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公爵令嬢と悪魔と婚約破棄  作者: 唖鳴蝉
第三章 物語の変容
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6.サンドラ・デ・フォークス

(ま、(まず)いわ……どうしてこんな事に……)



 この一連の事件の中心人物――と言うか元凶――であるサンドラ・デ・フォークスは、学園の人目に付かない片隅で、目下のところ一心不乱に悩んでいる最中である。



(……レックス――レクサンド王子の愛称――に近付いて(おだ)て上げ、落とすとこまでは上手くいったのよ、うん。なのに……悪役令嬢の筈のシーラが、ちっとも筋書きどおりに動こうとしないし……)



 そのせいで、本来ならばシーラが行なう筈のアレコレを、サンドラが自分で行なう事になり……



(……嫌な予感はしたのよ。ヒロインが(いじ)めを自作自演するなんて……ラノベの悪役令嬢ものの定番展開じゃないのよ……)



 その定番の行動に走った挙げ句、定番どおりに自作自演に失敗し、ざまぁルート一直線かと(おのの)いていたところが……



(……何だか妙な流れになってきてるのよね。こんな展開、公式には無かった筈だし……)



 聖女というルートも一応検討はしたのだが、教会に所属する事のデメリットが正確に読めなかったため、最終的には候補から外したのだった。それなのに……



(選ばなかった筈のルートに進みつつあるのはどういう事よ……)



 こんなルートはサンドラの予測(・・)の中に入っていなかった。なのでこのまま流れに乗った場合、どういう展開になるのか見当が付かない。



(……ひょっとして、隠しルートか何かなの? いえ……そんな話は無かった筈だし……)



 わけの解らない話になってきているが、このまま流れに身を任せた場合、どういう展開になるのか予想が付かない。()りとて流れに(あらが)った場合、その結果がどうなるのかもやはり予想が付かない。ただ……何となくだが、流れに逆らうのは下策のような気がする。経験的に、この手の予感は無視しない方が良い。



(一体どこで選択を間違えたのよ? それとも……)



 それとも――密かに懸念していたように、ここは「悪役令嬢ざまぁ篇」の世界なのだろうか。

 だとしたら……定番どおりの展開を避けるという意味では、このまま聖女ルートに入ってしまった方が少しはマシなのかもしれない。


 なのに――



「……レックスが何か余計な事を企んでそうなんだけど……」



 心の奥に(わだかま)る不安が、思わず口を()いて出てしまう。


 詳しい事は教えてもらえなかったが、今のレクサンド王子(レックス)の動きは、「卒業パーティでの婚約破棄」イベントの兆候を見せ始めている。このまま進むとどうなるのか。


 ――と、そこまで考えが進んだタイミングで、サンドラの脳裏に突如「バッドエンド」という単語が浮かんできた。これでもかと不安を掻き立てる不吉ワードである。



「……冗談じゃないわよ。卒パでの婚約破棄って、数ある中でも最悪のパターンじゃない」



 サンドラの「予測」に拠れば、レックスが独断で卒業パーティでの婚約破棄に踏み切った場合、レックスは国王の怒りを買って廃籍、サンドラもその巻き添えを喰らう公算が大きい……と言うか、高確率でそうなる筈だ。


 仮にレックスがシーラとの婚約を破棄するにしても、それは穏便に内々に済ませるべきであって、公衆の面前で大々的に発表するなど、愚の骨頂でしかない。穏便に婚約を解消した上で、一~二年後に改めてサンドラとの婚約を結ぶ……それが最善のルートであった筈だ。今のままではバカ王子と一蓮托(いちれんたく)(しょう)になって、地獄へ真っ逆さまである。そんな未来は望んでいない。



「かと言って……聖女ルートの見通しが立たない以上、今の段階でレックスを切り捨てるのは悪手よね。……はぁ……物凄く面倒だけど、レックスが暴走しないように抑えるしか無いか……」

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