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65話 迷えるバニー

「うんうん、似合ってますよあげは」


 若干からかう様なテンションの揚羽。


「ホント、こんなもの着るハメになるなんて……」


 自分の身体を見る、まさしくこれぞバニーというに相応しい正統派な衣装が私の身体を包んでいる。そして頭には可愛らしいうさ耳。


 まあ確かにカジノといえばバニーが付き物だ。そういう場所だと聞いてからある程度覚悟はしていたけど──


「やば……冷静に考えるとこの衣装って色々と凄いなぁ」


 露出度の高さといい、デザインといい色々と凄い。身体のラインがモロに出るので羞恥心が……


「大丈夫ですって、あげはって無駄にスタイルいいですからね」


「──そういう問題じゃない!」


 そういう問題じゃないんだよ……


『ほら、早くホールに行かないと怪しまれるよ』


「わ、わかってるって」


 ハンドバッグを手に取りロッカールームを出る、壁に貼ってあったフロアの見取り図を確認しホールへ。


「流石に怪しい感じの場所は載ってなかったね」


『まあ、違法カジノの方とは組織の体系が分かれてるみたいだから』


 そうして、従業員用入り口前にたどり着く。


「この辺りでいいかな」


 ハンドバッグを入り口ドア前の適当な場所に隠して置き、ホールの中へ。


「おぉ……」


 ドアの先には……いかにも"カジノ"といった雰囲気だった。ホール内はそこそこな人で賑わっている。


 体感外国人が多めな感じがした、まあここが羽田空港から近いからなんだろうけど。


「ほらバイト! さっさとこっちに来る!」


 と、先程の女性に怒鳴られる。私は急いで彼女のもとに向かう。


「いい、じゃあ適当に回って頼まれた飲み物とかを──」


 彼女から超大雑把な指示を受けて、私はそれっぽくホール内を見て回る。


『そういえば、雫は?』


 私は霧に問いかける。雫も私と同じく従業員として潜入すると聞いていたんだけど……


『あんな恥ずかしい衣装は死んでも着たくないって、灯と一緒に客の方に回ったよ』


 あいつマジか……私がこんな恥ずかしい思いしてるのに。


『あと三十分後に三人が来るから、それまでそれっぽく動いて。出来れば何か情報を探ってみて』



 そうして、私はお客から頼まれたドリンクを手配したりしてそれっぽく働いてみせる。


 その中でふと、二人組の客のこんな会話を耳にした。


「なぁ、あの噂ホントか?」


「この地下で化物を飼ってるって話か?」


 私はそれとなく二人組の男に近づき会話を盗み聞する。


「例の研究所の生き残りが地下で動いてるとか……おい、何だお前?」


「あ、いえ何でもありませ〜ん」


 脱兎の如くさっさとその場を去る。


『今の聞いた?』


 私は頭の中で霧にそう問いかける。


『うん、聞いた……研究所っていうのは多分──』


 そこで霧の言葉が途切れる。


『どうしたの?』


『ごめん、話は後。お客組が来たよ』


 私はチラリと入り口の方向に視線を向ける。正面入り口から入ってくる三人の女性。


「……誰?」


 先頭にいる一人、多分真鶴さんだと思うんだけど──ぱっと見別人に見えた。


『誰って真鶴だよ、変装してるから分かりづらいだろうけど』


 変装というか、普段めちゃくちゃダラシない人なのに今の真鶴はまるで別人の様にしっかりとしたドレスを着て、まさしく"裕福な大人の女性"という雰囲気だった。


『普段の姿とは大違いすぎる……』


『あげはに同意、私も驚いた』


 そうして、真鶴さんと一緒にいたのは灯。事前の打ち合わせ通り二人は一緒にここに来た様だ。


「……綺麗」


 思わずそんな言葉が漏れてしまった。


 灯は露出度の高いとても高級そうなチャイナドレスを着ていた。


 普段のポニーテールを解き左右の小さなお団子ヘアー、大人らしい派手でもなく消して地味でもない落ち着いた感じのメイクをしている。


『ほら、見惚れてないで二人の分の道具を確認してきて』


 あっ、そうだった……


 私は女性の従業員にボディチェックを受けている二人から視線を外す。


「……どこだっけ?」


『バーテンの人が渡してくれるよ』


 思い出した、二人の分の道具は私のVz61と同じように内部の協力者が通してくれている。


 私はホールを見渡し、バーのようになっている一角を見つける。何度かドリンクを手配しに行った場所だ。


「あのー」


 バーテンダーの人に声をかける、彼はチラリと私に視線を向ける。


牛乳(ミルク)でも貰おうか……!」


 事前に教えられていた合言葉。その言葉に反応した彼は……スッとキーを差し出す。


「ホール傍、女子トイレの清掃道具入れ」


 彼は小声でそう呟いた、私はキーを受け取りその場を離れる。


「お花を摘みに行ってきます」


 と、先輩の従業員に声を掛けてホールから出る。そうして目的の女子トイレに。


『トイレのカメラは?』


『二分だけ無効化した、急いで』


 私は急いで中に入る、洒落た雰囲気の綺麗な女子トイレ内、誰もいない事を確認して清掃道具入れのドアを開ける。中には清掃道具に紛れて黒いケースが置かれていた。


「……よし」


 ケースを開けて中を確認、中には小さなミニサイズの拳銃、英国の某エージェントも愛用している"ワルサーPPK"が二挺、それから専用のサプレッサーとマガジンが数個乱雑に放り込まれていた。


 と、そこにトイレの中に人が入ってくる気配。隠れようとしたけど……


『大丈夫、真鶴と灯だから』


 はぁ、無駄にびっくりさせないでほしい。


「よ、あげは。その衣装めちゃくちゃお似合いだぞ?」


 と、中に入ってきた灯が私に声をかけた。


「……灯もね」

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