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4話 ようやく元の時代に帰れる!

「いいですか、この世界は七年前、影霊(ファントム)の大量発生……そうしてこの世界に呪いが振り撒かれてこんなことになってしまいました」


 スティーブンは語り出す。


「え〜っと、アナタ西暦何年から来たんですか?」


「え? あぁ、私がいたのは……」


 そうして、私は自分がいた年を伝える。


「なるほど、八年前ですか……ならアナタの時代から見て大体一年ちょっと後くらいですね」


 八年……たった八年でこうなってしまうのか? 一体一年後に何が起きるっていうんだよ……あまりにも現実離れしてる。でもこれも全部夢じゃないんだよな、さっきコイツに確認してもらったし。


「っていうか、私元の時代に戻れるのかよ?」


 ずっと気になっていた、早くこんな世紀末な世界とはおさらばしたい。


「うーん……本来あなたはこの時代にいるべき人間ではありませんし……」


 そうぶつぶつと呟く彼女。と、その時だった。


「……あれ? おいなんか……へんなキラキラが……」


 私の身体を煌めく青色の粒子が取り囲む。


「あー、予想通りですね。時間切れっぽいです」


 じ、時間切れ? どういう事だよ……?


「いいですか? あなたは本来この時代ではイレギュラーな存在なんです。だから……この時代に長く留まろうとすると時間の修正力が働きます」


 丁寧に説明してくれる彼女、その間にも粒子の量は増していく。


「……なんとなく理屈はわかるけど、俺どうなるんだよ! 消えたりしないよな!?」


 そこが一番気になるんだが!?


「んー、まあ大丈夫でしょ。元の時代に戻されるだけです……多分」


 多分って、そんな曖昧な!


「いいですか、八年前に戻ったら"沖宮探偵事務所"という場所を尋ねてください、力になってくれるはずです」


 探偵事務所? なんでまたそんな所に?


「……これはチャンス、あなたというイレギュラーな存在を利用すれば」


 そのうち、膨大な量の青色の粒子で視界が遮られる。思わず私は目を瞑ってしまった。



 そうして、再び目を開けた時。私の目の前には……


「ま、マジかよ……」


 目の前にはなんの変哲もない街並み。どこも崩れ去っている様子はない。


 後ろを振り返る。そこには元気に営業しているコンビニの姿が。


「戻ってきたのか?」


 そこで"私"はある事に気がつく。この声……そして胸! 股間!!


「お、お、女のままじゃねえかぁぁぁぁ!!!」


 元の時代に戻ったら身体も元通り、なんて事は全く無かった。


 マジでどうするんだよこれ……もう家に帰れねえぞ。家に帰っても「誰だお前!?」状態だろ!


 というか、さっきから通行人の視線が……そりゃそうか。美少女がブカブカの男物の学生服着てたら「何事!?」ってみんなビビるか……


 ……しっかし。


「かわいいなホント……」


 コンビニのガラスに反射した自分の姿を確認する。なんだか自画自賛してるようで気持ち悪いけど。正直かなり美少女……


 サラリとした長い黒髪に整った顔立ち。スタイルもそこそこ良いと思う、本当にこれが俺なのかよ。


 取り敢えず、学ランを脱いでズボンの裾を上げる。取り敢えずこれで少しはマシになった。


「これからどうしよう……」


 と、その時だった。学ランの胸ポケットから自分の生徒手帳が滑り落ちた。それを拾い上げる。


「は?」


 生徒手帳、裏面には自分の顔写真とか名前が載ってる……筈なんだけど。


 そこには、何も無かった、写真も名前も綺麗さっぱり消えて空白になっていた。


「なんだこれ……」


 不気味な雰囲気を感じる。何か得体の知れない恐怖が身体に纏わりついたような気がした。


「……と、取り敢えず。沖宮探偵事務所って所に」


 スティーブンが最後に言ってた言葉を思い出した。私の力になってくれる筈、と彼女は言った。


 スマホを取り出す。沖宮探偵事務所について調べる為だ。


「は? 圏外?」


 何故か圏外になっていた。こんな街のど真ん中で……? 流石におかしい……


 いくら移動しても通信が回復しない。仕方ないのでコンビニWi-Fiを使う事にした。


「沖宮探偵事務所……っと」


 マップアプリを立ち上げ、名前を検索する。


「出た……ちょっと遠いな、近くの駅から三駅くらいか?」


 歩いてもいけそうだが、ここは素直に電車で行こう。



 そうして数十分後。沖宮探偵事務所という場所にたどり着いた。その場所は駅の前の三階建ての小さな雑居ビル、二階部分にあった。


「……ケーキ」


 ビルの一階部分にはオシャレなケーキ屋さんが。なんだかお腹すいたけど今はそんな場合じゃない。


 外階段を登る。そうして入り口にたどり着いた。


 インターホンを押す。ピンポーンという音。だがしばらく待っても何も応答がない。


「……反応ねぇ」


 どうしたものか……とりあえず、ドアをノックしてみる。


「あのー、すみませーん」


 ドアノブに手をかける……あれ? 鍵かかってないんですけど。


「不用心すぎだろ……」


 私はドアを開けて中に入る。


「お邪魔します……誰かいませんかー?」


 反応はない、ここは出直すべきかなぁ。


「……って!? えぇぇ?」


 事務所と思われる建物内、色々なものが乱雑に積み重なっているその部屋の中にに一人の女性が倒れていた!


「ちょ、だ、大丈夫ですか!?」


 私は彼女に駆け寄る。


「お……」


 声が聞こえた、良かった……生きてるみたいだ。


「お腹すいた……」

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