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公爵令嬢と悪魔と婚約破棄  作者: 唖鳴蝉
第二章 物語の綻び
8/18

幕  間 保護者の方へ~シーラ・デュモアによる観察と評定~

 ……といった次第で、所定の目標は――少しばかり予定と違った形で――クリアーできましたが、その一方で彼女の聖女疑惑を補強する結果となりました。当初の計画は()(たん)もしくは変質を余儀無くされましたが、それは(ひとえ)に彼女の行動が常軌を逸していたためであり、公平に見てヘクトーさんに責めを負わせるのは正しくないと考えます。(むし)ろ、突発事態に対する反応速度が申し分無かった事を褒めるべきでしょう。


 強いて挙げるなら、前回の問題点を回避しようとするあまりか、前回の方法と真逆の方向に進もうとする傾向が懸念されました。杞憂かもしれませんが、極端から極端へ振れようとする傾向があるように見受けられます。もう少し「中庸」というものを(わきま)えた方が良いとも思いますが、その一方で、〝不確実性と予測不能性の塊のような彼女に対処するためには、中途半端な変更では間に合わない〟――と考えた上での結果とも思えますので、この時点で軽々に判断を下す事は差し控えさせて戴きます。


 一言申し上げておくなら、彼女が採るであろう行動が正確には予測できないため、(わたくし)からのヘクトーさんへの指示が曖昧(あいまい)にならざるを得なかった事を、お詫びしておかなくてはなりません。また、何ができて何ができないかの区別が人と悪魔で違っている事を、(わたくし)の方が充分に認識できていなかったという事情もあります。なので意思の疎通というか相互の認識に、最初から齟齬(そご)があった点は無視できません。これはヘクトーさん一人の責任ではなく、(わたくし)不手(ふて)(ぎわ)でもあります。

 ですが、――言い訳になってしまいますが――それ以上に彼女の行動が(わたくし)たちの予想――常識とも申しますが――を、遙か斜めに上回っていた事が最大の原因であったと考えます。その意味では、依頼者である(わたくし)からの情報提供に不備があったとも申せます。書面ではございますが、お詫びする次第です。


 このレポートの本義であるヘクトーさんの問題に立ち返りますと、個々の技術は優秀と思えますし、もう少し経験を積む事で、状況に合った適切な対処というものを身に着ける事ができると考えます。前回のレポートでも触れておきましたが、こればかりは地道に経験を積んで身に着けるしか無いでしょう。その点を考慮せずに叱責する事は、当人の伸び代を潰す事にもなりかねませんので、長い目で見て差し上げて下さい……(以下略)



 追伸


 事態が(いささ)か想定外の方向に進んで……驀進(ばくしん)している事に(かんが)みて、一度上司様を交えてご相談いたしたいと考えております。ご都合の宜しい日を教えて戴ければ幸いです。

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