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68話 因縁

「……侵入者だ!」「追え!」


 後ろから声が聞こえてきた。流石にそろそろバレそうだな思ったけど案の定だったようだ。私は足を止める。


「仕方ない……」


 ここはあの力を使うべきだろう。私は深く息を吸って気持ちを整える。


「──力を貸して! アラハバキ!」


 左手を上に掲げてそう叫んだ。音声認識が行われてMG-COMの影霊憑依システムが起動する。


 柔らかな光に包まれる私の身体。そうしてコンマ数秒も掛からずに変身は終わる。


「居たぞ! 始末しろ!」


 後ろから聞こえる男の声。そうして……数発の発砲音。


「──なっ!」「なんだあれは……!」


 男たちの驚愕の声。私はハンドバッグからVz61を取り出して振り返る。


 空中に静止した弾丸。変身と同時に展開した物理防御バリアは間に合ったようだ。


 私を追っかけてきた三人の黒服は、何が起こったのか分からないという感じの表情をしている。


「ちょーっと眠っててくださいね」


 スッと、綺麗に湾曲したガラスのような障壁が消える。床に落ちる弾丸。私は間を入れずに手に持った"サソリ"を乱射した。


 バタリバタリと倒れる三人の黒服。上方に排莢された催眠弾の薬莢がパラパラと降り注ぐ。


「……早く行かなきゃ」


 暗い通路を駆ける。途中、怪しげなプレートが掲げられた部屋を見つけたが今は二人の元に行くのが先だろう。


 そうして暫く行くと広めな地下空間に飛び出た。


「灯! 真鶴さん!」


 二人の姿を発見する。飛び出た場所は地下、大きなホールのような場所。


「……あれは」


 灯、真鶴さんの二人と対峙するように少し離れた場所に一人の白衣を着た女性が立っていた。


「こんにちは、お嬢さん」


 低めな、落ち着いた雰囲気の女性の声。


「……え?」


 私はその人を見て私は驚愕した。だってこの人──


「スティーブン?」


 そう、未来で私にMG-COMを押し付けた張本人がそこにいた。


 いや、正確には少し違うかもしれない。確かにここにいる人スティーブンそっくりなんだけど……でも私が未来であった彼女は私と同い年くらいの少女だったような気がする。


「ん? 誰かなそれは……人違いじゃない?」


 あっさりとそこにいる本人の口から否定されてしまった。一体何がどうなっているのだろう。


「やっぱり、ここはアナタの根城だったわけね」


 真鶴さんが銃を突き付けながら、その女性にそう言い放つ。


「面白い事言うね真鶴、ここはただの拠点の一つだよ」


 女性は笑いながらそう返答した。なんだが余裕たっぷりな雰囲気だ。


「真鶴さん、あの人は──」


「……天空橋明乃、まあ私の元同僚よ」


 ……! ついさっき見つけたあのファイルに書かれていた名前と同じだ、ここでその名前が出て来るとは。


「ま、真鶴とはライバルみたいな関係でね」


「私はアナタなんかライバルと一度も思った事ないけど?」


 二人の間に険悪でピリピリとした空気が流れる。


「手厳しいなぁ。それにしても真鶴、あそこが解散してからも相変わらず公務員を続けているみたいだね」


 公務員? 一体何の話だろうか。


「真鶴さんってただの私立探偵じゃ……」


 と、言いかけたけど。よくよく考えたらただの私立探偵にしては色々とおかしな点も多い。ホントこの人って──


「あげはちゃん、ごめんね後で話すから」


「は、はい……」


 とりあえず今は"天空橋明乃"の事を優先しておくべきだろう。


 私はチラリと背後を見る。追っ手があの三人だけな筈は無いと思うのに……誰も来ない。


「あぁ安心して、今は余計な手出しをしないように指示してるから」


 今は、ねぇ……ってかさっきおもいっきり撃たれたんですけど。そういう指示するならもっと早くし欲しかったものだ。


「ごちゃごちゃ煩いやつだな、結局ここは何の施設なんだよ、アンタ達一体ここで何してるんだ!?」


 と、今まで黙っていた灯が紅い刀の刃先を彼女に向け、焦ったそうにそうにそう言い放つ。


「……未来予測計画って何ですか?」


 私は拾ったファイルを彼女に突きつける。中身は確認してないけど、ここで彼女に問いただした方が早いような気がした。


「質問が多いなあ君たち──あれ?」


 と、彼女は私の方に視線を向ける。


「君のその腕に巻いてある機械、何でそれを君が持ってるの?」


 先程までの軽い雰囲気とは一転、真剣な口調になる彼女。


「貰ったんです、アナタに似た人に。未来で」


「……未来? 君はまさか未来に行ったとか言い出す──」


 そこで、何かに気がついたような表情になる彼女。


「あぁそうか。君も見たんだね、あの光景……まさか"混沌(カオス)の姫"本人に会えるなんて思ってもなかったよ」


「混沌の姫? 一体何の話ですか? それに"君も"って……」


 まさか彼女も私と同じ光景を見てきたのだろうか。


「ふふっ……あははは!! 面白くなってきたね真鶴!!」


 狂ったように笑い出す彼女。そうして……彼女はスッと幻のように消えていった。


「チッ、まあ本物だとは思ってなかったけど」


 忌々しげにそう呟く真鶴さん。


『今日は面白い娘に会わせてくれてありがとう真鶴、お礼に僕の研究成果を見せてあげるよ。楽しんでね〜』


 何処からともなく響いて来る天空橋明乃の声。そうして……薄暗かった地下空間が照明により明るく照らし出される。


『……気をつけて、何か来る』


 霧の警告、私はVz61を構える。一体何が──

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