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80話 技の代償

「……あれ」


 身体から急速に力が抜けてくる。


『魔力使用量が許容限界値をオーバーしました、変身を解除します』


 MG-COMから流れる機械音声、許容限界値って一体どういう……


「……っう」


 襲う立ちくらみ、ダメだ立っていられない────


「おっと、おい大丈夫か?」


 危うく転びそうになるが、灯が支えてくれた。


 そうして、変身は解かれ私は元の私服姿にもどる。


「……うん、なんか知らんけどめっちゃ疲れた」


「そりゃ、私の力をフルに使ったからね!」


 いつのまにか側にいたアリス。フルに使ったって……


「確認だけど、あれはアリスが力を貸してくれたたったことでいいの?」


 念のため、目の前にある彼女にそう聞いてみる。


「えっへん! そうよ!」


 何故か誇らしげな様子の彼女。


 ──いやはや、まさかアリスの力を手に入れるとは思わなかったなぁ。


「はぁ、はぁ……」


 そんな会話をしている間にもどんどんと身体中の力が抜けて、ついには自分で体をほとんど動かせない状態にまでなってしまった。


「これは、あの呪文のリスクみたいなもの?」


 即死魔術、かなり強力みたいだが使った後にこんな状態になってしまうんじゃ……かなり使い所を見極めなきゃいけなさそうだ。


「そうよ、私の十八番。ただ雑魚にしか効かないから注意してね」


 なるほど、ゲームでもこの手の即死技って格下にしか効かないってのはよくあるよね。


『雑魚掃討にはもってこいかな、でもあげはが行動不能になるんじゃ……』


「たしかに、使えるのか使えんのかよくわからんなぁ」


「はぁ!? どういうことよバカ二人!!」


 アリスは霧と灯の言葉にギャーギャーと噛み付く。やれやれまったく相変わらずやかましい娘だ……


 と、そこに雫と桜子ちゃんがやってくる。


「さっきのは──。ってどうしたのよあげは!?」


「あー、さっきの呪文の反動みたい」


 私はそう簡単に説明をする。


「あげは先輩、あれは……魔術ですよね? なんであんなモノを使えるんですか?」


 そう聞いてくる桜子ちゃん。そういう疑問を持つのも当然の事だろう。


「……ごめん、桜子ちゃん今まで隠してて」


「隠してて?」


 私はMG-COMを通じて影霊の力を借りることが出来ると彼女に説明した。


「やっぱり、私の似た匂いがすると思ってましたけど案の定でしたか、それにしても、影霊の力を借りて直接変身できるですか……」


 何か考え込むような素振りをみせる桜子ちゃん。


「……あー、ややこしい話は後! とにかく今は朧をとっとと出るぞ!」


 灯が話を遮るようにそう言い放つ。


「あげは、動ける?」


「ごめん無理っぽい」


 即死魔術「みんな死んじゃえ!」の反動は強烈なようだ。力を全て持っていかれたような感覚がする。


『あんな強力そうな技で、代償がそれだけなんてむしろ軽い軽い』


 と、霧がお気楽そうに言ってみせる。まあ確かに技を使った代わりに命を……みたいなのじゃないだけマシか。


「しゃーねーな。ほら」


 灯が私の事をひょいと持ち上げ、軽々と"お姫様抱っこ"してみせる。


「ちょ、灯さん?」


 なんで私は女の子にお姫様抱っこされてるんだ……!?


「動けないんだから仕方ないだろ」


 そりゃそうだけど……うぅ、なんかすごく恥ずかしい。


 そうして私たちは朧を出る、適当ベンチに降ろされる私。そうして灯や雫は変身を解く。


 しばらくすると朧から抜けていく感覚が、そうして青空が戻ってくる。


「どれくらい動けない?」


 私は他の人に見られないように、再びバッグの中に入ったアリスに聞いてみる。


「二、三十分くらい? 私もよくわからないわ!」


 なんだかアバウトだなぁ……


「ま、しばらくここでゆっくりしてようぜ」


 私の隣に座る灯。


「そうね、あ、じゃあこれから何処に食べにいくか話し合いましょう」


「あ! なら私行きたい場所が──」


 その後。私たちはオシャレなレストランでかなり遅めな昼食をとり、そうして再びお台場観光を再開するのであった。

 



〜〜〜〜〜〜〜〜



 途中、天空橋明乃や影霊に遭遇してしまったが。まあそれを除けば楽しかった一日が終わった。


「……」


 みんなが寝静まった時間、私はコッソリと洗面所に"その"紙袋を持ってやってくる。


 ゴソゴソと中からそれを取り出す。そうして裸になってそれを身に付けてみる。


「お、おぉ……」


 鏡に映る私、いやはやこうして見ると──。我ながらかなりエッチな雰囲気……


 ブラもショーツも、黒を基調として様々な色っぽい装飾が施されている。まさしく"勝負下着"という感じがする。


「はぁ、ってか結局押されて買っちゃったけど。こんなのどのタイミングで着ればいいのさ」


 チラリと紙袋のなかのもう一つの下着一式を見る。こちらは明るくてスポーティー。普段でもまあ使えそうだ。


 結局、灯や雫に押されて二人が持ってきた下着を買ってしまった。


「めちゃくちゃ痛い出費……」


 紫電さんのお店で稼いでるバイト代は貯めてる(弾薬やカスタムパーツ類のお金は引かれるけど)。


 真鶴さんにも退魔巫女をこなす給料と称したお小遣いを多少貰ってるから実はお金にはそこそこ余裕あるんだけど……


「はぁ、まさか自分で金だしてこんなの買うとはなぁ」


 ……勝負下着なんて持っててどうするのさ、勝負する機会なんて多分一生ないと思うし──。っていやいや何考えてんだ私!


「勝負、かぁ……」


 今まであまり考えてこなかったけど。私って男と女どっちを好きになるんだろうか。


「うーん」


 ちょっと複雑な問題だ。


「……今は考えるのやめとこ」


 そうして私はさっさと着替えて、コソコソと洗面所を出ていくのであった。

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