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8話 これからどうするの?

「2018年発売の高性能モデル……価格は……ご、五千七百万……!? 冗談だろ……?」


 沖宮さんの愛車を調べてみて驚愕。家一軒買えちまうぞこれ……



 私達はあの後、探偵事務所に戻った。沖宮さんは私の腕に巻きついているスマートウォッチに興味津々の様子で、私の腕からそれを取り外してどこかに行ってしまった。


 雫は「眠い」とかなんとか言って、奥の部屋にさっさと入って行ってしまった。


 暇なのでスマホで沖宮さんの愛車を調べたり、「天空橋」という言葉について調べたりもしてみた。


 ちなみに回線はここの事務所のWi-Fiを借りてる、もちろん沖宮さんに許可は取ってある。


「天空橋、駅の名前……じゃないよな、天空橋重工……ん〜、ロゴが違う」


 調べてみても中々見つからない、私は諦めてスマホを机に置いた。


「はぁ……」


 なんか色々ありすぎて疲れてきた。目がぼやけてるのか、心なしか机の上に置かれているスマホが透けて見える……


 ……今更だけど、雫は学校サボってるのかな。今はバリバリ授業の時間だと思うけど。ちなみに一応制服は着ていた。


「まあ、私が言えた義理じゃないかぁ」


 自分も学校サボってるし、いや……どうなんだろう。私の存在は無かったことになっているなら。もう元の学校にも籍はないのか……


 そうして、私は自分の学校を懐かしむ様に自分の通学カバンを持ち上げた……あれ?なんか重さに違和感……


 カバンの中を確かめてみる。中から出てきたのは……先程沖宮さんに渡されたグロック18Cだけだった。


「あれ? ノート……生徒手帳は? 財布もねぇ……」


 ……ん?


「お、おいおいおい、なんで?」


 机の上に置かれていたスマホが本当に薄ら透明になっていた。見間違いとか、目が霞んでるせいとかではなくマジで透けてキラキラとした粒子を放っていた。


 そうして消えた、綺麗さっぱり。


「……何がどうなって」


 そこで私は沖宮さんの言葉を思い出す。存在、生きてきた軌跡が消える。それならむしろあのスマホが残ってるのもおかしい、鞄の中のノートや財布もだ。


 なら、こうやって消えていくのは必然……ほら、やっぱり。


 膝の上に置いていた鞄が薄れる。そうして煌びやかな粒子を残し消えて行った。


「はぁ、悪趣味だなこれ……」


 なんというか消えるなら一気に消えてほしい。ある意味残酷……自分の軌跡が消えていく感覚をじわじわと押しつけられている様な気がする。


「お待たせ〜!」


 と、そこに沖宮さんが戻ってきた。


「あれ? どうしたの暗い顔して」


「時間の修正力とやらの悪趣味っぷりを噛み締めてました」


 ホント、真綿で首を絞めるみたいなやり方するな……


「?……まあそれよりこれの解析が済んだわ!」


 何故か嬉しそうな様子の彼女。


「はぁ、それで何がわかったんですか?」


「よくわからないという事がわかったわ!」


 ……それは胸を張っていうことなのだろうか。


「中のシステムにブラックボックスが多すぎるわ、構造も複雑だし。詳細に解析するのはかなり時間がかかりそうね」


 そうして興味津々な様子でスマートウォッチを眺める沖宮さん。


「理論は聞いたことあるけど、これで本当に魔装憑依できるなんてね……八年後にはこんなものが実現してるのね……」


 八年後、私行ってきたんだよねその時代に……


 そうして私はスティーブンの言葉を思い出す。



「この世界は七年前、影霊の大量発生でこんなことになってしまいました」


「アナタの時代から見て大体一年ちょっと後くらいですね」



 チラリと窓から空を見る。今日の天気は気持ちの良いくらい青々とした快晴であった。


「……ッ」


 脳裏にあの真っ赤な空が過ぎる。あと一年……そうしたらあんな風に血の様なエグい赤色に染まってしまうのだろうか。


「どうかした?」


 私の顔を覗き込む沖宮さん。


「……あの、雫さんは影霊と戦う魔法少女なんですよね?」


「魔法少女? ……まあそういう表現の仕方もあるわね、正確には退魔巫女よ」


 そうして彼女は退魔巫女の事について話してくれた。


 影霊というのは古くから存在するらしい。それらを打ち払って来たのが退魔巫女。


「私は元はある研究所にいたの。そこが壊滅して今は雫ちゃんともう一人の娘のサポートをしてるのよ」


 そうして、ちらりと天井に視線を向ける彼女、もう一人……もしかしてこの上、三階に誰かいるのだろうか?


 とにかく、この探偵事務所の裏の顔はわかった。それなら……


「あの! 私をここに置いてください!!」


 私は頭を下げる、存在が消えた私にどうせ他に行く場所はない。


「私も戦います!! 退魔巫女(まほうしょうじょ)として!!」


 それは単なる安っぽい正義感なのか、それとも居場所が消えた事に自棄になってるだけなのか、自分ではわからなかった。


 ……もしかしたら両方かも。


「え? いいの? アナタがいいなら私は大歓迎だけど」


 考える様子もなくあっさりとオッケーする沖宮さん。


「よ、よろしくお願いします!」


 そうして、この世界から"いなくなった"私は、またこの世界で新たな居場所を手に入れた。





 ……そういえば、何か大切なことを忘れている様な気がする。


「……あ!!??」


 そうだ。私に関するものは消えていく。それならば……


「あれ? アナタの服なにかキラキラしてない?」


 沖宮さんは不思議そうにこちらを見る。


「えっと……すみません何か着るもの!!」


 だが、残酷にも時の修正力とやらは待ってくれなかった。


「〜〜〜ッッッ! うぅ〜〜!」


 と、そこになんともタイミング悪く雫がドアを開けこちらの部屋にやって来た。


「……痴女?」


 どうしてこうなった……

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