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33話 聖地"吉祥寺"

〜〜〜〜〜〜〜



「お待たせしました〜、こちら"いちごたっぷり、パティシエの気まぐれショートケーキ"とコーヒーです」


 お盆に乗っていたケーキを灯のもとに置く、雫の元にはコーヒーを。


 そうして私も席に座る。一応今はバイト中だけどこの時間帯はお客さんが少ないので紫電さんに許可をもらって休憩の時間にしてもらった。


「にしても、あげは〜、その制服めちゃくちゃ似合ってんじゃん!」


 灯が私の事をジロジロと見る。


「ちょ、あんま見ないでくれる? 結構恥ずかしいから……」


 未だにコスプレ感強くて恥ずかしさが抜けない。何というかこんなフリフリのメイド服きてバイトするなんて夢にも思わなかった。


「ほら、アリスの分も」


 机の上にちょこんと座るアリスにもケーキを渡す、特別に作ったミニサイズのものだ。


「ふふん! ご苦労様です!!」


 驚いた事に、アリアって普通に食事とかするんだよね。霧の分析曰く、食べた物は霊的エネルギーに変換されてるとかなんとか。


 本当に不思議な生き物だ……


「それで雫、何で呼び出したの?」


 私は隣に座り、コーヒーを啜る雫にそう尋ねた。


「確認しておきたい事……というか話し合いたい事があって」


 コーヒーカップを置く雫。


「それって、わざわざ呼び出さなきゃいけないくらいの話?」


 フォークでケーキを大きく大雑把に切り崩しながらそう呟く灯。確かに、スマホのメッセージでは事足りない話題なのだろうか。


「ええ、大事な話、そろそろあの時期でしょ」


「……あぁ、完全に忘れてた」


 露骨にダルそうな雰囲気を出す灯。


「あの時期って何?」


 分かっていないのは私だけのようだ。


「四家会議よ」


 雫の口から出た言葉。四家会議、なんとなく言葉から内容は想像できるけど……


「あれ、やる必要ある?」


 灯は切り崩したケーキを食べながら、明らかに嫌そうな口調でそう言った。


「まあ……伝統みたいなものだから」


 その後、雫は私に"四家会議"とやらについて詳しく教えてくれた。


 四家会議とは、その名の通り東京を守護する北條、西嶋、南野、東坂の四家の退魔巫女が"聖地"とやらに集まり様々な事について報告、話し合いをする場らしい。


「聖地ってどこの事?」


 聖地というのだからきっと何処か神聖な場所、自然豊かな山の奥地に存在する(やしろ)……みたいな場所なんだろうなぁ。


「そりゃ、吉祥寺だよ」


 と、灯。えっと……吉祥寺って……


「あの東京の吉祥寺?」


 東京の住みたい街No.1とかいう?


「そうだよ、武蔵野の吉祥寺。それ以外何処があるんだよ」


 いや、確かにまああそこはいい場所だと聞くけど。


「……えっと、何で?」


 全くイメージしていた聖地とは別の場所が出てきて驚いてしまった。


「あそこは昔から退魔巫女と縁が深い場所なの」


 なるほど、何かゆかりのある地なのか。


「で、今年のホストは南野家……だっけ?」


「ええ、そうね」


 "南野"という名字が出た途端、雫の口調が少し硬いものに変わったような気がした。


「アイツ苦手なんだよなぁ」


 と、灯が呟いた。


「アイツって誰?」


「南野の現当主だよ、あんまり会いたくねー、めんどくさい……」


 現当主……というと、今の南野家を代表する退魔巫女という事なのだろうか?


 私はチラリと灯と雫の二人を見る。今まであまり意識してこなかったけど、この二人もそれぞれ北條家と西嶋家の当主という事になるのだろうか。


 となると、あの東坂舞花という人も東坂家の当主。じゃあ南野家の当主はいったいどういう人なんだろう。


「その人ってどんな人なの?」


 私は二人に聞いてみる。


「んー、そうだなぁ……まずとにかく堅物だわ、アイツ」


「見た目は……まあ普通に美人ね、The大和撫子って感じかしら」


 その二つだけでなんとなくイメージがついたような気がした。


「あ、そういや今更だけど。あげはってちょっとアイツに似てるよな!」


 灯が唐突にそんな事を言い出した。


「そうかしら? ……まあ確かに雰囲気は少し似てるかもしれないわね」


「そうなの?」


 そんな大和撫子の美少女と似てると言われると結構嬉しいかもしれない。


「そう! 雰囲気、なんとなく似てるというか……あー! うまく言葉にできない!」


 雰囲気、かぁ。どんな人なんだろうか。やっぱり一度会ってみたい。


 なんとなくその人とは、他人という感じがしない気がしてきた。


「話を戻しましょう、とにかく近々四家会議があるから。そろそろ向こうから日付と場所が指定されてくる頃だろうし」


「戻さなくていいよ。あー、めんどくさぁ……」


 ケーキを食べ終えた灯はフォークをお皿に置き、頬杖を突きながらそう言った。


「……それって、私も出るの?」


「問題はそこなのよね……」


 なんだか微妙な反応をする雫。


「どういう事?」


 なんだか雲行きが怪しくなってきた様な気がする……


「あなた、事情が事情でしょ。そもそも本当は北條家の人間ですらないし」


 まあ、確かにそれはそうだ。私ってあちらさんから見ればいきなり出てきた出所不明の怪しい退魔巫女に見えてしまうかもしれない。


「んー、どうしようか……」

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