64話 湾岸プラント
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霧が特定した施設は大田区の湾岸エリアに存在する。"湾岸プラント"と呼称されるその施設。一見すると無機質な倉庫のような建物だけど……
「ホントにこの中がカジノになってるんですか?」
車の窓越しにその建物を見る。見つかりにくいように建物からは死角になっている場所に車は停車している。
『うん、私の調査は完璧』
霧の声が聞こえてきた、まぁ確かに霧の情報収集能力はかなり信頼できるしそこは間違いはないだろうけど。
「武器は……四番搬入口から入って二番目のロッカールームに置いてある、それを拾って使え」
右の運転席に座ってノートPCをいじっている紫電さんがそう呟いた。
私と雫はこの違法カジノの従業員として潜入する。灯と真鶴さんはお客として潜入。
内部にも協力者を"無理やり"作り出し、使用する道具などを通してもらった。
一体どんな方法で協力者を作ったのだろう……あまり想像したくないなぁ。
と、まあこの通り潜入に必要な"道具"の調達は全て真鶴さんと紫電さんがやってくれた。
「影霊の反応は?」
私は霧にそう問いかける。
『地下に集中してるみたい、特定されにくいように妨害魔術をかけてある……これのせいで特定が遅れた』
彼女の忌々しげな声色の念話が聞こえてきた。
「……わかった、じゃあそろそろ行ってくる」
私はドアを開け車を降りる。
「いざとなったら私らが出てくから、気楽にやってけ」
私の背中をバンバン叩く紫電さん、果たして頼もしいと思ってもいいのだろうか……
深い青色のボディ、Rのロゴが輝かしく光る高級スポーツカーから離れて湾岸プラントに向かう。
湾岸プラント、一見するとタダの何の変哲もない倉庫なんだけど──
私は事前に伝えられた四番搬入口に向かう、入り口には気怠そうな雰囲気を漂わせたスーツ姿の男が。
「止まれ」
威圧的な雰囲気の男、私は事前に渡されていたカードを提示した。
「……お前、ホントに二十歳か? 高校生くらいのガキにしか見えねえぞ?」
と、訝しげな視線を向ける男。
「ええ、よく言われます」
流暢に返答したつもりだけど、内心はドキドキだ。
「その手荷物を見せろ」
と、男は私が手に持っている小さなハンドバッグを指さす。
「女性の手荷物を探るなんて、失礼な男ですね」
私は渋々、といった雰囲気を出しながらバッグを開き中を見せる。勿論中には大したものは入ってない。
これがあるから銃とかを直接中に持っていかなかったのだ。
男は中を見る、それから……私の身体をジロジロと眺める。
「なんならボディチェックでもします?」
「……いらねえよ、ガキに興味はねえからさっさと行け」
どうやら第一関門は突破できたみたいだ。まあこの先には何十もの関門が待ち受けているわけだけど……
私は建物の中に入る、搬入口というからもう少し倉庫的なモノを想像していたけど。なんというか普通に様苦しい通路であった。
二つ目の部屋、ここか。
搬入口から入って二番目の部屋を見つけ、ドアを開け中に入る。ロッカールーム……確かにここのようだ。
バッグからキーを取り出す、キーのタグに付けられている数字と同じ番号のロッカーを探した。
「……あった」
目的のロッカーを見つけ鍵を挿す。
「……カメラとかないよね?」
チラチラと周りを見る、一応確認だ。
『二個あったけど、ダミー映像に差し替えてあるから安心して』
霧の念話が聞こえてくる、相変わらず用意周到な事で……
ロッカーを開く、中には大きめの黒い鞄が。チャックを開き中を確認。
「全部あるね」
中を漁る、入っていたのは"スコーピオンVz61"という短機関銃。それから予備マガジンが数個、それと小さなインカムも入っていた。
……短機関銃か、本当ならいつも慣れてる愛銃のほうが良かったのに。まあ持ってこれないんだし仕方ないけど。
Vz61は逆に邪魔になりそうなストックが外され、ドットサイトとグリップが取り付けられていた。あと何故か真っピンクにペイントされていた、誰の趣味?
使用する弾薬は本来.32ACP弾。だが今回は対人非殺傷用の特殊な催眠弾が込められている。
この前、紫電さんにサンプルとして渡されたものと同じやつだ。
Vz61と催眠弾入りマガジンを持ってきたハンドバッグに放り投げ、インカムを耳につけ髪で隠す。
と、そこにドアの開く音。誰かがロッカールームに入ってきた。
「アナタ? 今日休んだ愛の代わりっていうのは」
やってきたのはここの従業員と思わしき女性であった。
「はい、今日はよろしくお願いします」
彼女は私をジロジロと見つめ……
「アナタ本当に大学生?」
「……よく言われます」
ため息をつき「それがコンプレックスなんです!」みたいな雰囲気を出しておく。
「まあいいわ、仕事の内容は頭に入ってるわよね、さっさと着替えなさい」
「は、はい……」
着替える、かぁ……いやいやまあこんな場所に来たんだから覚悟はしているんだけどさぁ。
そうして、彼女から衣装一式を手渡された。その衣装はカジノでお馴染みなエッチなウサギさんを模したものだった。
「着替えたらさっさとホールに来なさい」
そうして女性はロッカールームから出て行く。私はため息をつきながら渡された衣装一式を眺める。
「嫌すぎる……」
『あげは、覚悟を決めて』
と、無慈悲に言ってみせる霧。勘弁してくれぇ……




