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50話 背負っているもの

「…………」


 しばしの沈黙が訪れる。今の雫の話を聞いて私はある事を思い出していた。


 一ヶ月ほど前、私が雫に「戦う理由」というモノを聞いた時の話だ。


「別に……深い意味は無いわ。私が戦ってるのは……"北條"という名字を背負ってるからよ」


 彼女はそう言ってた、深い意味なんかない……なんて雫は言ってたけど、それは確実に本心じゃないだろう。


 あの時の雫は、私にこういった事情を悟られたくなかったのだろう。そしてこうも言っていた。


「私は北條の家に生まれたの。私の背中には……色々な人の意思が乗っかってるよ」


 今ならわかる、どういう人達の意思を背負っているのかが、雫はそれ程までに重いものを背負っていたんだ。



 私はしばらく雫の隣にいた、屋上のフェンスを背にして座り込む私たち。その間私はずっと彼女の手を握っていた。


 何故だかそうした方がいいから、と思ったからだ。


「……戻りましょうか」


「うん」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「あれ……帰ってたんですか?」


 探偵事務所に戻るとそこには真鶴さんがいた。


「ええ、ただいま〜二人とも」


 彼女は、私と灯がお土産に買ってきたプレッツェルを食べながら真面目な顔で机に向かっていた。


 ついでに机の上にはアリスもいた、彼女の小さな身体から見てアンバランスすぎる大きさのプレッツェルをムシャムシャ頬張っている。


「よくそんな大きいの食べられるね……」


 いったい、身体のどこの吸収されているのだろうか。


「ふん、私は普通の影霊とは違うのよ! 普通の影霊とは!」


 何故か偉そうにそんな事を言ってくる彼女。


「真鶴、四家会議は無事終わったわよ」


 雫が真鶴さんにそう報告をする。ってか、いうほど無事にだったかな……?


「霧ちゃんから話は聞いてるわ、なんだか色々大変だったみたいね」


 すでに霧から詳細を聞いていた様だ。うちでは、この手の情報共有役は全部霧に任せっぱなしだし当然っちゃ当然か。


「あげはちゃんも……まさかまた未来に行く事になるなんて」


「はい、自分でもびっくりです」


 そして私は未来で経験した出来事について、真鶴さんにも詳しく話した。


「来年の二月……か」


 深く、何か考え込む様子の真鶴さん。


「来年の二月ってタイミング、あの変な奴が言ってたタイミングと一致するのよね」


 と、雫が呟く。そういえばみんなの前にも現れたあの女性もそんな事を言ってたんだっけ。柚子はまったく信じていない様子だったけど。


「真鶴、何かわからないの? 最近色々調査してるみたいだけど」


「そうね。実は今ある組織を追ってるの」


 組織を追ってる、なんだか急に探偵みたいな言葉が出てきた。いや、この人一応探偵事務所の所長だっけ……


「ある組織ってなんですか?」


 私がそう聞いてみると真鶴さんは「んー、今はちょっとまだ話せないかなぁ」と言葉を濁すようにそう言った。


「ともかく、ソイツらが何か鍵を握ってそうなのは確かなのよね〜。でも中々尻尾を出さなくて」


 深いため息をつく彼女。まあよくわからないけど、その手の事は探偵(プロ)に任せておいた方が安心だろう。


「何か掴んだらいち早くわたしたちに教えなさいよ」


 と、雫は真鶴さんにそう言い残して自分の部屋に戻っていった。


「……私も部屋に戻りますね」


 私も自分の部屋に戻る。太腿のホルスターを外して机の上に、そうしてソファーに座る。


「はぁ、なんか疲れた」


 ソファーにもたれかかり、今日の出来事を思い出す。まず井の頭公園で初めて柚子や舞花さんと対面して、そうして突然未来に迷い込んで、戻ってきて灯と吉祥寺をふらついて。


 うん、あまりにも濃すぎる一日だ。


「シャワー浴びよ」


 私は部屋を出て事務所にある浴室に。脱衣所で制服を脱ぎ下着姿になる。


「ん〜……」


 ふと、洗面所の鏡を見る。そこにはこの一ヶ月半で、もうなんだかんだいって見慣れてしまった黒髪の女の子の姿が。


「やっぱちょっと似てるのかな、私」


 南野柚子、南野家当代退魔巫女。今日初めて出会った彼女……いつだったか灯がこんな事を言っていた。



「あ、そういや今更だけど。あげはってちょっとアイツに似てるよな!」



 と。確かに雰囲気とかは似ているのだろうか。


「なんですか? 自分の顔をジロジロ見て、ナルシストかなにかですか?」


 そこに揚羽の声が頭に響く。


「いや……違うから。ほら揚羽も思わない? 私ってちょっと柚子に似てない?」


 と、揚羽にもそう聞いてみる。


「まあ確かに、なんとなく雰囲気は似てますね……実はアナタと彼女って生き別れの姉妹とかだったりして」


 冗談めかしくそんな事を呟く彼女。


「ははっ、まさかぁ」


 そんな筈はない。だって私は一人っ子……だったのかな。


 まただ、また男だった時代のことを考えると記憶に靄がかかる。あーっ! ホント気持ち悪い感覚だなこれ……


「なんだかモヤモヤしてそうですね……あっ、まさかモヤモヤじゃなくてムラムラ? シャワー浴びながらおっ始めるつもりですか? 私どっか行った方がいいですか?」


「ち、違うから! なんでそうなるの!?」


 相変わらず意地が悪い姫神だ、私だって常にムラムラしているわけではない。発散するタイミングは考えて……っておいおい何言ってるんだ私!?



 ……今日はホント色々あったから、疲れて頭が混乱してきた。シャワー浴びてとっとと寝よう。

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