3皇太子の懸想。
「呼んだ!!」
殿下の背後に、元凶が出現した。
「呼んでないわ!いったい、どこから湧いた!」
アキト皇子が恐怖のあまり、白目を剥いて泡を吹き出していた。
最凶のトラウマらしい...。
「わっ、マコト!今日もカワュイねぇ。おやつ、食べるかい?」
「食べる!でも太ったら、ダーリンに嫌われちゃうかも?」
「大丈夫、大丈夫。どんなに太っても、オレはハニーが大好きだよ。」
「へぇ、マレトってデブが好きなんだ。じゃ、他の女がいいんだ!」
「ちがう違う、ゴメンねマコト。限定のマスカットオレ冷やしといたから、許してチョ。」
「う~ん、マレト大好き!」
二人のイチャイチャが、止まらない。
見てるだけで、吐きそうだ。
アキト皇子を引き摺って、そっと部屋を出た。
それは、オレの人生を変えた瞬間...。
「お兄ちゃん、この猿は何?」
辺りに、猿などいない。
サルって、オレの事?
「マコト!猿では、ありませんよ。こちらは、学友のマレト皇子です。皇子、失礼をお許しください。これは、我が妹マコトです。大分、世間知らずでして...。」
カワイイ、凄く可愛らしい。
艶々の銀髪クルッと長い睫毛潤んだ瞳プルっとしたピンクの唇、透明感のある透き通った肌。
完璧すぎて、言葉も出ない。
「ねぇお兄ちゃん、この猿言葉わかるの?」
「これは失敬マドモアゼル、お初にお目にかかります。わたしは、ビリド卿の学友でマレトと申します。どうか、今後お見知りおきを。」
決まった!
「お兄ちゃん、こいつキモい。帰ろう、帰ってストロベリーオレ飲む!」
キモい、キモいって言われた...。
紳士的に、優雅な対応をしたのにキモいって...。
「マコト、今日は何時にもましてご機嫌ナナメだな。」
あれ、ビリドが怒ってない。接し方、間違えたっぽい。
「マコトちゃん、限定のマスクメロンオレあるけど飲むかい?」
「いいのぉ?飲むノムッ、猿にしては気が利くじゃん!褒めて、遣わす!」
「ははぁ、ありがたき幸せ!」
「殿下...!」
オレが笑うと、ビリドも一緒に笑ってくれた。
マスクメロンオレを片手に少女は、不思議そうな顔だ。
「何が、おかしいの?」
「いや、マコトは素直でいい子だなって。ねぇ、皇子...。」
「マコトちゃん、オレと友達になってくれる?」
「う~ん、おやつくれる?」
「うん、いっぱいあげるよ!」
「じゃあ、なったげる。」
その日から、オレはこの世の春を謳歌している。
この女神のおかげで...
「ねぇマレト、何でボクと結婚したいの?」
上目遣いで問いかけてくる美少女にメロメロになりながら、「決まってるじゃないか、マコト以外誰を好きになると言うんだ。オレは、お前のためならなんだってする。一生掛けて、愛し尽くすよ。」
極ったと思ってマコトを見ると、口いっぱいクリームをつけてケーキにかぶりついていた。
「聞いてる、マコト?」
「このケーキ、おいしいね。どこで、買ってきたの?」
聞いてなかった...オレの青春を還せ。
「あぁ、それはアキトが持って来てくれたんだ。」
「へぇいい子だね、アキト君。」
そのいい子を完膚無きまでに叩きのめしたのは、誰だったか...治癒魔術を使ってもしばらく寝たきりだったのに。
まっ、自業自得だがな。
「ありがとうね、マレト。こんなボクを愛してくれて。絶対、幸せにするからね。」
そのまま、柔らかくてちょうどいい大きさの胸に顔を埋めされた。
オレの青春が、還って来た。
「なぁマコト、いいだろう?」
返事の代わりに、熱い接吻がかえってきた。
オレはマコトをお姫さま抱っこして、奥の寝室のベッドに横たえた。
ため息物だ、こんな可憐な華がオレだけのなんて!
「どうったの、らいじょうぶ?」
舌足らずなマコト、なんてカワイイんだろう。
神様、ありがとうございます!
「マコトに見惚れて、昇天するところだったよ。食べちゃいたい!」
「ボク、魔術使ってないよ。食べても、おいしくないよ。」
そのまま、二人で何度も熱い愛を交わした。
朝起きると、マコトの肌はツルツルに輝いていた。
又、オレから魔力が注がれたらしい。
鑑定眼に、とんでもない魔力量が映し出されていた。
多分、この世界が滅ぶぐらい...。