第3話 最強の義姉出撃!!
Saori!Progress plan...
クズ野郎の制裁が終わり、いよいよ仕上げの段階。
今日は妹と今後に向けての話をしていた。
「どうしたの?」
美愛の元気が無い。
少し瞳が潤んでいる、姉として心配だ。
「政兄ぃどうしてるかなって」
今頃政志君は史佳の流した下らない噂を消す為、関係者に真相を話している。
そこには亮二さんや弁護士も同席しているのだ。
そこまでやる必要がと思ったが、今回の噂は政志君の就職先にまで流すという悪質な物だった。
一度広まってしまった物を取り消すのは非常に大変。
改めて卑劣な奴等だったと実感した。
「大丈夫よ、友人達は殆ど政志君の味方だったし」
「分かってるけど、政兄ぃ...何も悪いことしてないのに...」
美愛は悲しそうに目を伏せた。
本当に政志君が好きなのね。
いじらしい美愛の姿に胸が熱くなる、絶対幸せになって貰わなくては。
「早く政志君に告白したいわね」
「...うん」
まだ美愛は政志君に告白していない。
断られるのが怖いからでは無い(それも多少あるが)
政志君の負った心の傷が癒えるまで美愛は待つつもりなのだ。
なにしろ美愛にとって政志君は初恋の相手、8年の片思い。
我が妹ながら、よくここまで拗らせた物だ感心する。
「焦りは禁物よ」
「分かってる...でも前はそれで失敗したし」
「そうだったね...」
政志君が三年前に女と付き合いだした時はビックリした。
ずっと政志君は彼女とかに興味が無いと思っていたのだ。
でも考えてみれば当たり前の事、政志君も普通の男の子なのだ。
政志君と同居していた私達に油断があったのは明らかだった。
久園史佳は何度か我が家にも来た。
第一印象は普通の女の人だったが、ときおり亮二さんに向ける視線が気になった。
高校時代から亮二さんに言い寄る女が後を絶たなかったので、些細な史佳の仕草には直ぐに気づいた。
思い返してみれば、その時釘を刺すべきだったのかもしれない。
しかし落ち込む美愛のケアと、忙しい仕事に忙殺してしまったのが悔やまれる。
「メス猿はあれからどうしてるの?」
「ああ史佳の事ね」
美愛には史佳のその後を言って無かった。
ずっと政志君にベッタリで言うのを躊躇っていたのだ。
「あれからね...」
私は報告書を取り出し説明を始める。
逮捕されたバカ男は全ての起訴内容を認めた。
おそらく十年は刑務所から出られない。
そして史佳は男の恋人として会社内で知られていた為、その立場を失い現在は休職中。
実家に引きこもり、そのまま退職になるだろうとの話だった。
「ざまあないわね」
「...うん」
哀れな史佳の報告書を読み終えるが、美愛の顔色は冴えなかった。
「姉さん...あの女にどんな制裁をするつもり?」
「そうね...」
政志君に対し行った嘘の噂を流し、一方的に別れた事への償い。
あれだけ政志君を束縛し、交遊関係を潰したのだ。
同じ事をしてやるか。
史佳の交遊関係を徹底的に潰し、完全に孤立させてやろう。
「再起不能まで追い込むつもり?」
「え?」
悲しそうに美愛は私を見た。
一体どうしたのか、あれほど史佳に対して怒っていたのに。
「なんとなく分かるんだ」
「なんの?」
「史佳の気持ち」
「気持ちが?」
そんな馬鹿な、どうして美愛に史佳の気持ちが分かるの?
「史佳にとっても政兄ぃは最初の恋人だった」
「うん」
確かにそう言っていたな。
史佳は中高と女子高で初めての彼氏だと。
「大学で政兄ぃに一目惚れ、そりゃ惚れるよね、あの可愛いらしさだもん」
「そう?...いやそうなるか」
確かに政志君は可愛い。
高校時代に初めて会った時、当時小学校だった政志君の愛らしさに言葉を失った。
亮二さんが弟を溺愛していたのを理解した。
「史佳が義兄さんをチラチラ見たのも分かるよ、だってタイプは違うけど素晴らしい男性だし」
「そんな事思ってたの?」
知らなかった...美愛が亮二さんに...
「姉さん、勘違いしないで。
私の理想は政兄ぃなんだよ、絶対に揺るがないから」
「そ...そうよね」
妹に嫉妬してどうするんだ、しっかりしろ!
「だから史佳は流されやすい人間なのよ。政兄ぃが手に入っても、義兄さんを目で追っちゃう。
誰でもそうでしょ、素敵な物を見たい欲望は誰でもあるし」
「う...」
なんで美愛はそんな目を...
まさか私の愛蔵コレクションの存在を?
「だからね、今頃史佳は病んでるよ。
『なにが悪かったの?間違ったなら...今度はきっと』って」
「...美愛、あなたは」
そんな事まで考えていたのね。
だとしたら、これ以上史佳を追い込むのは危険だ。
「遠ざけるしかないわ」
「美愛の言う通りね」
きっと史佳は政志君の前に現れる。
またやり直したいとか戯れ言を言うに違いない。
「絶対に史佳を政兄ぃに近づけてはダメ」
「まったくよ」
それは破滅しか無い。
史佳は憎いが、死んで欲しいとまで思っていない。
「反省か...」
やはり史佳本人に反省を促すしか無いが難しい事なのは間違いない。
「初めてをあんな糞に捧げたメス猿、私なら絶望で死んじゃうけどね」
「美愛?」
突然どうしたんだ?
「姉さんが言ったんでしょ?
結婚するまで我慢しなさいって」
「...うぇ」
そんな事なんで知ってるの?
確かに政志君と史佳に言ったわよ。
『結婚するまでは清い交際しなさい』って。
「自分達は高校で破っといてよく言うわね」
「美愛!!」
なんで知ってるの!まさか亮二さんが?
「カマを掛けた」
「...あのね」
こりゃダメだわ、すっかり踊らされてるよ。
「早く甥を抱かせてよ、姪も良いな」
「はいはい」
私達は30歳まで子供は我慢している。
それは私達の両親が結婚してすぐ子供を授かったからだ。
仕事が忙しい両親に寂しい幼少期を過ごした経験からだった。
「私達の子供が姉さん達の子供と同い年っていうのも良いけどね」
「こら!」
何て事を、貴女はまだ18歳でしょ!!
両親が聞いたら卒倒ものよ?
「冗談よ冗談」
「そう聞こえなかったわ」
フッと笑う美愛。
話の脱線を繰り返しながら、私達は史佳へ今後の対策を話し合うのだった。
『愛蔵コレクションを別の場所に隠しとかなくては...』