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57話 原宿の噂

「そういえば……アナタの探偵事務所にまた新しい居候が増えたとか」


 隣を歩く柚子が唐突にそんな事を書いて来た。ってか桜子ちゃんの事について一切教えてないはずなのに何で知ってるんだ……?


「ふふん、南野の情報網を舐めないでください」


 私の疑問を察したかのように、柚子は得意げにそう言った。いやいやちょっと怖いんですけどそれ……


「うん、まあね。真鶴さんの姪っ子らしいけど」


 結局桜子ちゃんはホントに探偵事務所に住む事になった。百合々咲の中等部にも通い始め、本格的に東京で暮らし始めるようだ。


 ……彼女、なんとなく私と距離があるような気がする。


 影霊使いかと期待させてガッカリさせてしまったのがいけなかったのだろうか?


「着きましたわね、ここが……」


 先ほどの新駅舎前から少し歩いて、目的の場所にたどり着く。やって来たのは竹下通り、様々な店が軒を連ねるカワイイの発信地だ。


「人多いねー」


 今日は日曜日、竹下通りは人でごった返してした。


「ここでクレープを食べながら写真を撮るのが原宿女子の嗜みと聞きましたわ!」


 やたらテンションが高めな柚子。


「そうなんだ、初耳」


 そんな嗜みがあったのか。知らなかった……ならば乗るしかない。私ももう"女子"なんだから。


「それでは行きましょう!」


 彼女に手をひかれ、竹下通りに入っていく。人が多くて中々進みづらい。



 その後、私と柚子は竹下通りを一通り見て回った。だけど正直言って……


「はぁ、私にはハードルが高すぎた」


 通りから少し離れた場所にある隠れ家的なカフェで休憩する私たち二人。


 女子になって数ヶ月しか経ってない私に原宿は敷居が高過ぎた(誤用)。


 なんかやたら色づかいが独特なお店が多くて目がチカチカしたよ……


「ここには初めて来ましたけど、全く驚く事ばかりでしたわね……」


 向かいに座る柚子はなんやかんや漫喫したらしく。満足げな表情をしながらコーヒーを飲んでいた。


 やたらはしゃぐ彼女の姿を見て、ちょっとこの娘のイメージが変わったような気がする。


「──そういえばさ、なんかちょっと変な噂が聞こえて来たんだけど」


 街を歩いていると、なんだか妙な話が耳に入って来た。


「ええ、わかってますわ」


 カップを置き、声のトーンを真剣なものに変える柚子。


「今日原宿に来たのはそれを調べる為でもあります」


 彼女もただココに遊びに来ただけでは無いようだ。


「でもホントかなぁ、ただの噂話じゃないの?」


 耳にしたのは……最近原宿で"仲間"を探しているという妙な組織の噂。


「仲間ってなんだろうね、なんだかやけに曖昧な単語だけど」


「……私もその辺りのことはまだよくわかりませんけど。ウチの情報網によれば、その組織がどうやら影霊に関わっているとかなんとか」


 と、いきなり話が退魔巫女(わたしたち)の身近なモノになって来た。


「ただ、今日来て見た限り。噂話の域を出ないモノでしたわね……もう少ししっかりとした調査が必要なのかしら」


 真剣に考え込む彼女、気を抜いて遊んでいるように見えて実はかなりしっかりとその辺りに気を配っていたらしい。


「その組織ってなんだろうね?」


「……実は、少し心当たりがあります、でもその組織が本当に私の考えている通りの奴らなら簡単に尻尾は出さないでしょうね」


 そうして、柚子は立ち上がる。


「行きましょうか、まだ原宿観光は終わってませんよ」


 ……あ、それも続けるのね。



 そうして、私たちは竹下通りを出る。次は駅の反対側に向かう事にした。


 原宿、竹下通りとは反対のエリアはまた全く違った雰囲気の街になっている。


 明治神宮や代々木公園を始めとする落ち着いた大人っぽい雰囲気の場所が多い。私的にはこっちのエリアの方が断然好きだ。


「探偵事務所から近いのに来た事ないんだよね」


 実はウチの探偵事務所はこの辺りから結構近い場所にある。歩いてもそれほどかからない。


「そういえば、ここから二駅くらいの場所でしたわね。私は何度か来たことがあります」


 思い出したようにそう呟く柚子。



 と、私と柚子はなんとなく気の抜けた世間話をしながら歩く。そうして明治神宮前にたどり着いた。


 明治神宮、騒がしい竹下通りとは正反対の落ち着いた雰囲気の神社だ。まるで別の世界に来てしまったみたいだ。


「おっきい鳥居……」


 入口の大きな木造の鳥居を見上げる。


「やっぱりここは落ち着きますね」


 竹下通りではしゃいでた様子とは一変して、静かでたおやかな雰囲気を漂わせる柚子。


 ……結構テンションの落差が激しい娘なんだなぁ、柚子って。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……なーに話してんだろうな?」


 あげはと柚子を追いかけるように歩く灯&雫コンビ。灯はジーッと先を行く二人を見つめる。


「さっきからどうしたんだよ雫?」


「いや、あの雰囲気に驚いていただけよ、日本にあんな場所があったなんて……ヤックデカルチャー……」


 ブルブルと震えている雫。どうやら彼女的には随分とカルチャーショックだったようだ。


「いやいや、大袈裟過ぎだろ……ってか、二人を追いかけるのに夢中で全然見て回れなかったなぁ、今度あげはと三人で改めて遊びに来ない?」


「…………私は遠慮しておくわ」

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