表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/92

9話 コスプレと名前と霧

「……すみません、もっと普通の服ないんですか?」


「え〜、可愛いわよそれ!」


 服を失い全裸になってしまうというアクシデント、そんな私の為に沖宮さんが服を用意してくれたんだけど……


「うぅ……なんの羞恥プレイだよこれ……」


 私に用意された服はあるアニメキャラのコスプレ衣装だった。日曜日の朝にやっている美少女が戦うアニメのキャラの衣装らしい。


「お、男にこんなの着せて楽しいですか?」


「いやいや、今は完全に女の子なんだから大丈夫大丈夫!!」


 そういう問題じゃないでしょ……


「サイズはどう?」


「ん〜……胸のあたりが少しきついです、苦しい……」

 

 服自体のサイズは合っていたけど、なんか胸が窮屈。


「あ〜、それ雫ちゃん用に作ったのだからかなぁ。作ったのに全然着てくれなくて困ってたのよ!」


 ……今この場に雫がいなくて良かった。


 ちなみに雫は私の痴態を目撃した後、学校に行くとか言って事務所を出ていった、もうお昼過ぎだぞ?


「はぁ……なんでこんな事に」


 因みに下着は何もつけていない。だからすごく……変な感じがする。


「あ、そうだ。アナタ名前はどうするの?」


 唐突に沖宮さんがそう言った。


「え、名前ですか?」


 そういえば、私は自分の名前を思い出せない。


「思い出せないなら、割り切って新しい名前を考えてみれば?」


 新しい名前……たしかに、名前がないとこの先大変だろう。


「んー、でもいきなりそう言われても……」


 もしかしたらこの先ずっとお世話になるかもしれない名前だ、どうしたものか……


「……あ」


 そこで、私はスティーブンが言っていたある言葉を思い出す。あいつ私が変身した時"アゲハ"とか呟いてたような気がする……


 あれ、どういう意味なんだろう。私に発現した力の名前……という事なのかな?


 それに、アゲハって揚羽蝶の事か? まぁ、なんか私の衣装って蝶の飾りや模様が多かったしそうなんだろうけど……


「じゃあ"あげは"で」


 こういうのって直感が大事だろう。それに何となく魔法少女の時の格好に合わせた方がカッコいい様な気がする。


「いいじゃない、かわいい名前ね!」


 沖宮さんはテンション高めな様子で私の名前を褒める。


 そうして、名前が決まった。


「これからよろしくお願いします、沖宮さん」


 私は改めて沖宮さんに頭を下げる。


「真鶴でいいわよ、こちらこそ仲間が増えて嬉しいわ。あ、仲間といえば……」



〜〜〜〜〜〜〜



「えっと……あげはです、よろしく」


「ん……」


 私は今、探偵事務所がある雑居ビルの三階に来ていた。真鶴さん曰く、上の階にもう一人退魔巫女がいるとの事。


 三階の部屋は探偵事務所に負けず劣らず散らかっていた。しかも何だか部屋の中は薄暗い。


 そんな薄暗い部屋の中、二階にあったものよりさらに多めな数のモニターが怪しく光っている。


 ……なんだか、いかにも引きこもりのハッカーの部屋、みたいな印象だ。


 そしてそんな部屋の中に、触り心地の良さそうな椅子に腰掛けてスナック菓子を食べながらボケーっとしている女の子がいた。


 彼女は椅子を回してこちらに振り向く。蒼みがかったショートの髪はボサボサだ。目の下には隈ができている。


 ……なんか、雫に似ているような。


 不健康そうな感じはあまり似てないけど。なんとなく雰囲気がそう感じた。


「話はずっと聞いてた、北條霧(ほうじょうきり)……よろしく」


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 そうして、沈黙が訪れる。うぅ、なんだか気まずい。


「って、北條? もしかして……」


 雫と同じ苗字だが、もしかして姉妹なのだろうか?


「雫は私の妹……」


 なるほど、やっぱりそういう事か。どこか顔立ちが似ていると思ったけど。


「……」


「……」


 そうして、また沈黙が訪れる。霧は椅子を回して私に背を向ける。


「あ、じゃあ私はこれで……」


 沈黙に耐えきれなかったので部屋を出た。パタンとドアを閉める。


「……あの娘、本当に退魔巫女?」


 いかにも不健康そうで。妹の雫みたいにぴょんぴょん優雅に跳ね回って戦っているイメージが全く湧かなかった。


「まあいいか」


 考えても仕方ない。どんな戦い方をするのかはまあそのうちわかるでしょ。


 そうして、私は二階の探偵事務所に戻る。


「はい、こちら沖宮探偵事務所です〜」


 真鶴さんは電話を取っていた。


「え? 猫の捜索? はい、大丈夫ですよ……特徴をお伺いしても……」


 ……一応、普通の探偵事務所みたいな事してるのか。


「こうやって、普通の仕事もしてなきゃ。変に怪しまれても嫌だから」


 電話を切り、子機を適当にポンと放り投げた真鶴さんがそう言った。


「ところで、ちゃんと霧ちゃんに挨拶してきた?」


「はい、なかなか変わった人でしたけど」


 雫とは似ているようで似てないような。雫はクール系で霧はダウナー系という感じがする。


「そうね〜……変わってるけど、でも優しくていい娘なのよ?」


 我が子を自慢するかのようなテンションの真鶴さん。



 雫に霧、そして真鶴さん……なんだかクセが強い人が多いなぁ。私ここでちゃんとやっていけるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ