76話 一角獣とランジェリーショップ
「〜〜〜ッッッ! 最高ですね! 東京にはこんなに楽しい場所があるんですか!?」
と、いくつかのアトラクションを楽しみ。アミューズメントパークをご満喫な様子の桜子ちゃん。随分と楽しんでくれているようでよかった。
「帰りたい、こういう煩いとこは苦手だって……」
対してなんだか疲れたような雰囲気をバリバリ出してくる雫。
「はぁ、情けねえなぁ」
「ま、まぁまぁ。人には向き不向きってものがあるから……」
雫には何処かで待ってもらった方が良かったかも……
「じゃ、そろそろ出るか。次は何処行く?」
「あ、じゃああそこに行きたいです! お台場には実物大のユニ……ごほんごほん、アニメに出てくるロボットがあるって聞きました!」
と、桜子ちゃんの口から出てきたのは意外な場所だった。
「へー、桜子ちゃんってそういうの好きなの?」
私もあのシリーズは大体見てるし、結構親近感が湧く。
「べ、べ、べつに好きって訳じゃないですよ!? 最近真鶴さんに無理やり見せられたので、気になってるだけです!」
……そんな慌てて隠すような事ないのに。
そういえば、探偵事務所には色々なアニメのBDが置いてあったっけ。その中にそのシリーズもあったような気がする。
ってか、あれってやっぱりあの人の私物だったのか……
「あー、あったなそんなの」
「興味ないわね」
と、灯と雫はリアクションが薄い感じだ。やはり女子はこういうのあんま興味ないのかな?
「どうする? 二人は別の場所行く?」
興味ない人を無理やり連れていくのもあれかと思い、私は二人にそう聞いてみる。
「ええ、そうさせて──」
「だからー……! お前は空気読めって言ってんだろ……!!」
先程同様、雫にヘッドロックをかけようとする灯。だが雫はそれをするり華麗に躱し、逆に灯に回し蹴りを食らわせる。
「おっと、同じ手は食らわないわよバカ灯!」
「……って、やりやがったな! てめ〜!!」
「あんたら小学生か……」
なんだか微笑ましい様な、呆れる様な光景。ってかなんだかんだ言って、この二人って仲がいいのかなぁ。
「ま、二人は放っておいて。私たちは行こうか」
「え、はい……」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「ほぇ、おっきい……」
大地に立つ白い機体を見上げて感嘆の声をあげる桜子ちゃん。
「凄いです……凄いですね! 実物大ってこんなにおっきいんですね!!」
まるで子供の様にはしゃぐ彼女。いやはや、なんだか微笑ましい光景だ。
「なー雫。夜になったら光るらしいぞコイツ、ほらこの画像みたいに」
「光る? なんだかこれ霧姉のパソコンみたいね。やたら光ってて」
「……それ絶対言うと思った」
と、後ろでなんだかんだ気の抜けるような会話をしている灯と雫。
そうして、私と桜子ちゃんは実物大のその機体をたっぷり眺めて堪能した。その後はすぐ側にあるショッピングモールでお買い物を楽しむ事に。
ショッピングモールにはいる、すると灯が……
「なー、あげは? ちょーっと連れて行きたい場所があるんだけどさぁ」
なにやら、やたら気持ち悪い猫撫で声を出す灯。いやいや絶対何か良からぬ事を企んでいるテンションだこれ!
「な、なんか凄く嫌な予感がするので遠慮しておきます。ほら桜子ちゃん。私たちはあっちのベースに──」
このままだと良からぬ事を始められてしまう!
私はさっさと逃げ出そうとするが、ガシッと灯と雫の二人に両腕を掴まれる。
「よし! 連行するぞ雫!」
「サーイエッサー!」
二人ともなんでこんな時は息ぴったりなんですか……
「ちょ、待ってくださいよ先輩方ー!」
「ほら、桜子も早くついて来い」
そうして、私はショッピングモール内にあるとあるお店の前へと連れて行かれる。
「あのー、ここは?」
「見てわからんの? ランジェリーショップ」
いや、それは見ればわかる。私が聞きたいのは……
「な、なんでこんな場所に?」
「あげは、アナタって超絶地味な下着しか持ってないでしょ」
と、雫が呟く。
いや、まあ……女の子になってから下着も自分で買ったんだけど、やっぱりどうしても女の子女の子してる感じの奴を避けてしまう。
流石にそれは僅かながら残っている男としてのプライドが……
私が持っているのはどれも機能性重視、デザインはかなり、めちゃくちゃ地味目なやつばかりだ。
「あげはももう"女の子"なんだからさぁ、こういう勝負用のヤツとかも持っておかないと」
「灯さん? 私勝負するつもりなんてないですよ!?」
そもそもかなんの勝負!
「ほら観念しなさいあげは!」
ってかやたらノリノリだな二人とも! これ私を着せ替え人形にして遊びたいだけでしょ!?
「ちょ、桜子ちゃん助けてー!」
「……あー、私にはまだ早そうな世界なので。私はベースの方でプラモ見てきますね」
桜子ちゃーん! 見捨てないで!!
無情にも、桜子ちゃんはとっととこの場を去って行ってしまった。
「ほら諦めが悪いぞ、あんな可愛い下着を着れるなんて女子の特権だぞ?」
と、灯。私は可愛らしくもセクシーな下着を身に付ける場面を想像してしまった。
「……」
やばい、ちょっと……満更でもないかもしれない。
力の抜けた私は、あっけなくランジェリーショップに連れ込まれてしまうのであった。




