30皇太子の洗礼。
オレは、今玉座に座っている。
向かって右側には宰相ビリドをはじめとする文官が、一方反対側に軍務尚書コルザ公爵を筆頭に武官が並び立つ。
目の前には幼児を引き連れ赤子を抱いた、皇太孫の乳母カミロがいた。
今日は、マイトの立太子の日だった。
皇帝マレトの左奥にはタカト-ミルスの上皇夫妻、右奥にはミルスの兄ナジロ国王タスリⅣ世更に教国法皇カラバイヤⅦ世が鎮座する。
洗礼の儀式の為、五人の巫女を引き連れたエッダ教の教皇モラドが現れる。
皇帝マレトは教皇に玉座を明け渡し、マイトと共に御前にひざまづく。
場にいる全ての者も皇帝に倣って、教皇にひざまづく。
「立太子の儀に先立って、洗礼を行う。巫女よ、聖水を此処に。」
巫女装束に身を包んだ五人の聖女が、二人の幼児に浸礼を施す。
「父と、子と、精霊の御名によって、洗礼を授ける。」
教皇モラドによって宣誓がなされ、儀式が終わる。続けて、立太子の儀だ。
「皇太孫マイトを、これに。」
元〔マジカル-フェアリー〕の五人が、いつの間にか巫女から魔法少女服に装いを替えて並ぶ。
黄色のジョヌはアニス国旗、緑のジアンはナジロ国旗、紫のモーヴはスカル国旗、青のクレールはエッダ教の聖座旗を掲げ、中央にはマイトを抱いた赤のルーラがいる。
「汝、精霊の名の元に於いて英霊エッダの慈悲と加護があらん事を...。」
教皇の元へと行かせたマイトが、ひざまづくカミロの前で止まった。
必然、抱いているビリドとカミロの長男マコレと相対す。
その時、マイトがマコレに近づき深い口づけをした。
驚くカミロが二人を引き離すと、イヤイヤしながらマコレが、無理やりマイトの前に立った。
マイトの目頭から、大粒の涙が溢れ出る。
それを見てマコレが、マイトを抱きしめる。
その刹那マコレの背に白亜の羽が出現し、体躯が虹色の光に包まれる。
皇帝マレトは既視感に苛まされて、震え出す。
宰相ビリドも、身体を支えきれず床に手を着く。
「聖母様 !」教皇猊下が、自身の孫にひれ伏す。
カミロが、気を失って倒れた。
上皇の指示で、魔法少女達によりカミロと二人の幼児が慎重に運び出される。
「立太子の儀は、後の機会にさせていただきたく、猊下、皆様方よろしいでしょうか?」
上皇が、皆に同意を求める。
皆も頷き、場は開かれる事になった。
帝国軍総司令官アキトに付き添われて、皇帝マレトが自室に戻った。
アキトは声もかけれず、部屋を後にした。
あの戦いの後、この国は変わった。
父が譲位して、兄が皇帝の座に就いた。
聖母エッダを主神に抱き、ナジロ王国アニス教国と連合を結ぶ。
モラド伯爵が教皇に着座し、各国を睥猊する事になる。
あれから二年、以外に長い月日だった。




