90話 突撃、南野家お宅訪問②
「ごほっごほっ……! 凄い埃……!」
蔵の地下。大仰な扉を開け階段を降りると待っていたのは、それはそれは長い間放置されていそうな木箱の数々であった。
「上の方は定期的に掃除しておりましたが、こちらはもう何十年も"開かずの間"のままでしたから……」
「みたいだな」
スマホのライトで周囲を照らす、一階の部分と同様に古めかしいもので溢れかえっている。
「こんだけあれば、流石になんか重要な手がかりが眠ってるだろ〜」
灯は期待した様子で、近くにあった木箱に手をかける。
「うわっ、埃が積もって固まってベタベタしてやがる……」
バッと、その箱から離れる彼女。はぁ……これは中々手強そうだなぁ。
そうして、蔵の地下探索が始まった、探索といいつつもほ殆ど大掃除みたいな感じだ。
「こっちは……」
木箱を開ける。中には古めかしい書物が押し込まれている。その一つを取り中をペラペラとめくってみる。
「うーん、読めない」
なんだか、みみずみたいな字が書かれている。なんとなく予想はしていたけど古い時代に書かれた文字って読みづらいってレベルじゃない。
「古文苦手だし……」
まあ、どうやら柚子はそういうの得意みたいだから確認は彼女に任せよう。
数が多いからどれだけかかるかはわからないけど……
それにしても、こういうのが読めるとは。さすがは柚子。大和撫子なだけある。
『それ関係あります?』
「あるでしょ……多分」
そうして、探索を進めるとある一つの小さな箱が目に入った。
「なんだろ、これ──」
厳重そうに封印されている。肌のようなものも貼られているけど……開けて大丈夫これ?
「どうしたあげは〜?」
灯が私の方にやってくる。私が彼女にその箱を見せた。
「…………あれ、こういうのどっかで見たような」
彼女は、その箱を見てうーんと唸る。必死に何かを思い出そうとしている感じだ。
『あげは、これ……もしかすると──』
「なにか心当たりあるの?」
揚羽も、なにやら意味深な感じの事を言い始める。
蔵の中にあるモノは好きに調べていいと柚子からはお墨付きを貰っている。
「……よし、開けてみるか」
こんないかにも何かありそうなモノ。開けないわけにはいかないでしょ!
ペリッと、蓋を閉じていた札を剥がして慎重に開ける。
「────え、これ……」
中には、とあるモノが大事そうにしまわれていた。私は灯に視線を向ける。
「これって……」
彼女も"それ"を見て驚いていた。そうして灯はゴソゴソと自分のポケットを探り。それを取り出す。
「同じだね」
「同じだな」
彼女の手にあるモノ。それは紅々しい勾玉。彼女が退魔巫女に返信する時に使用しているやつだ。
箱の中にあった勾玉、形は灯が持っているやつと全く同じだ。
まあ勾玉っていえば大体形は同じなんだろうけど。それでも漂う雰囲気などは同じモノを感じる。
箱の中の勾玉を眺める。色は黒かった。なんの混じり気もない黒。見ていて吸い込まれそうだ。
「きれい……」
長年放置された雰囲気などまるで感じない。全く朽ちた様子も見られなかった。
「やっぱ私らが使ってるやつと同じだよなぁ」
今更だけど、私以外の退魔巫女はみんなこういう勾玉を持っている。灯も、霧も雫も。
見たことは無いけど多分柚子も舞花さんも持っているのだろう。
むしろ、勾玉なんか使わずMG-COMというスマートウォッチ型の機械を使う私が一番イレギュラーだったりする。
「さ、触っても大丈夫だよね」
好奇心を抑えきれずに、その真っ白な勾玉に触れようとする。そっと右手の人差し指でそれに触れてみた。
「──え?」
その瞬間、真っ白な勾玉から何かが流れ込んでくるような……強い力の収束を感じた。
そうして、白い勾玉が輝き始める。私は慌てて指を離す。
「ちょ、灯! なんか変な事になってる!!」
「お、お、お、落ち着けあげは!」
灯もたいそう慌てた様子だ。一体どうなってるのこれ!
「どうかしましたか!?」
一階、明るい場所で書物の確認をしていた柚子。異変に気がついたのか彼女も地下に降りてきた。
「勾玉が! 光ってる!」
と、慌てたのがダメだった。柚子の方にそれを持って行こうとしたらツルッと木箱が滑り、勾玉が下に落ちてしまう!
「……あっぶな!」
すんでの所で、落ちた勾玉をキャッチ。だが勾玉をおもいっきり握り込む形になり──
「ま、また変な感じが!」
再び力が流れ込んでくる感覚。手のひらの勾玉を見てみると……
「え? なんかちょっと模様が……」
先程までは真っ黒だったのに、どんどん妙な模様が浮き出てきていた。
「その勾玉はもしかして──」
柚子は何かに気がついたような様子だ。
「……え、ちょ、あげは!? お前なんか透けてない?」
透けてる? 灯ったら一体何を──
「ちょ、ホントに透けてるー!?」
何故だか身体がぼんやりと薄くなっている。え? もしかして私消えちゃうパターン?
そうして、勾玉がより強い光を発する。私は思わず目を瞑ってしまった。
「……え?」
再び目を開けると、そこに広がっていたのは──
「いやいや、どこ?」
何故だか、全く知らない場所……街中に突っ立っていた。一体何がどうなってるの……!?




