35話 体育祭と対立する四家
「はぁ……めんどくさ」
学園、グラウンドの陰。ひっそりとした場所にあるベンチに座って賑やかな体育祭の様子を眺める。
なんというか、こういうやかましい学校行事はやっぱり苦手だ。
「さっさと帰りたい……」
「やれやれ、あなたの思考は陰キャそのものですね、そんなんだから学園で灯以外の友達ができないのですよ?」
ふわふわと飛び、雑草の中可憐に咲いていたタンポポに止まった綺麗な蝶が私に話しかける。
まったく……なんとも心に突き刺さる一言であろうか。
「うるさいなぁ、というか仮にも姫神なのに"陰キャ"とかいうあからさまな現代用語使わないでよ、イメージ崩れるから」
「姫神というものは、日々新しい概念を取り入れて時代に適応していくものなのです」
と、得意げな口調の揚羽。
「時代に適応、ねぇ……」
私は空を見る、今日の天気は微妙な曇り。雨でも降ってくれればよかったのに。
「それより、明日はちゃんと上手く立ち回ってくださいね」
明日……言うまでもなく四家会議だろう。
結局、四家会議には私も出席する事になった。隠れていてもどうせ向こうには私の事は知られているだろうし。
ただやはり、未来が云々という下りは隠す事になった。
素直に話したほうがいいと思ったけど、対立している側の人間がそんな突拍子もない話しても、理解してもらえないだろうし、ややこしくなるだけだろう……という真鶴さんの判断だ。
そして、未来の事はこちら側のカードになるとかなんとか。正直東京の命運がかかってるのに、そんなお家争いみたいな事してていいのか……と疑問だけど。
それほど四家の対立関係は複雑なのかもしれない。特に雫、南野家という話題が出ると少し微妙な感じになる、硬い雰囲気というか。
「南野家は信用できない」
ある時、雫がそうボソッとつぶやいたのを聞いた。私が知らないところで何か根深い、複雑な問題があるのかもしれない。
あ、ちなみに誤魔化す内容については……
「なんか適当に理由考えといて」
と、灯。なんという事だろうか、これほど綺麗な丸投げというモノを私は見たことがない!
「まったく、適当というか……灯らしいけど」
「私がどうかした?」
後ろから灯の声が聞こえた。他の娘たちとワイワイしてたけど、陰キャ気味の私にも構ってくれるのかな?
「いやなんでも……んひゃあ! つめた!!」
冷たいモノが首筋に押し当てられるのを感じ、思わず変な声をあげてしまう。
私はバッとベンチから立ち上がって後ろを振り向く、そこには冷たそうなペットボトル飲料を二本持った灯が。
「ちょ、なにいまの声! めちゃくちゃかわいい〜! もう一回やっていい?」
子供のようにはしゃぐ灯。
「いや! 絶対ダメだから!」
「お? それはフリですかな?」
飲み物を渡しに近づけてくる彼女。
「いやいや、いいから!」
私はそれを避ける。
「はぁ……あなた達呑気なものですね……」
揚羽の声が聞こえる、いやいや私も一緒にしないで欲しいんだけど!
「ほらっ、あげる」
灯はポイっと片方のペットボトルを投げてきた、私はそれを受け取る。
「さんきゅー」
私はキャップを開けそれを飲む、スポーツドリンクの味が身に染み渡る。
『ハードル走に出場する生徒は所定の集合場所に……』
アナウンスが流れた。私が出場するハメになった競技だ。
「めんどくさ、帰りたい……」
よりにもよってハードル走。面倒くさいことこの上ない。
「ま、頑張ってきなよ!」
ポンと、私の背中を押す灯。ちなみに彼女の出るクラス対抗リレーは見事私たちのクラスが一位、勝利を収めた。
灯、めちゃくちゃ足早かったなぁ……ラストでごぼう抜きして……
「ねえ、私にもその運動神経分けてくれない?」
そんなこんなで集合場所に。そうして暫くして競技が始まる。
結果はビリではないけど良くもない微妙な順位だった。なんとも締まらない結果……
〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして、翌日。いよいよ四家会議の日がやって来る。
「なあ、ちゃんと理由考えたか?」
探偵事務所にやってきた灯が、他人事のようにそう言ってきた。
「ん……まあなんとかやってみせるよ」
正直、全く自信ないけど。
「それじゃ、そろそろ行きましょうか」
準備万端な様子の雫。
「三人とも、どこに行くのです? 遊びに行くなら私も連れて行きなさいなのです!!!」
と、事務所のテーブルの上にいたアリスが声をかけてきた。
「いや、連れてけるわけないでしょ……影霊のあなたを」
まあ確かに。事情を知らない向こうサイドがアリスを見たら速攻で退治されそう。
「それに遊びに行くわけじゃないし、格好見てわからん?」
灯がそう言った。格好……あれよく見たら。
「制服なの?」
そういえば二人とも、何故か私服ではなく学園の制服を着ていた。
「まあ、一応ちゃんとした場だし」
「なー、面倒だけど」
なんと、私普通に私服着てるし……
「ちょ、着替えて来る!」
慌てて部屋に戻る。危ない危ない、このまま普通の私服で行ったら私だけ常識ない奴みたいじゃん。
着替えて二人の元に戻る。
「ごめん、お待たせ。じゃあ行こうか」
「別に着替えなくてもよかったのに、一人だけ私服で恥ずかしい思いをするだけなのだし」
それが嫌だっての!




