悪代官から女子力を盗み、貧しい民に分け与える義賊に願う
江戸の夜は寒い。
長屋住まいの民達は暴力的な年貢に怯え、明日の蓄えを削り、そして希望だけを胸に、その日その日を強く生きていました。
「あ、流れ星! お願いしなくちゃ!」
子どもが夜空の星に指を向け、願いを込めました…………。
江戸の民も寝静まる夜更けの頃、一人の女盗賊がとある屋敷の前へとやってきました。
「へへ、女子力の高そうな屋敷じゃねえか……!!」
人呼んで女鼠小僧。江戸の町を荒らす義賊であります。
女鼠小僧は女子力の高そうな花柄のポーチからピッキングツールを取り出すと、あっと言う間に屋敷の中へと忍び込んでしまいました。
「こっちから女子力の匂いがするぞ……」
女鼠小僧は屋敷の一室で、女子力の高そうなソーイングセットを見付けました。
中には山吹色の女子力がぎっしりです。
それを女子力の低そうな唐草模様の風呂敷に包むと、女鼠小僧は煙のように消えてしまいました。
──翌日、江戸の民が目を覚ますと、軒先に女鼠小僧からの贈り物が置いてありました。
「女子力の高そうな絆創膏だ!」
「こっちは最新秋冬モデルのカタログだ!」
「インスタ映えする一人鍋セットよ!」
人々は、女鼠小僧からの贈り物に歓喜しました。
こうして、江戸の民は飢えること無く、女子力を保ったまま平和に暮らすことが出来ました。
女鼠小僧は自らの女子力すらも民に分け与え、モテる事無く生涯独身でその生涯を終えたそうです。