」
異変に気づく、カミロ。周りは、見渡す限りゴーレムばかり。
そして、脱け殻になったマコト。
「マコ、起きて。ほら、起きて!お風呂、入るわよ。お腹、空いたでしょ?山盛チャーハン、食べましょ。なんで、何も言わないのよー?何で、こんなに冷たくなってるの...... ?ねぇ......。」
一気に、まくし立てるカミロ。
マコトを抱いたまま、深淵の底へと落ちて行く。




