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40話 空は赤き

 荒れ果てた公園内を駆け出す。途中でチラリチラリと、影霊らしき生き物がいるのが見えた。そうして手入れを放置され密林状態となっていた井の頭公園から出る。


「──ッ!」


 突如背後から襲いかかる悪寒、私は振り向き手裏剣を投げる。背後にいたのは蜘蛛のような影霊だった。


 切り刻まれ、ドサリと下に落ち霧散していく影霊。


「ホント……あちこちに湧いてるんだ……」


 ここの世界、一切気は抜けない。



 街は何年も放置されているかの様にボロボロになっていた。道路のあちこちに乗り捨てられ朽ちた自動車が散乱している。


 街の建物は影霊が暴れた後なのか、派手に崩れ去っているモノも多かった。


 ひどく荒れ果てた吉祥寺の街を進んでいく。人の気配は全くしない。ただ感じるのは影霊特有の嫌な雰囲気だけであった。


「人っ子一人いないな、まぁこんな状態じゃ当たり前か……」


 生き残っている人々はどこにいるんだろうか。


「もうこの世界に人間なんていないのかも知れませんね」


 と、揚羽。たちの悪い冗談だ。


「ははっ、まさかね……」


 そんなはずはない……と思う。だってスティーブンもいたし、あの娘人間だよね?



 そんな会話をしながら歩いていると、道路のど真ん中、少し遠くに人影の様なものが見えた。


「ごぉぉぉぉぉおお……!」


 不気味な声を上げながらこちらを向く人影、いや……人では無かった、もう雰囲気でわかる、見た目も化け物の様だし。


 あれは影霊だ。しかも一匹だけではなく三匹ほど湧いている。


 そうして私に気がついたそいつらは、のそのそと不気味な動きでこちらに近寄ってくる。


 私はスッと太腿のホルスターからグロックを抜きセレクターを下に下げる。


 構えてトリガーを引く、狙いをつけず横にな薙ぎ払う様に動かした、即座に連射される9mm退魔弾、十七発の弾丸は一秒もかからずに打ち尽くされた。


 パラパラと周囲に散る薬莢、そうして形容し難い悲鳴をあげて消滅する影霊。


「本当に影霊だらけなんだなぁ……」


 消えていく影霊を見ながらそう呟いた。これがこの時代の現実というわけだ。


 こんな様子じゃ、この周囲、それどころか東京に人など居なさそうだ。


 グロックからマガジンを抜き、マガジンポーチに入れてる予備のマガジンに入れ替えスライドを戻す。


 周囲にいるのはどれも雑魚っぽいけど、数が多そうだ。さっきみたいに弾をケチらず、フルオートでばら撒いた方が効率がいいだろう。


 幸い、周辺にいるのはさっきの様な弾を二、三発当てれば消える様な雑魚ばかりっぽいし。


 と言っても、弾も無限じゃない。常に用意しているマガジンは三個程度。使い所は見極めなければ。


 ……いつ、退魔弾が通りにくいしぶとい影霊が出てくるかわからないしね。


「はぁ、拡張マガジン持って来ればよかった……」


 私はグロックをホルスターにしまい、再び荒廃した街を歩く。


「よし、高いところに登ってようかな」


 一度、吉祥寺の様子を高いところから見渡してみたい。


 そうして、吉祥寺駅の駅前に来た私。ここに来るまでに沢山の影霊を見た。いちいち相手するのも面倒なので大体は見つからない様に気をつけて、スルーしていたけど。


「あのビルでいいかな……」


 手頃なビルに目をつけて、例のワイヤーチェーンを射出する銃を取り出した。


 屋上あたりに向けトリガーを引く、シュッと放たれる黒い線。そうしてそのままこの前と同じ様に跳ぶ。身体が上に引かれる。


「よいしょっと」


 この前みたいにマヌケに転ばない様、直前でチェーンを切り離しふわりと一回転しながら屋上にうまく着地した。


「……きまった」


 なかなかかっこよく着地できた。うまく使えると、結構気持ちいかもこれ……


 気持ちを切り替えて、高いところから改めて街を見渡す、相変わらず人の気配はしない。吉祥寺の街は完全なる無人と化していた。


 上を見ると、どこまでもどこまでも真っ赤な空が続いている。


「相変わらず不気味だなホント……」


 何をどう間違えればこんな空の色になるというのだろうか。


 見える景色、全ての街は荒廃しきっていた。こんなのが未来の東京とは未だに受け入れ難い。


「退魔巫女が負けたらこうなってしまうという事ですよ、よくこの光景を目に焼き付けておいてください」


 揚羽の戒める様な声が聞こえる。そんなもの百も承知だっての……



 ────さて、これからどうしたものかなぁ。


 どこまでこの世界に居られるのかわからないし、正直手がかりを探すと言っても、どうしたらいいんだろう。


 私はペタリと座り込む。


 こっちは駅の南口、井の頭公園側の方だ。向こうが北側だから、なら……


「学園はあっち、探偵事務所はあっちの方角か。大体同じ方向かな?」


 ここからその二つはかなり距離がある、霊道を使おうかと思ったけど辞めた。この時代の霊道がどうなってるのかわからないし……なんだか嫌な気配がする。


 まあ退魔巫女は身体能力高いし、ピョンピョンと素早くビルとビルをジャンプで跳んでいけばそう時間をかけないで辿り着けるだろうけど……


「……はぁ」


 なんとなく怖かった、自分の知っていた場所がこの時代ではどうなっているのか。


「……よし」


 覚悟を決める、取り敢えず私たちのホーム(探偵事務所)、それから学園の方に行ってみよう。

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