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56話 待ち合わせ

〜〜〜〜〜〜〜〜



「なぁ……何で私もこんな事しなきゃいけないんだ? 放っておけば良くないか?」


 日曜日の原宿駅前、人通りも多くいかにもな休日感を漂わせている。そんな賑やかな場所の物陰から二人の少女が一人の少女の様子を伺っていた。


「何言ってるの! 放っておける訳ないでしょ! あげはがヤツに変な事されたらどうするの!!」


 雫は実に真剣かつ、かなり怒ったようなテンションで灯にそう返答する。


「んな大袈裟な……まあ、お前が心配する理由もわかるけどさぁ」


 灯も雫の過去、そうしてそこから繋がってくる南野の人間に抱いている複雑な感情は知っている。だからこそ中々強く言い返せないのであった。


「それにしても原宿ねぇ、柚子(アイツ)にしては意外なチョイスというかなんというか……」


 雫がそう呟く。


 原宿といえば竹下通りを始めとして、オシャレタウンとして有名な街だ。柚子の古風でお堅い感じとはまるで正反対な雰囲気の街である。


「まぁそれはわかるけど……それよりあげはよ、あの娘『あんなオシャレタウンに行ったら灰になってしまう!』とか何とか言って最後までイヤイヤな感じだったからな」


「灰って……吸血鬼? まぁ気持ちはわからなくもないけど……」


 雫自身、出席日数ギリギリな不登校気味、孤立気味で決してイケてる感じの女子では無いので嫌がる気持ちもわからなくはない。


「灯、あなたはこういう所に慣れてそうね」


 チラリと灯に視線を向ける雫。


「え? あぁ、まあよく来るし……あ、そうだ。そういえば原宿と言えばこんな噂聞いた事あるんだけど──」


 と、何か思い出したような様子の灯。


「ええ、言いたい事はわかってるわ。私も霧姉に聞いたから。丁度いいからそれも調べてみましょう」


 雫は灯が言おうとしていた事に心当たりがあるようだった。


「オッケー……いやぁそれにしても、あげはのあの格好どう思うよ?」


 灯は微妙な面持ちで雫にそう聞いた。


「……言わないであげて、あれがあの娘の精一杯のオシャレなんだから」


「小学生が背伸びして着飾ってるみたいだな、あれ? ってかそもそもあげはが着てる服って、大体雫のお下がりだよな──」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「まだかなぁ、柚子ったら遅刻か?」


 私はスマホで時間を確認する。待ち合わせの時間からもう十五分くらい過ぎてるけど……


「もしかして何かあったのかな」


 辺りを見渡す。真新しい原宿駅の新駅舎前は人で賑わっていた、休日という感じがする。


「んー……あの木造の駅ってもうないんだ。一度見てみたかったなぁ」


 原宿駅の象徴とも言える、木造でレトロな駅舎は既に解体されており現在建て替え工事が行われていた。


 東京に住んだはいたけど、原宿に来るのなんて初めてだった。だって元は男子高校生だったわけで、勿論彼女いない歴=年齢だからこういう所に来る機会なんてまるで無かった。


「ちょっと連絡してみようかな……」


 なんとなく心配になって来たのでスマホで柚子にメッセージを送ろうとした。


 と、そこに一台の黒い高級セダンが走ってくるのが見えた。道路脇に止まったその車から一人の少女が降りてきて急いでこちらの方にやってきた。


「申し訳ありません! 道路が混んでいて!!」


 やって来たのは柚子だった。


「あ、いいよいいよそんな待ってないし」


 ハァハァと息を切らせ、申し訳なさそうに頭を下げる柚子。そこまで真剣に謝られると逆にこっちが申し訳なくなってきた。


「今日は来て頂いてありがとうございます」


 再度、私に礼儀正しく頭を下げる柚子。いやいや何というかホント、遊びにきたってテンションじゃ無いんだけど。


 もうちょっと軽い感じで接して欲しいんだけど、まあこれが彼女の性格っぽいし仕方ないか……無理にもっと打ち解けてよ! と言っても仕方ないだろうし。


「うん、私も南野さんと一緒に何処かに行ってみたかったし。今日はよろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」


 そう丁寧な言葉で返してくる柚子。


「あ、それと。私の事は柚子でいいですわ、私もあげはと呼んでいいかしら?」


 あれ、呼び方に関しては意外にもフランクな感じなのだろうか。


「わかったよ、えっと……柚子。じゃあ行こっか」


 取り敢えず、駅前から動く事にした。っても、何処に行けばいいのやら。


 色々調べてみたけど、原宿ってなんかハイカラ過ぎて……陰キャの私には眩しすぎる街だった。


「ご心配なく、プランはちゃんと考えておりますわ」


 私の心配を察したかのように、彼女がスマホを取り出して何かを確認している。


「柚子ってやっぱそういうタイプ?」


 イメージ通り、几帳面な性格のようだ。でも今はありがたい。今日は全部柚子に任せる事にしよう。


「──それにしても……」


 私はチラリと少し離れた場所に視線を向ける。その物陰に潜んでいる二人の人物。


 ……雫も灯も、バレバレだよ。あれで気が付かれないと思ってるのかなぁ。


 わかりやすいくらいこっちを伺う気配が丸出しだった。何というか隠れるの下手すぎない?


「どうかしました?」


「いや、なんでもないよ! 行こう行こう」

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