62話 このテストには必勝法がある
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特に変わったこともなく一週間ほど過ぎていった。この間、影霊が一体また現れ桜子ちゃんの戦い方を見ることができる機会があったけど……なんというか凄かった。
タロウとの連携も素晴らしかったし、本人の能力──特に射撃の腕は凄まじかった。狙ったところに百発百中、私とは大違いだ……
そういえば、今私たちや柚子が調べている例の組織について。霧が拠点の一つと思わしき場所を特定してくれた。
殆ど手がかりがない状態で一体どう探し当てたのか。相変わらず霧の情報収集能力の高さには驚かされる。
灯はすぐにでも突っ込もうと息巻いていたけど、雫や真鶴さんに止められた。しばらく観察を続けておいた方がいいとの判断だ。
あっ、そういえば真鶴さんが調査していたという組織もどうやら同じ組織であったらしい。
あまり詳しく話してくれないんだけど「昔馴染みが……」という言葉をポロッと漏らした事がある。誰か知ってる人がそこにいるのだろうか。
真鶴さん曰く、ソイツらがこの先起こりうる"崩壊"について鍵を握っているかもしれないという事……
まあ、何がともあれ拠点がわかれば、その他の情報も芋づる式に掘り当てられるかもしれない。
その謎の組織とやらの全容が分かるのも意外と時間の問題かも。
ともかく、その手の情報収集任務は霧や真鶴さんに任せる(というか私に出来ること何もないし……)として、今私の目前に迫っている危機は──期末試験であった。
放課後、私と灯は紫電さんのお店に。スペースを借りて試験勉強をしていた。
「このテストには必勝法がある!」
「へぇ、どんな?」
こちらを見ることもなく、ダルそうにそう呟く灯。
「それは──こことここにヤマを張る!」
「それただの運任せだろ……」
呆れ気味な様子の彼女。私の精一杯の必勝法は一瞬で否定される。
「あー! ありえない、なんでこんな範囲広いかなぁ……」
高一、最初の期末試験とは思えない程の範囲の広さに絶望。
「そう? まあこんなもんだろ」
相変わらず余裕そうな灯。あー、いいですね地頭がいい人は……
私はシャーペンをテーブルに放り投げ、椅子にもたれかかる。
「はぁ、人間は大変ねぇ……」
教科書を覗き込むアリス。
「こらノートに乗っからない」
彼女を隣の椅子の上にどかす。あぁ、試験がない影霊は呑気な物で……
「なーにお喋りしてんだよ、ペンを動かせ。高校生は勉強が仕事だろ?」
と、カウンターにいる紫電さんに怒られる。
「終わったら新作買わせてやるからそれまで頑張りな〜」
そう言って厨房の方に戻っていく彼女、あの人なんだかんだ言って面倒見はいいよなぁ。
そんなこんなで試験勉強を進める、ちなみにたまに店に来るお客さんは私が勉強の片手間に対応した。夕方はお客さんが少なめだからできる芸当だ。
『今日のゲストは……なんと! 今人気絶頂の女優──』
と、店内に置いてあるテレビをボーッと眺める。気がつけば時刻はもう七時過ぎ、ゴールデンのバラエティ番組が始まっている時間帯だった。
「あー……もうこんな時間かぁ」
ペンを置く、なんだかんだ言って結構な時間ここにいた。
と、その時。カランと店のドアが開く。お客さんだろうか……と思ったけど。やってきたのは桜子ちゃんだった。
「いらっしゃい」
私は桜子ちゃんにそう声をかける。彼女は例の学ラン姿ではなく可愛らしい私服を着ていた。
「そこのカウンターの上に置いてあるよ」
私は箱を指さす。カウンターの上にはウチの店のロゴが入った持ち手がある長方形の箱が。
「……どうも」
彼女はそれを取る。あの中には……ケーキとSAKURA用の退魔弾が入っている。そろそろ来るかなと思ってついさっき用意したモノだ。
桜子ちゃんも私と同じく、影霊退治の際のメインウェポンは拳銃だ(まぁ私の場合は手裏剣の方がメインかも?)。退魔弾などはこの店がサポートしてくれる。
ちなみにケーキの方はモンブランだ、なにやら彼女の大好物らしい。なんだか女の子らしくてかわいいなぁ。
箱を持った桜子ちゃんが私たちの方にやってくる。
「試験勉強ですか、ご苦労様です」
私と、すやすや居眠りしている灯とアリスを見てそう呟く彼女。
「え? うん、まあね。てか中等部も期末試験でしょ?」
「私の事はご心配なく、私勉強はそれなりにできるので」
と、やたら胸を張ってそう言い張る彼女。
「そうなんだ……」
何故そこまで勝ち誇った様子なのかよくわからないんだけど。
「……それよりも、あげは先輩って本当に退魔巫女なんですか?」
唐突にそんな事を聞いてくる彼女。いきなりどうしたのだろうか。
「どういう事?」
「──先輩、力を私に隠してませんか?」
私の目を見据えて、スパッとそう切り込んでくる彼女。もしかして──
「何かわかるの?」
力を隠す、私な思いつくのは例の影霊の力を使い変身できるあの力しか思いつかない。
「これでも影霊使いですから、同族の匂いはわかるつもりです、まぁ今までその同族に会ったことなんてありませんけど」
匂いって……まさか。
「ごめん、私匂うかな……」
「いえそういう訳じゃ、むしろあげは私好みの先輩はいい匂い──って私に何言わせるんですか!」
慌てたような様子の桜子ちゃん、なんだか急に彼女が愛らしく思えてきた。
「ごめんごめん、というか別に隠してた訳じゃないんだよね。披露する機会もないしどう説明すればいいのかもわからないし」
それは本当の事だった、別に「絶対に桜子ちゃんには隠しておかないと!」って事でもない。
「……わかりました、じゃあ今じゃなくてもいいからちゃんと教えてくださいよ!」
それだけ言って、桜子ちゃんは逃げるように店を去っていった。
「……なんだか慌しい娘だなぁ」




