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51話 あと七ヶ月

 四家会議から二週間ちょっと経った。六月も終わり七月の初め、雨がうざったい梅雨の季節真っ盛りの時期だ。


 私この時期は嫌いだ、だって雨ばっか降るし。ホント梅雨って苦手だ。


 この二週間ほど、特に変わった事は無かった。学校に行きながら相変わらず定期的に湧く影霊を退治したり、紫電さんのお店でバイトしたり……


 一番最初の影霊退治という仕事を除けば、なんだか普通の女子高生みたいな生活だ。


 女の子になってもう二ヶ月くらい経ったのだろうか? 色々苦労もあったけどなんやかんや充実している様な気もする。最初はやっぱり色々と大変だったけど、人間なんでも慣れるものだ。


 まあでもぶっちゃけ、こんなのんびりしてて良いのかという気持ちはある。未来の灯、そうしてあの謎の女性が示した"二月"という変化が訪れる月まで七ヶ月。


 私は一体どうしたらいいんだろう、考えても考えても中々いい案が浮かばなかった。




 まあとりあえず今日もまた変わらぬ一日が始まる。さあ、朝起きて洗面所に────


「って、うぎゃあ!! 誰だこの美少女……って、私か……ビックリした」


 前言撤回、まだまだ完全に慣れた訳じゃない。たまにこんな事がある。流石に性別が変化するのはそんな簡単に慣れることじゃないかなぁ……


 あ、そうそう忘れてた、一つだけ"変わった事"があった。しかも結構重要な事だ。


 未来であの謎の女性に無理やりMG-COM(マギコン)にインストールされた謎のソフトウェア。あれの詳しい使い方がわかった。


 この機能は影霊を使役できる機能のようだ。使役といってもかなり特殊な方法なんだよね。


 ……なんかさっらっと言ってるけど割ととんでもない機能のような気がする。


 その機能を見た真鶴さんが物凄く真剣かつ、考え込んだ様な表情をしていたのが気になるけど……


 まあ、これについての更なる詳しい話は(のち)ほどしよう。


「雫〜? 今日は学校行くの?」


 支度を終えた私は彼女の部屋の前に立つ。しばらくするとドアが開かれ──


「……ええ、今日は行くわ」


 パジャマ姿の雫が出てくる、珍しい。


「そ、じゃあ待ってるから」


 私はそのまま事務所の方に。


「おはようございます」


「おはよう〜あげはちゃん」


 珍しく真鶴さんがこの時間から起きていた。いつもめちゃくちゃ起きるの遅いのに……


「早いですね、今日は何かあるんですか?」


 私は通学バッグをテーブルの上に置き、応接用のソファに座る。


「ちょっと人を迎えに……って、あげはちゃん? その言い方だと私いつも起きるのが遅いだらしない人みたいじゃない?」


「いや、だって──」


 実際そうだしなぁ……


 と、そこまで言ってしまうと流石に失礼かと思い出てきそうだった言葉を抑える。


 私はテーブルの上にあったテレビのリモコンをとり、電源を入れ適当に流れている番組を眺める。


『今日はここ、原宿の魅力を余す事なくご紹介──』


 原宿ねぇ……こっから近いけど、一生行く機会なさそう……


 しばらくテレビをボーッと眺める。そうして、ようやく雫が支度を済ませ事務所に入ってきた。


「行きましょうか」


「あ、うん」



〜〜〜〜〜〜〜〜



「あ〜、今月乗り切れば夏休みだぜ? 早く夏休みならないかなぁ」


 百合々咲学園の最寄駅で灯と合流、会って早々彼女はそんな事を呟いた。


「ま、その前に期末試験だけどね」


 前の中間試験はなんやかんや転校のタイミング被りや、その他のドタバタもあって受けられなかった。ある意味ラッキーっちゃラッキーだったけど今回はそうもいかない……


「まあそんなんどうにでもなるっしょ、それより夏休み何するよ!?」


 と、待ちきれない様子の彼女。


「私達、東京周辺から出れないけどね」


 私と灯の前を行く雫がボソリと呟く。


「そうだった……」


 ガクリと肩を落とす灯、酷く落ち込んだ様子だ。


「えっと……東京から出れないって?」


 私が雫にそう聞くと、彼女は「そのままの意味よ」と簡潔に言葉を返してきた。


「──いや、その言い方だと物理的に出れないみたいだろ! そうじゃなくてさ、単純にウチらが外に出たら東京(ここ)に出る影霊はどうするのかって話だよ」


「あぁ、そういう事」


 物理的に出れないんじゃ……と思って一瞬ちょっと焦った。


「四家間の協定で決まってるの、この東京には常に四人の退魔巫女がいなきゃいけないってね」


 へぇ、初耳だ。そんな決まり事があったのか。


「でも、四人なら二人はどっか行けるんじゃ?」


 今この東京にいる退魔巫女は私、雫と霧、灯。あと柚子と舞花さんの六人だ。


「そうだけど……自分がいない時になんか大変な事あったらと考えるとイマイチなぁ。外に出る気になれないというか……」


 ……確かにそれもそうか。何となくそれは嫌というか、自分の責任感が東京を出るのを咎めてしまう気持ちもわかる。


「まあ東京にも楽しい場所は沢山あるし、そんな悲観することでもなくない?」


 首都東京には他の観光地に引けを取らない程、良いところが沢山ある。


「確かに、でも夏休みなら南の島とか行きたいよなぁ……ほら、沖縄とかさぁ?」


「じゃあ小笠原諸島とか? あそこも東京じゃん」



 と、そんな気の抜けた会話をしながら学園に入る。今日は授業中に影霊が現れません様に……

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