2皇太子の決意。
「ところで、軍の方はどうされるのですか?」
「オレが、出る!」
「イヤイヤ、殿下魔術使えないじゃないですか?」
「魔術は使えないが、魔導武具は使える。なんたって、開発者だからな。」
私は、ジト目で睨みながら「使えると動かせるは、同意語ではありませんよ。
殿下が出たところで、何の役にも立ちませんよ。足手まといです!」
「そこまで言わんとも、確かにじぃやの言う通りなのだが...。」
その時執務室のドアから衛兵が顔を出し、アキト皇子の来訪を告げた。
応接室に通す様に指示をして、移動する。
「兄上、お忙しいところ申し訳ありません。頼み事がありまして、伺いました。」
アキト皇子は悪企みに巻き込まれて、先日まで謹慎中の身であった。
あの花嫁候補の公爵令嬢の依頼で、マコトを亡き者にしようとしていたのだ。
マコトは、ただの嫌がらせだと言っていたのだが...。
だから、殿下が売女とか罵っていた訳だ。
「私が言えた義理では無いのですが、ルアン殿をお許しいただけないでしょうか?その分の罪は、私が重ねて処分を受けます故。兄上の言う事なら、何でもお訊きします。お願い致します!」
ルアンと言うのは、先の公爵令嬢の事だ。
お痛が過ぎて、宰相の公邸に軟禁されて処分待ちの状態だ。
「別にオレは、気にしてないぞ。マコトが無事なら、それでいい。」
ウソだ!あの時、関わった者は容赦しないと激昂しまくっていたのは誰だったか?
「アキト、何でも言う事を聞くと言ったな。ホントか?」
「私にできる事であれば、何なりと!」
アキト皇子は、土下座したまま顔を上げずに応えた。
「お前、ルアンに惚れてるのであろう?じゃ、オレの代わりに皇太子になれ。そして、あの娘と婚儀を致せ。」
私は、ポカーンと開いた口が塞がらなかった。
アキト皇子も起き上がって、同じ顔をしていた
「アッ兄上、何を仰っておられるのですか?気は、確かですか?」
「断るのかぁ?何でも言う事、訊くんじゃなかったのかぁ!」
「殿下、そんなに凄んだらダメですよ。アキト皇子が、違う世界に旅立ちそうですよ。アキト様、大丈夫ですか?戻って来てください!で、どういう事ですか殿下?」
殿下がアキト皇子を可哀想な者を視る目付きをしながら、「いや、オレが皇太子だから事を難しくしているんであって一市民なら何も問題無かろう。だから、アキトにこの国を継いでもらえば良かろう。」
「殿下、何を言っているのですか?現在この国の施政は、殿下が為されているのですよ。言葉は悪いですが、皇帝陛下は面倒な事が大嫌いですから。殿下が表舞台から身を退いたら、恐ろしい事になりますよ。まさか、この国より妹の方が大切だとか言わないですよね!」
「当たり前じゃないか、マコトの方が大切だ!」
私とアキト皇子は、立ち上がれない程のため息を吐き出した。
何で統治者の鑑と言われ稀代の天才科学者と呼ばれる方が、こんなにおバカで残念なのか。
原因は、あのロリっ娘であろう...