67話 未来予測計画
パシュッ……という、甲高い金属が擦れるような作動音。放たれた催眠弾は黒服の男の背中に着弾する。
「ん……あれ? ……zzz」
倒れ込み、スヤスヤと眠る黒服。真鶴は通路の陰から出て倒れた黒服の男を目立たない場所に引きずっていく。
「ホントに眠っちゃうんですね、退魔弾といい中々凄い技術というか……」
少し離れた場所で、もう一人の黒服を"焔"で斬り伏せて気絶させた灯が鞘に刀を仕舞いながらそう呟いた。
「技術というより、単にアナタ達の力の延長って感じだから。私にしてみれば灯ちゃんのその技の方がすごいと思うわ」
物陰から出て、灯に視線を向ける真鶴。
「気を切って気絶させてるだけです、そんな凄い技じゃないですって」
そうして、二人は扉の前に立つ。
『あ、聞こえる? 休憩時間もらったから暫くしたらそっちに合流するよ』
と、そこにあげはからの念話が。
「だそうです」
あげはの言葉をそのまま真鶴に報告する灯。
「わかったわ、私たちは先に行ってるわね……灯ちゃんお願い」
灯は焔を構える。
「────熱風閃」
シュッ……という音、扉に入る赤い線。灯は刀を仕舞い扉を蹴破る。
そうして、二人はB区画──地下へと続いていく道へと入っていった。
〜〜〜〜〜〜〜
「よしっ……」
従業員用出入り口に隠してあったバッグとケースを回収、ワルサーPPKを取り出してケースはその辺に捨てておいた。
『あ、聞こえる? 休憩時間もらったから暫くしたらそっちに合流するよ』
と、念話で灯にそう伝えた。
『わかったわ、私たちは先に行ってるわね』
インカムから聞こえる真鶴さんの声。
「わかりました」
裏エリア内を歩く。この格好なら多少は怪しまれないだろうけど、流石に派手な動きは控えた方がいいだろう。
「霧、B区画までの誘導頼めるかな? なるべく見つからないように」
『オッケー』
そうして、私は霧の指示通りの道を行く。荷物が乱雑に積まれた窮屈な通路を通り、先を進む。
途中遭遇した黒服を催眠弾で眠らせたり、必死になってカメラの死角を通ったり……そうしてようやくB区画の入り口前まで辿り着いた。
「と、扉が──」
B区画とやらへの入り口、その扉は斬られてあり乱雑に蹴破られていた跡があった。
「雑過ぎでしょ……誰かに見つかったらどうするのさ……」
私は斬られた扉の残骸を飛び越え中に入る。中には地下へと続く螺旋階段があった。
「人の気配なし、灯? そっちはどう?」
私は念話で灯にそう聞いてみる。
『あー、なんだが怪しいものばっかだぞ? お前も早く来てみろよ』
怪しいものとは一体……
私は階段を降りて地下へと降りていく。流石な空間に響く私の足音。
「結構深いなぁ……」
すぐに下のフロアに着くと思ったけど、階段は結構長かった。そうしてようやく底に辿り着く。
地下の空間は薄暗く、何があるのか見えづらかった。
「よいしょ……」
バッグに入れていた小さなペンライトを取り出して辺りを照らす。
「うわっ!」
側に黒服の人が転がっていた、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てている。
『灯、今どの辺?』
『奥進んだ所、あ。眠らせたの転がってるから気をつけろ〜』
先に言ってくれ……心臓に悪いから……
そうして、暫く暗い通路を進むと何やら『第一研究室』と書かれたプレートがついたドアを見つける。
私はワルサーPPKを構え……部屋の中に。
「よかった……誰もいない」
幸い部屋の中は無人だった。しかし規模の割になんだか地下にいる人が少ないような気もする。
「結構広いなぁ」
その空間、部屋というべきだろうか。 いかにも研究室のような雰囲気の漂うその空間。
何に使うのかよくわからない機器やコンピューターのようなものがあちこちに設置されている。
部屋の中を見て回る。ふと、デスクの上に置かれていた一枚のファイルが目に止まった。
「未来予測計画……なんだろう」
それを手に取る。
「──あれ?」
そのファイルの左下部分に、見たことのある文字がサインしてあった。
「……天空橋明乃?」
人の名前だろうか。でも"天空橋"って確か…‥
私はチラリと自分の左腕に巻かれているその機械に視線を向ける。このMG-COMに書かれていた文字も天空橋だ。
「何か関係あるのかな……」
よくわからないけど、このファイルは回収しておいた方が良さそうだ。
私はそれを手に持ち、再び部屋の中を探索してみるが他に目ぼしいものはなかった。
私は部屋を出る。そうして再び地下の暗い通路を進む。
「────ッ!」
肌にピリッとした感覚を覚える。これは……影霊の気配だろうか。
『灯? 灯!?』
何故だか念話が通じない。インカムで真鶴さんにも連絡を入れてみようとするが通信ができなかった。
「霧、二人と通信できないんだけど!?」
私は慌てて霧にそう報告を入れる。
『落ち着いて、こっちでも把握してる』
対して冷静な様子の霧。
『私の姫神の通信能力はあげはとは桁違い、こっちでは灯とは連絡が取れてる……でもちょっと面倒なことになってる。なるべく急いで二人の元に』
「わ、わかった!」
私は地下通路を駆け出す。一体何が起きたのだろうか……




